自動運転、一気に事故リスク露呈 日本初レベル4が運行中止、米国でもGMに停止命令

福井県永平寺町が発表、誘導型でも接触事故



出典:経済産業省公式X

自動運転移動サービスの事故リスクが一気に露呈している。日本では、「日本初の自動運転レベル4」の触れ込みで始まった福井県永平寺町の自動運転モビリティが10月29日に接触事故を起こし、運行中止が発表された。アメリカではGM系の自動運転タクシーに営業停止命令が出たばかりだ。

当面、技術水準がかなり向上するまでは、自動運転車であっても事故はゼロにはならない。そのため基本的には、事故の発生率を加味せずに「事故発生=運行中止」と即座に結びつけるのは早計だが、普及の初期段階では社会受容性も考慮して運行継続に慎重にならざるを得ないのも事実だ。


■「日本初のレベル4」で接触事故

永平寺町での事故について、永平寺町は以下のプレスリリースを10月29日に出している。

▼永平寺町ZENドライブ(自動運転)運行に伴う接触事故について
https://www.town.eiheiji.lg.jp/99/p011394.html

事故は29日の午前10時25分ごろに「永平寺参ろーど」で発生した。荒谷停留所から志比停留所に向けて運行していた自動運転車が、人が乗っていない自転車と接触した。当時、自動運転車には70代の男性4人が乗っていたが、この接触事故によりケガ人は出ていない。

永平寺町は事故原因については「調査中」とした上で、「原因究明及び対策を講じて、十分な安全対策が確認できるまで自動運転の運行を中止とさせていただきます」としている。


永平寺町で運行されていた自動運転モビリティは、2023年5月に自動運転レベル4での運行が開始された。自動運転レベル4は「特定域内での完全自動運転」の水準を指し、永平寺町でのレベル4は自動運転車に運転手やセーフティドライバーに相当する人が同乗していないことが特徴だ。

ベース車両はヤマハ発動機の電動カート(7人乗り、区分は普通自動車)が使用され、自動運転の形式は「電磁誘導式」の自動運転移動サービスとなっている。運行速度は時速12キロ以下と決められている。

▼国内初!自動運転車によるレベル4での運行許可を取得しました|経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2023/05/20230512002/20230512002.html

自動運転モビリティの概要と運行経路=出典:経済産業省プレスリリース(※クリックorタップすると拡大できます)
■「誘導型」の自動運転方式での事故

今回の事故がなぜ起きたのか原因究明が待たれるが、注目すべき点としては、「誘導型」の自動運転方式であるのに接触事故が起きたという点だ。


永平寺町の自動運転では誘導型で決められたルートを走行し、走行途中に車載センサーが障害物などを検知すると、自動で停車する仕組みとなっていた。

この誘導型の自動運転は、米国企業のWaymo(Google系)やCruise(GM系)の自動運転タクシーより展開が比較的容易だ。WaymoとCruiseは誘導型ではなく、特定エリア内ではどこでも走行可能な水準で無人移動サービスを展開しており、自動運転の難易度は高めとなっている。

そのため、Cruiseの自動運転タクシーが他のクルマにはねられた女性を下敷きにするという今月の事故と、今回の日本国内の誘導型の事故とを「自動運転車の事故」としては同列に語れるが、自動運転並びに事故回避の難易度は一定程度異なっているという視点は持っておきたい。

■事故原因や再発防止策の共有の重要性

いずれにしても重要なことは、事故原因の調査結果を受けて粛々と再発防止に向けた取り組みが進むことだ。

さらに言えば、個別の企業・自治体で起きた事故原因が共有され、再発防止策も事業者間でしっかりシェアされることで、個別の知見が「総合知」的に統合されていくことも求められる。

自動運転移動サービスでももちろん、事業者間での競争が技術レベル・サービスレベルの向上に資することになるが、事故原因や再発防止策の共有などの側面では「競争」より「協調」が重要視されるべきと言える点は、強調したおきたい。

【参考】関連記事としては「自動運転車の事故(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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