アビダビ、観光島で自動運転タクシー&バスを「ダブル」導入

中国企業WeRideが取り組みを主導



出典:Department of Municipality and Transport DMT – Abu Dhabiプレスリリース

アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビの2つの島における自動運転タクシー(ロボタクシー)と自動運転バスの導入について、自治体交通局「Department of Municipality and Transport(DMT)」が2023年8月14日までに発表した。

観光開発されているヤス島とサディヤット島の住民や観光客向けに、ロボタクシー8台と小型ロボバス4台を稼働させ、5,000人以上の登録ユーザーにサービスを提供するという内容だ。


■2つの島で自動運転車を導入

すでに2023年6月にアブダビの政府機関であるIntegrated Transport Centre(ITC)は、2つの島で自動運転車のサービスを提供することを発表していた。自動運転車を走行させるのは中国の自動運転ベンチャーWeRide(文遠知行)で、現地企業と協力し行う取り組みになる。

WeRideは2022年にアブダビで行われたレベル4のドライバーレスカーの実証に協力しており、2023年7月には同国の自動運転車のライセンスを取得している。同社によると、これは中東初の国家レベルのライセンスで、WeRideはこの許可によりUAE内のさまざまな路上で自動運転実証や運用を行うことが可能になるという。

アブダビのロボタクシーは「TXAI」と名付けられており、最初は2021年11月に5台導入され、2022年11月に3台追加、8台となった。今回2つの島で導入されるロボタクシーは、これらが活用されるようだ。さらに自動運転のミニロボバス4台も追加され、島内でのサービス提供に活用される。

出典:Department of Municipality and Transport DMT – Abu Dhabiプレスリリース
■国家戦略として自動運転車を導入

UAEは、自動運転車導入の取り組みが活発なことで知られる。米GM傘下のCruiseは、ドバイ道路交通局とロボタクシーを独占的に運行する契約を2021年に交わした。同社がドバイでロボタクシーと配車サービス市場を2029年まで独占的に展開するという内容のようだ。


その際にドバイ道路交通局の幹部は、2030年までにドバイの移動手段の25%を自動運転による移動に変えるという交通戦略を明かしている。Cruiseの自動運転車「Origin」を2023年のローンチから徐々に台数を増やし、2030年には4,000台にまで規模を拡大する計画のようだ。

ドバイでは2023年2月まで、ドバイ企業であるEvocargo(エボカーゴ)がドライバーレストラックの実証実験を行った。そのほかスウェーデンの自動運転トラック開発企業Einrideは、UAEエネルギー・インフラ省と自動運転EV(電気自動車)網の整備に向け覚書を交わしたことを同年5月に発表している。

日本企業では、三笠製作所がドバイ警察と連携し、世界初となる移動式交番の実用化を進めている。2017年に遠隔自動運転が可能なスマート警察署「SPS‐AMV(Smart Police Station-Autonomous Mobile Vehicle)」の開発プロジェクトに着手した。2023年2月には、SPS‐AMV2号機の納車を完了し、2018年に納車した1号機に続き2号機で実証実験を継続することを発表している。

■中東における進出合戦の勝者は?

自動運転車のUAE進出に関しては、現状Cruiseが先を行き、それにWeRideが続く形になっていると言える。


ロボタクシーの商用化を世界で初めて実現したグーグル系の米Waymoなども、中東市場に参入するのか。今後の行方を見守りたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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