ライドシェアは日本ではなぜ禁止されているの?

世界では3極化、日本が目指すのは……?



2024年4月にスタートした自家用車活用事業、通称「日本版ライドシェア」。事業開始から8カ月が過ぎ、サービス提供エリアが80地域を超えるなど、拡大の一途をたどっているようだ。


以前から「日本ではライドシェアが禁止されている」というトピックを見掛けることがあるが、現時点ではこの言い方は誤っている側面と正しい側面がある。一定規制化ではライドシェアは展開できるが、完全自由化とはなっておらず、一部業種以外は直接的な展開が禁止されている、というのが正しい。

そもそもライドシェアとは何を指すものなのか。ライドシェアに関する全貌について、一から解説していく。

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■ライドシェアってそもそも何?

純粋な相乗りが起源、スマホ登場で環境が激変

現代におけるライドシェアは、多くの場合「一般ドライバーが自家用車を用い、配車プラットフォームを通じてタクシーのような移動サービスを提供」することを指す。

「ライドシェア(ride-share)」を直訳すると「ライド=乗る」を「シェア=共有」することで、概念・サービスとしては古くから存在する「相乗り」を意味する。


移動距離が長い米国では、通勤などで都市圏に移動する際、出発地を同じくする者が一つの車両に相乗りすることは珍しくなかった。各自の移動コストを下げることができ、一台当たりの搭乗員数が増加することで都市部の渋滞解消にも役立つためだ。

こうした観点から、米国では早くから「カープール(Carpool)」などの名称で相乗り=ライドシェアが行われてきた。営利が前提ではなかったのがポイントだ。

日本でも近年、一般道から入ることができる高速道路のサービスエリアに各自が自家用車を駐車し、一台のクルマに乗って目的地に向かう行為が一部で問題視されていた。同例の良し悪しは別として、このようにクルマをシェアをするという考え方がライドシェアの根本だ。

スマホの普及・配車プラットフォーマーの登場で営利ライドシェアが主流に

この相乗りによる移動方法が、スマートフォンの登場によって一変した。スマートフォンの配車アプリを用いることで、リアルタイムで位置情報や目的地などの情報を不特定多数の人とやり取りすることが可能になった。


つまり、「ここからあそこに行きたい」という需要が可視化されたのだ。こうした需要に対し、自家用車と時間を持て余しているドライバーが有料で移動サービスを提供することが可能になった。移動したい人と有料で移動サービスを提供したい人のマッチングが容易になったのだ。

州ごとに異なるものの、総じて米国では一般ドライバーが自家用車を用いてサービスを提供することを規制する特段の定めがなかったため、この新種のライドシェアサービスに対し収入を得たい一般ドライバーが殺到し、瞬く間に普及することとなった。これが現代のライドシェアだ。

この形態は、事実上タクシーの配車サービスと同一のものとなる。車両とドライバーに対する要件はことなるものの、サービスの中身は同一と言える。

多くの場合、ライドシェア料金はタクシー運賃より低めに設定されている。また、タクシーサービスの質が著しく低い国もある。こうした背景もあり、ライドシェアは市民権を得たのだ。

ライドシェアとはどういう意味?問題点は?料金は?免許は必要?

日本では道路運送法で明確に規制

このライドシェア旋風は、配車プラットフォーマーの米Uber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)の戦略とともに世界に飛び火した。ウーバーは世界各国に対応した配車アプリを開発し、各地でサービス展開を進めた。

しかし、日本では依然として自由なライドシェアは行われていない。その理由は「規制」だ。日本では、道路運送事業に関する規制となる「道路運送法」の第78条で以下のように定められている。

第七十八条 自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう。以下同じ。)は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。

一 災害のため緊急を要するとき。
二 市町村、特定非営利活動促進法(平成十年法律第七号)第二条第二項に規定する特定非営利活動法人その他国土交通省令で定める者が、次条の規定により地域住民又は観光旅客その他の当該地域を来訪する者の運送その他の国土交通省令で定める旅客の運送(以下「自家用有償旅客運送」という。)を行うとき。
三 公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき。

「二」「三」の規定については後述するが、災害の場合を除き原則自家用車を有償運送に使用してはいけないのだ。営利目的の旅客運送を行うには、一般乗用旅客自動車運送事業や一般乗合旅客自動車運送事業者、一般旅客自動車運送事業といった許可を受けなければならない。

(出典:https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000183

白タク行為は絶対に許さない

ライドシェアによる有料の運送は旅客運送に当たるため、許可を得ていない一般ドライバーが自家用車でサービスを提供すると、いわゆる「白タク」行為として厳しい取り締まりを受けることになる。

つまり、日本では一般ドライバー×自家用車による無許可の有償サービスを禁止する法律が明確に定められているのだ。

かつてウーバーは、福岡県内でライドシェア検証プログラム「みんなのUber」を実施したが、すぐに国土交通省が動いた。「白ナンバーの自家用車による移動サービスは道路運送法に抵触する」と指導を入れたため、プログラムが中止に追い込まれたことがある。日本では白タク行為は厳禁なのだ。

ライドシェアに対し世界は3極化

世界でも規制を強化したり新制度を設けたりする動きが出ている。日本とは異なり、米国のようにライドシェアを明確に規制する法律がない国は思いのほか多く、それ故なし崩し的にライドシェアサービスが普及・浸透したのだ。

日本同様、多くの国ではタクシー業界が反発し、国がライドシェア規制を強めたケースもある。また、安全上の懸念や渋滞などを理由に規制したケースもあった。特段の規制や管理下にない一般ドライバーによる強盗や性犯罪などは実際に起こっており、これを危惧する声は根強い。

一方、全面禁止する例もあれば、既存のタクシーの枠組みに取り入れたり新制度を設けたりし、ライドシェアを受け入れたケースも少なくないようだ。

国土交通省が実施した「諸外国の自家用車による有償旅客運送の状況に係る調査」によると、調査対象となった58カ国・地域のうち、自家用車による有償旅客運送の制度がある国は28カ国、制度がない国・地域は30カ国だった。

▼諸外国の自家用車による有償旅客運送の状況
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001737469.pdf

出典:国土交通省(※クリックorタップすると拡大できます)

制度がある国のうち、普通運転免許と異なるライセンスが必要な国は13カ国で、運送責任を運転者が負う国は14カ国、規制なしが6カ国、その他8カ国、運行管理はプラットフォーム事業者11カ国、規制なし6カ国、その他11カ国となっている。

カナダ(オタワ市)、ブラジル、オーストラリア、インドネシア、スペイン(マドリード州)、ポルトガル、アラブ首長国連邦、ロシアなどではライドシェアが可能で、普通運転免許と異なるライセンスも特に必要ない。

米国(ニューヨーク市)やニュージーランド、シンガポール、タイ、マレーシア、中国、メキシコ、英国、スイス、フランスなどでは、ライドシェアが可能ではあるものの普通運転免許とは別のライセンスが必要とされている。

インド韓国、台湾、イタリア、オーストリア、オランダ、スウェーデン、ドイツなどでは、原則ライドシェアは認められていない。

上記のように、特に制限を設けない国、一定のルール・規制を整備して受け入れる国、明確に禁止している国――と、大まかに3極化している状況だ。

【参考】ライドシェアの動向については「ライドシェアの法律・制度の世界動向」も参照。

■日本におけるライドシェアの実情

自家用有償旅客運送と日本版ライドシェアが存在

では、日本では完全に禁止されているのか?――と言えば、そうでもない。「自家用有償旅客運送制度」や、2024年にスタートした自家用車活用事業、通称「日本版ライドシェア」がある。

自家用有償旅客運送は2006年にスタートした制度で、前出の道路運送法第78条の二「市町村、特定非営利活動促進法 ~中略~ 地域住民又は観光旅客その他の当該地域を来訪する者の運送その他の国土交通省令で定める旅客の運送(以下「自家用有償旅客運送」という。)を行うとき。」に規定されている。

公共交通が乏しく住民の移動の足を確保できないエリアや福祉輸送ニーズへの対応が求められるエリアにおいて、自治体やNPO法人などを実施主体として住民らが自家用車で移動サービスを提供できるようにする制度だ。ドライバーには、2種運転免許保有者か、1種運転免許保有者で自家用有償旅客運送の種類に応じた大臣認定講習を受講した者がなる。

あくまで公共目的のため営利展開は不可能だが、人件費や燃料費などの実費の範囲で対価を得ることができる。2022年末時点で交通空白地有償運送に670団体4,304車両、福祉有償運送に2470団体1万4,456車両が登録されている。

GO社長が語る「ライドシェアとの向き合い方」 上場理由の一つに「川鍋会長の影響力排除」

日本版ライドシェアは推進派と反対派の折衷案

一方の日本版ライドシェアは、2024年4月に始まったばかりの新制度だ。コロナ明けの急激なインバウンド増加などで大都市部を中心にタクシー供給不足が顕在化した際、菅義偉元首相らがライドシェア解禁の是非に言及したことで規制緩和に向けた議論が一気に過熱した。

その結果導き出されたのが日本版ライドシェアだ。不足するタクシードライバーの穴を埋めるためには一般ドライバーの参加が必須だが、無条件で解禁しては安全性に疑問符が付き、反対派の声も収まらない。そこで、推進派と反対派の折衷案的新制度が設計されたのだ。法的には、道路運送法第78条の三に位置付けられる。

タクシー事業者の管理下で一般ドライバーは参加可能に

日本版ライドシェアでは、一般ドライバーが自家用車を用いて旅客運送サービスを提供できるようになったが、事業主体はタクシー事業者に限定されているため、参加したい一般ドライバーはタクシー事業者の管理下に入ったうえでサービスに従事する形式だ。

一般ドライバーは、日本版ライドシェアに参加するタクシー事業者にパートなどの形で所属し、事業者の運行管理のもとサービスを提供する。これにより、一定の安全性と運行責任を担保する。二種免許は必要ないが、従事する日の前2年間において無事故であることなどが求められている。

タクシー不足を補うことが主目的のため、国があらかじめタクシーが不足するエリアや時間帯などを見極め、そのエリア・時間帯などに限りサービス提供を可能にしている。

このため、一般ドライバーは「好きな時に好きなだけ働く」ことはできず、あらかじめ定められた範囲内でタクシー事業者のもとサービスに従事する形となる。

なお、同制度は徐々に改善されており、雨天時や酷暑、イベント時にも対応できるよう随時バージョンアップが図られている。また、導入を希望する自治体の声にも柔軟に対応し、サービス導入を可能にしている。

日本版ライドシェアは、東京(特別区・武三)、神奈川(京浜)、名古屋、京都市域――の4地域を皮切りにスタートし、11月24日時点で大都市部12地域、その他69地域の計81地域で事業展開されている。

大都市部では比較的稼働状況は良好で、配車アプリによるマッチング率は改善傾向にあるようだ。一方、地方ではドライバーが集まりにくく、稼働可能な時間も限られるため成果を上げにくい傾向にあるようだ。

ライドシェア解禁議論はまだまだ続く?

ライドシェアに関する議論は続いており、日本版ライドシェアの動向を踏まえ検証を重ね、移動の足不足解消に向け利用率向上などを図っていく方針だ。また、並行してタクシー事業者以外の者が行うライドシェア事業についても、内閣府や国土交通省の論点整理を踏まえ法制度を含めて事業の在り方の議論を進めていくこととしている。

米国のような自由度の高いライドシェア解禁に向けた道は閉ざされたわけではないのだ。ただ、河野太郎氏や小泉進次郎氏などのライドシェア推進論者はこぞって自民党総裁選に負け、自民党自体も窮地に立たされている。ライドシェア解禁議論どころではないのが実情で、今後、議論がいたずらに長引く恐れもありそうだ。

■【まとめ】議論の行く末に注目

米国のような自由度の高いライドシェアは日本では依然禁止されているものの、タクシー不足を補うため現行法下で実施可能な新制度として登場したのが日本版ライドシェアだ。

ただ、稼働可能な時間帯が限られるなど一般ドライバー目線では使い勝手が悪く、良くも悪くもタクシー不足を補うための一助でしかないのが事実だ。交通サービスの安全性確保は大前提だが、利用者目線ではどのような制度が望ましいのか。議論の行く末を見守りたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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