グーグル系の自動運転開発企業Waymoが、3回目の資金調達を実施した。調達額は累計111億ドル(約1兆6,800億円)に達し、同社の企業価値は450億ドル(約6兆8600億円)以上と評価されているようだ。
世界の自動車メーカー時価総額ランキングを見ると、日本の自動車メーカーでは7位のホンダが約8兆円で、ドル円の為替レートの変動具合によっては、Waymoがホンダに並ぶ勢いだ。
自動運転開発企業のWaymoが現時点で自動車メーカーとほぼ同等の評価を受けているのだ。近い将来、自動運転開発企業と自動車メーカーの関係は逆転していくのだろうか。資金調達面を含め、Waymoの近況に迫る。
記事の目次
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■Waymoの資金調達と企業価値
Cラウンドで56億ドル調達、企業価値は450億ドルに
Waymoは2024年10月、資金調達Cラウンドで募集額を上回る 56 億ドル(約8,500億円)を調達したと発表した。ラウンドはアルファベットが主導し、Andreessen Horowitz、Fidelity、Perry Creek、Silver Lake、Tiger Global、T. Rowe Priceが参加した。
2020年のAラウンドでは計30億5,000万ドル、2021年のBラウンドでは25億ドルをそれぞれ調達しており、累計調達額は111億ドルとなった。アルファベットは2024年7月、Waymoの継続的な運営に向け複数年に渡り最大50億ドルの資金を提供することを発表しており、今回の資金調達もその一環と思われる。
シリーズAにサプライヤー大手Magnaが参加しているが、それ以外はほぼすべてが投資企業だ。
ブルームバーグなどが報じた関係筋の話によると、今回の資金調達で同社の企業価値は6兆8600億円に達したという。
【参考】Waymoへの投資については「Google、自動運転事業に7,700億円投資へ!狙いは「テスラ潰し」か」も参照。
6兆8000億円は自動車メーカーランキング10位に相当
2024年11月5日時点の自動車メーカーの企業価値は、テスラが7,780億ドル(約118兆円)で堂々の1位だ。上位10社は以下の通りとなっている。
- 1位:テスラ(約118兆円)
- 2位:トヨタ(約41兆円)
- 3位:中国BYD(約18兆円)
- 4位:フェラーリ(約14兆2,000億円)
- 5位:メルセデス・ベンツ(約9兆9,000億円)
- 6位:ポルシェ(約9兆7,000億円)
- 7位:GM(約8兆5,000億円)
- 8位:ホンダ(約8兆円)
- 9位:BMW(約7兆6,000億円)
- 10位:フォルクスワーゲン(約7兆5,000億円)
参考までに、フォード6兆2,000億円、日本勢はスズキが2兆9,000億円、スバルが1兆8,000億円、日産が1兆5,000億円、三菱自動車が6,800億円、マツダが6,700億円、ダイハツが6,300億円といったところだ。
単純比較はできないものの、Waymoの企業価値はすでに世界の自動車メーカートップ10クラスと言える。トヨタには及ばないもののホンダに迫る勢いで、スズキとスバル、日産、三菱自の4社を足した水準に達しているのだ。
参考までに、上場したばかりの中国WeRideは約6,100億円、2021年に上場したAurora Innovationは1兆4,000億円、2022年に上場したモービルアイでも1兆8,000億円の規模だ。6兆円超のWaymoがいかに図抜けているかがわかる。
自動運転タクシーのパイオニアとして業界をけん引し続けている実績に加え、やはりアルファベット(グーグル)という後ろ盾の影響が大きいのかもしれない。投機的な面も否めないが、自動運転業界・市場が有するポテンシャルの表れとも言えそうだ。
まもなく黒字化局面に?
Waymoの売上高はアルファベットの「Other Bets部門」に含まれており、単体の業績は不明だ。まだ赤字局面が続いているものと思われるが、有料サービスの提供回数は週10万回に達したという。これは前年の10倍に相当し、売上高が右肩上がりとなっていることは間違いない。
今後は、どの段階で黒字化を果たせるのか、コスト削減や収益増を図るさらなる手立てはあるのか――といったビジョンに注目が集まりそうだ。
ライバルの中国・百度(バイドゥ)は、2025年にも自動運転タクシー事業の黒字化を見込んでいるそうだ。武漢では2024年中にフリートを1,000台規模に拡大し、江鈴汽車と共同で製造コスト約20万元(約430万円)の自動運転タクシーを開発し、導入していく。運用面の無人化・自動化も促進していくことで、損益分岐点への到達を見込んでいるという。
全体としてはまだまだ投資局面が続きそうだが、自動運転事業の黒字化を見通すことができるフェーズに達すれば、一般投資家の熱も高まり、株式市場における評価も高まっていくものと思われる。上場フェーズだ。
こうした未来は遅かれ早かれ到来する。その時、企業価値の側面において自動運転企業が自動車メーカーを追い抜いていく流れとなるのか、要注目だ。
■Waymoの概要と近況
フェニックスを皮切りにサービスイン
Waymoは、多数の有能なエンジニアを輩出したグーグルの自動運転開発プロジェクトを前身とする企業だ。2016年に分社化し、アリゾナ州フェニックスを一番目のサービス実装拠点に設定して公道実証を本格化した。
アーリーライダープログラムを経て2018年12月に世界初となる自動運転タクシーの商用サービス「WaymoOne」を一部住民を対象に開始した。
当初はセーフティドライバーが同乗していたが、利用者の拡大を図りながらサービスを増強し、2019年12月には一部の車両で無人運行を実現した。
2021年にはカリフォルニア州サンフランシスコ、2024年には同州ロサンゼルスで正式にサービスを開始し、利用者拡大を図っている。今後、2025年初頭を目途にテキサス州オースティンとジョージア州アトランタでもサービスを開始する計画だ。
実走行距離とシミュレーション走行距離は200億マイル(320億キロ)を超えた。地球と月を4万回以上往復、地球の外周80万周に相当する距離だ。ドライバーなし・乗客のみの走行距離も2023年末までに700万マイル(約1,120万キロ)に達しているという。
フリートは完全BEV化、3代目の行方は?
自動運転タクシー車両は、1代目がFCA(クライスラー)のパシフィカハイブリッドモデルで、2代目がジャガー・ランドローバーのBEV・I-PACEだ。2023年に全車両をI-PACEに切り替え、フリートのすべてをBEV化した。
3代目は中国Geely系Zeekrの新車両が内定しており、第6世代の「Waymo Driver」とともに共同開発モデルがデビューする計画だ。ただ、米中間の経済摩擦を背景に計画が変更される可能性もあるようだ。
関税面でのコスト高や米国政府が中国製ソフトウェアの搭載禁止方針を表明するなど、中国車の導入障壁がかつてないほど高まっている。イニシャルコストの高騰やソフトウェア面のリスクはビジネス上無視できるものではない。
こうした事情を踏まえてのものか定かではないものの、Waymoは2024年10月、韓国ヒョンデと複数年にわたる戦略的提携を締結したと発表した。ヒョンデのBEV・IONIQ 5にWaymo Driverを統合し、2025 年後半までに路上テストを実施して徐々にWaymoOneのフリートに追加していく計画だ。
IONIQ 5は、ヒョンデ系の自動運転開発企業Motionalがすでに自動運転タクシー用途で導入しており、Waymoの導入が始まれば、異なる自動運転システムを搭載した同一車種の競合が始まるかもしれない。
なお、WaymoはZeekrとの関係について触れておらず、パートナーシップの行方については不明だ。
【参考】米政府の対中方針については「米政府、「中国製」自動運転ソフトの搭載禁止へ 車内の盗聴など不安視」も参照。
【参考】Waymoの採用車両については「第6世代のGoogleタクシー、トヨタ採用されず!中国製Zeekrを起用」も参照。
Uber Technologiesとの提携拡大
配車サービス面では、米Uber Technologiesとのパートナーシップを深めている。両社は2023年5月に戦略的パートナーシップ結び、 Uber と Uber Eats の 両方のアプリでWaymoの自動運転車を利用可能にしていくと発表した。
2023年10月にはフェニックスでの利用を開始した。225 平方マイル以上の地域でUberアプリを使用した際、一般ライドシェアと同様Waymo の車両がマッチングされる機会が創出され、乗車するかどうか確認するオプションが表示される仕組みだ。
2024年9月には、オースティンとアトランタでの提供に向けパートナーシップを拡大すると発表した。Waymoが予定するサービス拡大エリアだ。今後、Uberの配車プラットフォームへの参加を標準していくのか、また、他社の配車プラットフォームとも協調路線を歩んでいくのかなど、動向を注視したい。
【参考】Uberとのパートナーシップについては「ついにUberが自動運転タクシー展開!Google製車両を採用、業界の大本命に」も参照。
自動運転システムはまもなく第6世代へ
現行のWaymo Driverは第5世代にあたるが、2025~2026年ごろに新車両とともに第6世代にバージョンアップされる見込みだ。
第6世代のWaymo Driverは、13台のカメラ、4台のLiDAR、6台のレーダー、一連の外部オーディオレシーバー(EAR)を備え、三つの補完的なセンシングモダリティから周囲の世界を把握して冗長性を高めている。
安全性を損なうことなく大幅なコスト削減を実現し、パフォーマンスを向上させるよう最適化されており、車両全周囲、最大500メートル離れた場所まで検知可能で、昼夜を問わずさまざまな気象条件下で物体を検知・識別可能という。
すでに公道実証に着手しており、その距離は数千マイルに及ぶとしている。
衝突事故件数は人間の半分以下?
Waymoの最新の報告によると、2024年6月末までに乗客のみの無人運行を行った2,200万マイル以上の公道走行において、人間のドライバーと比較しエアバッグ展開を伴う衝突事故が84%、負傷を伴う衝突事故が73%、警察に報告された衝突事故が48%少ないことが示された。
2023年10月末時点における同報告では、警察に報告された衝突事故率は57%減少としており、事故率は2024年に入って増加傾向にあるのかもしれない。サービス対象エリアの拡大が要因となっている可能性が高そうだ。
いずれにしろ、人間による手動運転を下回っていることに変わりはなく、安全性は担保されていると言える状況だ。
【参考】Waymoのセーフティレポートについては「Googleの自動運転車、人身事故率が「人間より73%減少」」も参照。
サービス増に伴い事故も増加傾向に?
一方、Waymoの自動運転車による事故やトラブルを目にする機会も増加してきた感を受ける。
NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)が取りまとめている自動運転車のクラッシュレポートによると、事故報告が義務付けられた2021年7月から2024年8月15日までの間に自動運転車による事故が計744件が報告されている。
Waymoが最多の401件で、Cruise152件、GM146件、Transdev119件、Zoox60件、Argo AIとMay Mobility20件──といった状況だ。走行距離に比例して事故件数も増しているものと思われる。各社の同一走行距離あたりの事故件数を知りたいところだ。
Waymo関連の事故では、2023年5月にセーフティドライバー同乗中のWaymo車両がサンフランシスコで犬に接触する事故を起こしている。放し飼いの犬が急に飛び出し、回避が間に合わなかったという。
2023年12月には、フェニックスで牽引されていた車両に接触する事故が発生した。牽引車が不適切な方法でピックアップトラックを引っ張っており、このトラックに接触した。
トラックは接触後もそのまま走行し続けており、数分後には別のWaymo車両も接触したという。異常なシナリオに対応しきれなかったものと思われる。この件を受け、Waymoは2024年2月にソフトウェアのリコールを発表した。
2024年2月には、サンフランシスコで自転車と衝突する事故も発生している。Waymo車が交差点を左折する際、対向側から来たトラックが通過するのを待って左折を開始したところ、死角にいた自転車に気付くのが遅れて接触したという。
2024年5月には、フェニックスで電柱に衝突する事故を起こし、再度ソフトウェアのリコールを行っている。
走行エリアの拡大や回数の拡大とともに事故が目立つようになってきた印象だ。道路交通におけるシチュエーションは無限で、同じ道路を同じ時間帯に走行しても状況は全く異なる。
一定の完成度を誇るWaymoの自動運転システムでもまだまだ改善の余地があり、その作業は半永久的に続いていくのかもしれない。
【参考】Waymoのトラブル事例については「Googleの自動運転タクシー、「絶対乗るな」って本当?逆走に信号無視も」も参照。
■【まとめ】Waymoの株式上場はあるのか?
まだ黒字化を見通せていないWaymoだが、その評価は自動車メーカーランキング10位に相当するようだ。今後、ビジネス面での見通しが立った際、株式上場に動くのかアルファベット傘下として抱えたままいくのか、事業売却なども選択肢として考えているのか──など、その戦略に改めて注目が集まるところだ。
まだまだ拡大局面が続くWaymo。2025年のオースティン、アトランタでのサービスインをはじめ、さらなる展開を見せるのか。同社の動向から目が離せない一年となりそうだ。
【参考】関連記事としては「Waymo/Googleの自動運転戦略(2024年最新版) ロボタクシーの展開状況は?」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)