そろそろIPO?2023年に噂が出そうな自動運転ベンチャー

モービルアイに次ぐ大型上場出るか?

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出典:Nuro公式ブログ

社会実装に向けた動きが年々活発化している自動運転業界。2022年にはインテル系モービルアイが米ナスダック市場に上場し、大きな話題となった。

2023年もモービルアイに続く大型上場を果たすスタートアップが出てくるのか。そろそろIPOの話題が飛び交ってもおかしくない有力企業をピックアップし、紹介していこう。

■日本勢
自動運転スタートアップの代表格ティアフォー

国内自動運転スタートアップの代表格であるティアフォーは、2022年にシリーズBで121億円を調達し、累計資金調達額は296億円に達した。国内勢としては異例の数字だ。

自動運転ソフトウェア「Autoware」を活用したさまざまな事業を展開しており、2022年には自動運転の商用ソフトウェアプラットフォームの提供を開始したほか、ヤマハ発動機との合弁eve autonomyも自動搬送の商用サービスを本格化させるなど、ビジネス展開が勢いを増している印象だ。

そろそろIPOに向けた動きが話題に出てきてもおかしくない時期に差し掛かってきたのではないだろうか。期待を込め、候補の1つに挙げておきたい。

【参考】ティアフォーについては「自動運転技術、仮想世界で「リアル」に実証!ティアフォーに注目」も参照。

近距離モビリティ需要を背景にWHILLもそろそろ?

自動運転車椅子の開発を手掛けるWHILLも期待の1社だ。2012年の設立から10年余りが経過し、そろそろ頃合いでは……と見る向きもある。

同社によると、2022年までに近距離モビリティWHILLを取り扱う自動車ディーラー店舗数が前年比16.5倍の1,000店舗に達したという。空港をはじめ、病院やホテルなどWHILLの導入を目指す動きも着実に拡大している。

この傾向はまだまだ続きそうだ。量産化に向け、IPOによる大型資金調達を考えていてもおかしくはないだろう。

【参考】WHILLについては「世界初!WHILLの自動運転車いす、エレベーターと連携」も参照。

■米国勢
IPO候補の筆頭株はNuro

自動運転配送ロボットの開発を手掛けるNuroは、IPO候補の筆頭株だ。車道を走行する配送ロボット開発の急先鋒として高い注目を集め、企業価値は86億ドルに達する。

カリフォルニア州では無人走行や商用化に向けた許可を取得済みで、ウォルマートやドミノピザなどとの配送実証も盛んだ。2022年には、配送ロボット生産に向け中国のBYDと提携を交わしたほか、Uber Eatsの配送にロボットを配備するパートナーシップを結ぶなど、量産化とサービス化に向けた取り組みがいっそう加速している。

サービスが本格化すれば、社会実装される車両数は膨大な数に上ることが予想される。自動運転タクシーやバス、歩道を走行する配送ロボットとも異なる独自のビジネススタイルをどのように確立していくのか、要注目だ。

▼Nuro公式サイト
https://www.nuro.ai/

【参考】Nuroについては「ついにUber Eatsが自動運転配送!配送車開発のNuroと契約」も参照。

May Mobilityにも注目

自動運転シャトルやタクシーの開発を手掛けるMay Mobilityも存在感を増している。同社の自動運転マイクロトランジットサービスの利用者は米国と日本で32万人以上を超えたという。

これまでに、ミネソタ州やミシガン州、テキサス州、インディアナ州で自動運転シャトルやオンデマンド型ライドシェアサービスなどを展開してきた。日本でも、広島県で実施されたMaaS実証に参加している。

2022年には総額1億1,100万ドルのCラウンドを完了した。これまでの出資者には、トヨタや豊田通商、三井住友銀行、ソフトバンクなど日本企業が多く、日本法人も設立している。

特にトヨタとの結び付きを強めている印象で、レクサス車やトヨタのAutono-MaaS車両「シエナ」をベースにした自動運転車を多く活用している。

柔軟なサービス展開を武器に今後どのようにビジネスを拡大していくのか、要注目だ。

▼May Mobility公式サイト
https://maymobility.com/

【参考】May Mobilityについては「トヨタの自動運転用シエナ、初の商業利用か!米May Mobilityが発表」も参照。

■中国勢
期待度高いMomenta

中国勢では、2016年設立のMomentaに注目が集まる。同社はレベル4走行を可能にする自動運転ソリューション「MSD(Momenta Self Driving)」や、自家用車向けの大量生産に対応したエンドツーエンドの自動運転ソリューション「Mpilot」などを製品化している。

協業関係では、トヨタとHDマップ関連で提携を結ぶほか、上海汽車集団(SAIC)のロボタクシー事業SAIC Mobilityに自動運転ソリューションを提供している。EV(電気自動車)メーカーのBYDとも高度な自動運転機能開発に向け合弁DiPi Intelligent Mobilityを立ち上げている。

資金調達はCラウンドまで完了しており、出資者にはボッシュやGM、トヨタ、メルセデス・ベンツが名を連ねるなどなど期待度も高い。

▼Momenta公式サイト
https://www.momenta.cn/

Horizon Roboticsもそろそろ?

高性能AI(人工知能)チップの開発を手掛けるHorizon Roboticsも、過去にIPOが話題になった有力な1社だ。BYDやLi AutoといったEVメーカーをはじめ、奇瑞汽車(Chery)など同社製チップを採用する輪は着実に広がっているほか、フォルクスワーゲングループやコンチネンタルとそれぞれ協業し、開発加速に向け合弁を設立することなども発表されている。

2021年に米国市場でのIPOを検討している旨が報じられたが、おそらく米中間の経済紛争を背景に凍結しているものと思われる。また、上海や香港市場への上場を模索する動きも報じられており、そろそろIPOに向けた取り組みを本格化させそうだ。

▼Horizon Robotics公式サイト
https://en.horizon.ai/

【参考】Horizon Roboticsについては「自動運転向けAIチップ開発のHorizon、2021年中に上場へ」も参照。

WeRideやAutoXは?

中国では、WeRideやAutoX、Pony.ai、DeepRoute.aiなど多くの自動運転スタートアップが活躍しているが、IPOに向けた動きはそれほど活発でない印象が強い。

ただ、WeRideが2022年に米国または香港での上場を検討している旨報じられるなど、機運は徐々に高まっているものと思われる。

こうした有力スタートアップの中から、そろそろ上場に向けた動きを具体化する企業が出てきてもおかしくはないだろう。

▼WeRide公式サイト
https://www.weride.ai/
▼AutoX公式サイト
https://www.autox.ai/ja/index.html

【参考】WeRideについては「年内上場か!?「レベル4自動運転」特化の中国WeRide」も参照。

■欧州勢
Einrideがグローバルに活躍

独自の自動運転トラック開発を手掛けるスウェーデンのEinrideも話題に上る。2016年設立の同社は、資金調達ですでにCラウンドに達しており、2022年12月には株式と債務枠による計5億ドルの資金調達を発表した。

新たなソリューション開発とともに、2023年1月からスウェーデンと米カリフォルニア州に拠点となるEinrideステーションの建設を開始するようだ。ステーションは、最大200台のフリートにさまざまなサービスを提供するという。

これまでに、スウェーデンと米国をはじめ、ドイツ、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグ、ノルウェーへのビジネス展開拡大を発表している。米国では、2022年10月に無人走行による公道実証に成功している。

商用化を見据えた本格量産段階に入れば、米国市場などへのIPOを行う可能性は十分考えられる1社だ。

▼Einride公式サイト
https://www.einride.tech/

【参考】Einrideについては「消えた運転席!次世代自動運転トラック、ドイツデビューへ」も参照。

■【まとめ】自動運転分野で高まり続ける資金需要

自動運転分野では依然として膨大な資金需要が発生している。継続発生する開発費に加え、一部では量産化を見据えた設備投資なども本格化しており、需要はまだまだ高まる一方だ。

その一方、多くの開発企業においては黒字をはじき出すような本格的なビジネス展開はまだ先の話であり、しばらくは体力(資金)勝負を余儀なくされているのが現状だ。

ベンチャーキャピタルや自動車メーカー系の投資会社などが積極的にスタートアップに先行出資する一方、ビジネス展開が不透明なためかIPO後に思うような資金調達を実施できていない企業も目立つ。

コロナ禍などを背景に不安定な経済情勢が続いているのも大きな要因となっており、その意味では2023年も様子見する動きが広がる可能性が考えられる。

ただ、米国・中国をはじめとした自動運転サービスの実装は着実に拡大しており、2023年は日本をはじめとした各国でレベル4サービスが誕生する可能性が高い。

将来に向けたビジョンを鮮明にし、大型資金調達に向け攻勢を仕掛けるスタートアップの登場に期待したいところだ。

【参考】関連記事としては「自動運転、米国株・日本株の関連銘柄一覧」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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