タクシー運転手が「自動運転AI」に勝てること

それは「人情味」や「臨機応変さ」



自動運転技術はすでにかなり進化し、アメリカ中国では商用ベースで自動運転タクシーが展開されている。例えばGoogle系Waymoの自動運転タクシーは2018年にサービスを開始し、すでに安全要員が運転席に座っていない状態で地球40周分(約100万マイル)を負傷者なしで走行している。


日本でも今後実用化が進んでいくとみられているが、従来型のタクシーが全て自動運転タクシーに入れ替わったとすると、人間であるタクシードライバーは完全に職を失うことになる。ちなみに一般社団法人「全国ハイヤー・タクシー連合会」によれば、日本にはタクシードライバーが約26万人いる。

しかし、人間のドライバーが車内にいなくなった自動運転タクシーは、人々をしっかりと満足させることができるのだろうか。人間のドライバーでなければ提供できないことが無くなれば、自動運転タクシーに物足りなさを感じる乗客が出てくるかもしれない。

■「人情味」や「臨機応変さ」

人間のタクシー運転手にはできて、自動運転AIにはできないこと、あるい持ち合わせていないことは何か。それはまず「人情味」だろう。

タクシー運転手は、ときには乗客の悩み相談の相手となり、ときにはたわいのない雑談の相手にもなる。タクシーに乗ってたまたま人情味がある運転手さんに当たり、少しの時間の悩み相談で一気に心が晴れるといった経験をしたことがある人もいるはずだ。


「臨機応変さ」でも人間のタクシードライバーに軍配が上がるのではないか。少し極端な例だが、たとえば「前の車を追いかけて!」といった乗客の要請に、人間のドライバーなら臨機応変に対応可能(※もちろんドライバー側には拒否する権利もあるが)だが、自動運転AIの場合はそもそもそのような機能が実装されていなければ、前の車についていくことはできないはずだ。

■しかし自動運転AIが人間に勝る点は多い

このように、人間のドライバーが自動運転AIに勝てることは確実にある。

ただし、逆に自動運転AIが人間のドライバーに勝る点は多い。技術が進化すれば事故率は飛躍的に下がるため乗客にとっては安心だし、24時間365日働けることから、タクシー事業者にとっては「最良・最強のドライバー人材」と言える。

これらのメリットが、人間のドライバーならではの「人情味」や「臨機応変さ」よりも世の中に受け入れられていけば、自動運転タクシーへの入れ替わりはかなりのスピードで進んでいくはずだ。あなたはどう思うだろうか。


【参考】関連記事としては「日産の自動運転タクシー、商用化は中国から!?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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