自動運転市場で先頭を走り続けるグーグル系Waymo。第6世代となる次世代自動運転システムは、中国・吉利汽車(Geely)系のEVブランドZeekrの新モデルに統合されることが内定している。
ただ、EVを対象にした追加関税などを背景に、Waymoが他メーカーにもアプローチしている──といった報道も出ており、Waymoに選ばれる可能性は他メーカーにも残されているようだ。日本勢にもまだチャンスがあるかもしれない。
一方で、モビリティカンパニーを目指すトヨタは、Waymoとの協力関係に否定的な姿勢を見せる可能性もある。将来太刀打ち困難なレベルの強力なライバルになり得るためだ。
トヨタが恐れるWaymoの脅威とはどのようなものか。両社の関係に迫る。
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■自動運転分野におけるWaymoのパートナーシップ
FCA、ジャガー、Geelyと提携
グーグルの開発プロジェクトから法人化されたWaymoは2016年、自動車メーカーとの大型パートナーシップ第一弾としてFCA(フィアット クライスラー アメリカ)との提携を発表した。
「Pacifica(パシフィカ)」ミニバンを導入し、自社の自動運転システム「Waymo Driver」を統合して自動運転タクシーフリートに採用するといった内容だ。
FCAによると、2016年に100台、2017年に追加で500台を納入し、2018年には最大6万2000台のパシフィカを納入する契約としている。
その後、Waymoは2018年、ジャガー・ランドローバーとのパートナーシップを発表した。BEV「Jaguar I-PACE」を新たに採用する内容で、ジャガー・ランドローバーによると2 年間で最大 2万台をWaymo向けに製造するとしている。現在の主力はこのI-PACEで、第5世代のWaymo Driverを搭載している。
2021年には、中国Geelyと自動運転配車サービス向けにBEVを設計し、Waymo Driverを統合するコラボレーションを発表した。第6世代のWaymo Driverに関するプレスリリースに掲載されたティザー画像には、Zeekrの新型BEV「Zeekr MIX」と思われるモデルが写し出されている。
Zeekrによると、乗用車から物流向けの商用車、ロボタクシーに至るまで幅広いモビリティ製品をサポートする戦略車で、リビングルームのような車室、回転式フロントシートなどを備えるという。
中国メーカーに懸念?他社へアプローチ
これが本採用3車種目となる見込みだが、ここにきて韓国メディアが、Waymoが韓国自動車メーカー現代(ヒョンデ)にアプローチしていることを報じた。自動運転タクシー向けの車両製造に向け、すでに数回の面談を行っているという。
【参考】Waymoによるヒョンデへのアプローチについては「Googleの自動運転車、製造委託先は「トヨタが第3候補以下」濃厚か」も参照。
背景には、米国による対中関税引き上げ策があるようだ。米国通商代表部(USTR)は2024年5月、バイデン大統領による指示のもと、対中追加関税の関税率引き上げ対象品目などに関する案を発表した。EVなどの関税率を最大100%に引き上げる内容だ。
最終決定は延期され、9月時点ではまだ実施されていないが、予断を許さぬ状況と言える。WaymoとZeekrが結んだ契約の詳細は不明だが、数百~数万台規模の契約とすれば、関税引き上げの影響は非常に大きなものとなる。
また、米商務省は、セキュリティの観点からコネクテッドカーや自動運転車への中国製のソフトウェアやハードウェアの搭載を禁止する方針を発表している。
こうした措置が実施されるリスクを考慮すれば、中国メーカーとの取引は慎重にならざるを得ない。ゆえにWaymoはヒョンデにアプローチした――ということのようだ。
Waymo、ヒョンデとも詳細は明らかにしておらず、Zeekrとの契約は予定通り進めるとしているが、中国製のソフトウェアやハードウェアの搭載禁止措置はカスタマイズでは対応しきれない致命的なものとなる。政策動向にも注視が必要だ。
【参考】WaymoとZeekrの提携については「Google、「中国企業」に自動運転車の製造委託 相手はGeely」も参照。
他社にもチャンス到来?日本勢は?
こうした情勢を踏まえると、Waymoはヒョンデ以外にも広くアプローチしている可能性がある。トヨタや日産、ホンダといった日本勢へのアプローチも当然考えられるのではないだろうか。
ホンダは、WaymoのライバルであるGM・Cruise陣営のため避ける可能性が高い。本田技術研究所とWaymoは2016年、米国における自動運転技術領域の共同研究に向けた検討を開始すると発表した過去があるが、その後大きな進展はなかったようで、ホンダは2018年にGM勢と資本・業務提携を交わしている。
一方、日産・ルノーは2019年、日本とフランスにおけるドライバーレスのモビリティサービス実現に向け検討を行う旨Waymoと独占契約を結んでいる。その後の進捗については続報がなく、また米国展開は契約外の話となるが、縁があるのは事実だ。
■Waymoから見たトヨタ
トヨタは好適なパートナー?
では、トヨタはどうだろうか。Waymo側から見れば、トヨタ車は基本性能や安全性など完成度が高く、模範的なOEMと言っても過言ではないはずだ。
WaymoはBEVを前提としているため、トヨタの既存車両ではbZ4XかレクサスのRZ、UX300eなどが対象となる。ボディサイズ的には、bZ4X やRZはI-PACEに近く、自動運転タクシーとしての使用に不都合はないものと思われる。
ただ、WaymoとZeekrのパートナーシップでは、自動運転タクシー専用車両を共同開発し、製造を委託するとしていた。
I-PACEに次ぐ主力モデルとなるからには、I-PACE を超える効用が求められる。Waymoは、既存車両をベースとした自動運転タクシーから、自動運転タクシーを念頭に開発したモデルへの進化を求めているのだろう。その要望に応えたのがZeekrだ。
ヒョンデも、自動運転タクシー専用設計ではないが同サービスに適したBEV「IONIQ 5」を市販化している。Waymoは、米中対立のリスクヘッジとしてこのIONIQ 5に目を付けたようだ。
ただ、IONIQ 5は、ヒョンデが出資する直系の自動運転開発企業Motionalが自動運転タクシーとしてすでに採用している。WaymoにとってライバルとなるMotionalの二番煎じであり、事実上ヒョンデもライバル関係にあたるが、それでもアプローチしなければならないほど切羽詰まっているのかもしれない。
そうした状況も踏まえると、Waymoがトヨタにアプローチしていてもまったくおかしくないはずだ。例えば、トヨタが自動運転タクシーをはじめとしたモビリティサービス向けに開発している「シエナAutono-MaaS」のBEVバージョンを要望していても不思議ではないだろう。
【参考】Waymoと日産のパートナーシップについては「日産・ルノー・三菱自、自動運転開発でグーグル陣営に合流か」も参照。
■トヨタから見たGoogle/Waymo
Google/Waymoは上客?脅威?
では、トヨタの目にはWaymoはどのように映っているのか。商用車部門における大口の顧客になり得るお得意様候補だろうか。
自動車を製造・販売する旧来からの自動車メーカーの視点でとらえれば、Waymoからのアプローチはウェルカムだろう。独自モデルの開発を一から頼まれても、その過程でWaymoが蓄積してきた自動運転タクシーサービスに関するノウハウを吸収できる。トヨタにとってもメリットは大きいはずだ。
しかし、トヨタはWaymoからの申し出を断る可能性もある。トヨタ自身のモビリティカンパニーへの転身の妨げになるかもしれないからだ。
本来であれば、協業関係を築いてお互いウィンウィンの関係にもっていくところだが、Waymoは強過ぎるのだ。例えば、トヨタがWaymoと手を組み、米国市場限定で車両を提供したとする。それだけなら問題はないが、Waymoはその後、日産と手を組んで日本国内のサービスに着手するかもしれない。
テクノロジー企業であり、プラットフォーマーが本質のWaymo・グーグルは、米国での自動運転サービスが一定水準に達し次第、世界展開に打って出る可能性が極めて高い。ビジネス性を追求し、サービス面を本格化させるのだ。
今のところWaymoは自動車メーカー各社と友好な関係を築き、自動運転タクシーの高度化を進めている段階だが、これは第一フェーズに過ぎない。グーグルとしては、自動運転技術を確立したその後の展開こそが本命であり、テクノロジー企業ならではの手法で自動運転市場を席捲すべく動き出すはずだ。
世界に先立って開発を進めてきた自動運転技術と、自動車メーカーが真似できないプラットフォーマー的戦略で野心的なビジネス展開に着手するのだ。
それはまだまだ先の話だが、自動運転市場の本格形成とともに自家用車の販売台数は伸び悩むようになり、やがて減少局面に入る可能性が高い。グーグルは手ごろな自動車メーカーを買収し、その他の自動車メーカーのライバルとなる形で、あるいは圧倒的に強い立場で各メーカーを顧客とし、絶大な主導権を発揮しながら自動運転サービスに本腰を入れるかもしれない。
トヨタは新たなビジネスモデル創出へ
トヨタは、旧来の自動車メーカーとしてのビジネスモデルから、モビリティカンパニーへのモデルチェンジを図っている最中だ。自動車の開発・製造・販売というモデルに依存することなく、モビリティに関わるあらゆるサービスを提供し、未来のモビリティ社会の実現を図りながら新たなビジネスモデルを模索していくのだ。
移動と社会・生活をあらゆる視点から結びつけ、どのような課題があるのか、どのような需要を想起できるか、どのようなサービスが可能か――などを模索し、ビジネス化していく途方もないチャレンジだ。
こうした新たなサービス領域では、自動運転による無人化技術が生きるケースも少なくない。人手をかけずコストを抑えることが可能なため、採算面に大きく貢献するためだ。従来はビジネス的に成立させづらかった事業も、自動運転によって可能になるのだ。
自動運転技術は今のところ人の移動やモノの輸送に特化する形でサービス化が進んでいるが、将来的には既成概念を塗り替えながら多方面で活用されることが想定される。
ある意味、トヨタがコングロマリット化していくことになるかもしれないが、そのくらいの変化を成し遂げなければ未来は安泰ではない。
新領域で強みを発揮するグーグル
ただ、こうしたトヨタの一大チャレンジを一瞬で詰めてくるのがグーグルだ。不特定多数に向けたto C分野においては、自動車メーカーでは太刀打ちできない技術と基盤を有しており、一度調子づかせれば手に負えなくなるのだ。
せっかくトヨタが実現した新自動運転サービスも、後から模倣したグーグルがプラットフォームなどを有効活用し、すべて持って行ってしまうかもしれない。共存ではなく最終的に独占の道を歩むのがプラットフォーマーだからだ。それだけグーグルは脅威と言える。
こうした未来を踏まえると、仮にWaymoから何らかのアプローチがあったとしてもやんわり断る――という選択を行ってもおかしくはないはずだ。
一般ベンチャーには積極投資?
とは言え、本来的にトヨタは先進技術の開発を進める事業者に対して寛大だ。トヨタは2016年、配車サービス大手のUber Technologiesとライドシェア領域における協業を検討する覚書を締結し、その後協業の範囲を自動運転領域にも拡大した。
当時自動運転開発を行っていたUberと自動運転分野で協業し、Autono-MaaS車両のシエナを配備していく計画だった。Uberの開発部門はその後Aurora Innovationに買収されたが、Aurora Innovationを交える形で協業関係は継続している。
米May Mobilityに対してはToyota Venturesが出資しており、こちらもレクサス車やシエナを提供している。日本国内での展開もMONET Technologiesを通じて支援することとなりそうだ。
このほか、自動配送ロボット開発を手掛ける米Nuroにもウーブン・キャピタルが出資するなど、新興勢には手厚い。中国Pony.aiとの協業も順調と思われる。各企業とのパートナーシップにより、開発効率を格段に引き上げることができるのだろう。
先行投資の側面も強いものと思われ、場合によっては買収に動く可能性もありそうだ。Uberは大きくなり過ぎたものの、他社は傘下に収めやすい。各社のブランドを残しつつ吸収することで、他社とのバランスを保ちつつも世界展開を図ることができる。
Waymoも新興勢には違いないが、バックに鎮座するグーグルの存在が大き過ぎ、いざ主導権争いが発生した際に推し負ける可能性がある。ゆえに距離を置く可能性が高いわけだ。
■【まとめ】未来の主導権争いはすでに始まっている?
ポイントは、自動運転サービスが本格化する未来における主導権の行方だ。Waymoの戦略が野心的なものでなければ問題ないが、奥にグーグルが構えている限り世界戦略は必然であり、独占的サービス展開も辞さないだろう。
このWaymoの存在を将来の脅威として捉えれば、現時点で加担するようなパートナーシップは避ける可能性がある。場合によっては、今のうちにWaymo包囲網の構築を開始した方が良いかもしれない。
憶測にすぎない論だが、グーグルのポテンシャルを考慮すれば、その可能性は決してゼロではないはずだ。
【参考】トヨタの自動運転戦略については「トヨタの自動運転戦略(2024年最新版) 車種や機能の名前は?レベル2・レベル3は可能?」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)