相乗りや自動運転、「女性専用」が標準仕様に?密室内の安全確保へ

「子ども専用」などが付加価値を創出



タクシー業界などで「子ども専用」や「女性専用」といったサービスが増加傾向にあるようだ。相乗りサービスやライドシェア(自家用車活用事業)サービスの開始などに伴い、こうした専用サービスで安全・安心感を前面に押し出し、付加価値を創出している。


こうした流れは、職業ドライバーが不在となる本格版ライドシェアや自動運転時代にいっそう加速するかもしれない。モビリティサービスにおいても多様性が重視され、特に安全面の需要が増大する可能性がある。

モビリティサービスの「専用化」にはどのような背景が存在するのか。解説していこう。

■広がる「〇〇専用」モビリティサービス

オキジモが非営利型ライドシェアで女性専用サービス

出典:オキジモ・プレスリリース

沖縄県で交通情報サービスを展開するオキジモは2024年3月、女性専用のライドシェアサービスを開始すると発表した。自家用車活用事業ではなくあえて非営利型を採用し、独自サービスを展開する構えのようだ。

自由度の高い海外ライドシェアは、日本では現行の自家用車活用事業では実現できず、むしろ相乗りマッチングサービス「notteco(ノッテコ)」のような非営利型の方が近い仕組みで実現できると見通し、ガソリン代などの実費を対価に好きな時間にサービスを提供できるような内容で実施する。


ドライバーは女性限定で、同乗者は女性または子ども限定とする。女性と同乗する場合に限り男性もOKとするようだ。

現在の仕組みの中で海外ライドシェアに近いサービスを提供し、日本に合わせた今後のサービスのあり方を検討していくという。

【参考】nottecoについては「コストシェア型の日本のライドシェアアプリ「notteco」ってどんなサービス?」も参照。


子ども専用シャトルやタクシーサービスも拡大中

出典:habプレスリリース

子ども専用の相乗りタクシー配車アプリを展開するhabは2024年4月、計5,000万円の資金調達を実施したと発表した。

同社は地域の習い事に通う小学生が相乗りして目的地へ移動するシャトル運行向けの各種アプリ・運行システムを開発している。送迎需要に応じたフレキシブルなルート生成と車両運行を可能とし、地域のタクシー事業者と協力しながらサービスを展開している。

ドライバーは、一般社団法人全国子育てタクシー協会で訓練を受けた「子育てタクシードライバー」が対応し、全車両にGPS追跡システムと緊急連絡ネットワークを備えるなど、安全対策にも力を入れている。

塾をはじめ、習い事に通う子どもは多いが、その送迎は親にとって結構な負担だ。だからと言って、子ども一人で向かわせるのも心配が尽きない。

こういったケースは多いが、所定の課程を修了したドライバーが運転し、乗客も子どもだけであれば、安心感は非常に高まる。

こうした子ども向けサービスをはじめ、妊娠中の女性や乳幼児を連れた外出を支援する全国子育てタクシー協会には、2024年4月時点で全国118社のタクシー事業者が加盟し、各地でサービスを提供しているようだ。

車内空間は「密室」、乗客の区別が重視される?

長距離バスにおいても、女性専用車両が登場している。このような専用サービスは、相乗りサービスや無人サービスの拡大とともに今後さらに増加していく可能性がある。

ポイントは、安心・安全な車内空間だ。密室となる車内空間において、不特定多数の人と空間・時間を共有することはリスクの1つとなり得る。特に、社会的弱者と言われる子どもや女性、高齢者などにとっては意義のあるものだ。


まれに、電車の女性専用車両に対し「男女差別だ!!男性専用車両も作れ!!」などと言う人がいるが、これは差別ではなく「区別」だ。男性専用車両を否定する気はないが、痴漢被害が後を絶たない状況を考慮すれば、そこに一定の正当性が認められる。

仮に、役所において住民票を取得するような一般窓口に女性専用を設ければ、大義名分が成立しないただの女性優遇と言われても仕方がないだろう。しかし、女性特有の悩み事などを受け付ける専用相談窓口を設けた場合、これに文句を言う人はまずいない。

社会的弱者への対応はさまざまな場面で求められるが、それは移動においても同様だ。「女性ドライバーによる女性の運送」や「子ども専用シャトル」など、車内における人の属性を統一することで、安心感を創出することができる。

タクシー相乗りサービスの解禁により、比較的狭い車内で不特定の乗員が移動を共にする機会が増えるほか、無人サービスが本格化すれば、車内を直接監視し有事に迅速に対応できる人間のドライバーもいなくなる。

こうした変化とともに、専用サービスが増加するのはある意味必然と言えるのではないだろうか。

本格版ライドシェアはこうした問題の象徴?

現在議論が進められている本格版ライドシェアにおいては、ドライバーと乗客間のトラブル・事件が度々問題視される。

強盗などの類いはもはや問題外のガチ犯罪だが、異なる性別のドライバーや乗客がターゲットとなる事件も決して少なくない。

職業ドライバーが加害者となる事案もゼロではないものの、一般ドライバー×一般乗客のライドシェアにおいては、こうした懸念が高まる。

海外では、ライドシェアにまつわる犯罪は依然発生している。例えば、最大手Uber Technologies関連における性犯罪は、2017年に2,936件、2018年に3,045件、2019年に2,826件、コロナ禍の2020年でも998件発生しているという。

また、2017~2018年の被害者のうち92%、2019~2020年の被害者のうち88%が乗客だったという。被害者のおおよそ9割が乗客、1割がドライバーとなっているようだ。

数千万、数億回というライド数の中でこの数字であるため気にし過ぎるのも問題かもしれないが、避けられるのであれば避けたいと思うのが当然だろう。

こうして点を踏まえると、女性ドライバーによる女性専用車両などの意義はやはり大きいものと思われる。

【参考】ライドシェアにおける犯罪については「ライドシェアでの性的暴行、米国で年間約1,000件 発生率、日本のタクシーの45倍」も参照。

■相乗りタクシーや自動運転における危険性

タクシー相乗りサービスが解禁

タクシー業界では長らく相乗りサービスは規制されてきたが、効率的な旅客輸送実現に向け2021年11月に解禁された。タクシーシェア、シェアタクと呼ばれるサービスだ。

配車アプリなどを通じて、目的地の近い旅客同士を運送開始前にマッチングし、タクシーに相乗りさせて運送する。運送開始後に不特定の旅客が乗車できるバスとは異なるタクシー独自の運送形態だ。アプリを活用することで、運賃の按分も公平かつ確実に行うことができる。

相乗り・乗り合いの代表格・バスは、運行する時刻や乗り降りする停留所が厳密に決められている一方、相乗りタクシーは時間や目的地をフレキシブルに選ぶことができる。その分運賃は高めになりがちだが、移動サービスの選択肢としてはアリだろう。

相乗りは誰と同乗することになるか分からない

相乗りタクシーの場合、比較的パーソナルに近い状態で、ドアツードアの移動が可能になる。こうした利便性がメリットとなる一方、車内で酔っ払いに絡まれたり、不審な同乗者に目をつけられたりするケースも多からず存在する。自宅を特定されることもあるため、女性や子どもにとっては脅威になり得る。

「心配なら通常のタクシーを利用すればよい」という声もあるだろう。これも正論だが、事業者側がビジネスやサービスの観点で専用サービスを設けることを妨げるものではない。それだけ社会的要請・需要があるということなのだ。

ドライバー不在の自動運転サービス

また、ドライバーレスの無人走行が可能な自動運転による移動サービスを考えると、こうした需要はいっそう増すことが考えられる。

バスやタクシーから「人間のドライバー」という存在がなくなり、車内は乗客のみとなる。有事の際を考慮すると、サービス提供者側の現場責任者たるドライバーがいない不安感は意外と大きいものだ。

基本的に、自動運転サービス車両には車内監視システムや緊急通報ボタンなどが設置されているが、これは一定の抑止力にとどまる。店舗における警備などと同様、警備・警報システムなどが一定の抑止力や対応力を発揮するものの、警備員が常駐する有人警備にはその効果は及ばないのだ。

初期における自動運転車は、乗用車タイプをはじめ、トヨタe-Paletteホンダ・GM勢のOrigin、Gaussin Macnica Mobility(Navya)のARMAなど、比較的小型のモデルが多い。乗員はおおむね10人以下だ。

小型モデルは大型モデルに比べ自律走行を行いやすい利点があるため、初期の実用化モデルは圧倒的に小型モデルが多いのだ。

主流の小型モデルがアダに?

しかし、小型モデルであるが故、車内空間は狭くパーソナルに近づきがちなため、不審人物と一対一になりやすい。

自動運転バスタイプの乗り合いサービスの場合、乗降が多い都市部であればそれほど気にならないかもしれないが、乗客が少ない地方部におけるサービスの場合、不安を感じる場面が少なからず発生するものと思われる。

また、自動運転タクシーの場合、基本的には完全パーソナルなサービスとなるため心配はいらないが、将来的には相乗り型の自動運転タクシーサービスが登場する可能性が考えられる。

自動運転の利点としては、無人走行技術により誰もが容易に移動可能になることや、道路交通の安全性向上などが挙げられるが、渋滞緩和効果にも大きな期待が寄せられている。

この渋滞緩和効果は、パーソナルな自動運転タクシーでは実現できない。乗り合い・相乗り形式のモビリティが普及してこそ成立するものだ。温室効果ガスの削減など環境面においても同様で、1台に複数人が乗ってこそ効果が高まる。

こうした点を踏まえれば、自動運転相乗りタクシーの登場も既定路線になり得る。その一方、車内における安全性の観点では、この自動運転相乗りタクシーは他に比べ危険度が高いと言える。ドライバー不在の狭い空間の中、見知らぬ人と場合によっては一対一で時間を共有することになるためだ。

自動運転時代の移動サービスにおいて、「〇×専用車」の需要が大きく増す可能性は想像以上に高くなりそうだ。

■ライドシェアと自動運転の動向

本格版ライドシェアは議論中

ライドシェアは、日本版ライドシェアと呼ばれる「自家用車活用事業」が2024年4月に始まり、タクシー事業者の運行管理のもと、一般ドライバー×自家用車を活用したサービスが行われている。内容的には、ライドシェアサービスというよりタクシーサービスに準じたものだ。

タクシー事業者以外のものが運行管理を担う本格版ライドシェアに関しては議論真っ只中にあり、6月までに一定の方針・案が示される予定だ。

【参考】ライドシェアの動向については「ライドシェアの法律・制度の世界動向(2024年最新版)」も参照。

自動運転サービスは産声を上げ始めた段階

自動運転関連では、改正道路交通法のもと2023年4月にレベル4サービスの提供が可能となった。これまでに、福井県永平寺町のZEN drive、ティアフォー、BOLDLY、JR東日本の気仙沼線BRTにおける自動運転システムの計4例がレベル4システムとして認可されている。

自動運転タクシーは、ホンダが2026年初頭にも東京都内で実用化する計画を発表している。

【参考】自動運転の動向については「自動運転、次は東北で「なんちゃってレベル4」認可 汎用性に課題感」も参照。

■【まとめ】さまざまな専用サービスが誕生?

本格版ライドシェアはその是非そのものが焦点となっているため、制度設計次第では実現しない可能性もある。一方、自動運転サービスもまだまだ「〇×専用」を意識する段階にはないのが現状だ。

しかし、MaaSに象徴されるようにモビリティサービスの在り方を模索する動きは今後も進んでいく見込みで、サービスの細分化や統廃合を経る過程において、各サービスに付加価値を与えるべくさまざまな専用サービスが誕生する可能性が高い。

人の属性に対する専用化や、何らかのサービスに特化した専用化などでどのように需要を満たし、あるいは創出していくのか。こういった観点からもモビリティ業界の動向に注目したい。

【参考】関連記事としては「モビリティサービスの事例・種類(2024年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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