ボルボ・カーズは2022年1月4日までに、自動運転ソフトウェア企業のZenseact(ゼンセアクト)を完全子会社化したことを発表した。これまではグループ会社という位置付けだった。
ボルボ・カーズはこれまでに同社の株式を86.5%保有していた。残りの13.5%をグローバルモビリティ技術企業のECARXから取得し、Zenseactの株式を100%保有することになった。ちなみにECARXは中国の吉利控股集団(Geely Holding Group)傘下の企業だ(※ボルボもGeely Holding Groupの傘下にある)。
ボルボ・カーズは自動運転技術の展開に向けて、研究開発を強化する方針を掲げていた。Zenseactを完全子会社化することで、ボルボ並びにポールスターブランドで展開している車両に最初に搭載させる自動運転技術の開発を加速させる考えだという。
ちなみにZenseactはボルボ・カーズ本体に吸収する形式をとらず、Zenseact単体として独立性を保っていくという。
■レベル3の開発競争で優位に立てるか?
ボルボ・カーズはADAS(先進運転支援システム)をすでに市販車で展開している。技術レベルとしては「自動運転レベル2」(部分運転自動化)に相当し、次の展開として自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の開発を始めているものとみられる。
レベル3の商用化は、市販車向けではすでにホンダとメルセデス・ベンツが販売をスタートさせており、中国勢や韓国勢、そしてアメリカ勢もレベル3の市販車の展開に向け開発を強化している。そんな中、ボルボ・カーズにも相応のプレッシャーがかかっているはずだ。
Zenseactの子会社化で自動運転技術の開発競争を優位に進めることができるのか、注目だ。
【参考】関連記事としては「ボルボカーズのXC90、DiDiの自動運転テスト車に!以前はUberも採用」も参照。
■OEMや大手サプライヤーによる買収加速
ちなみに自動運転市場では技術開発の競争が激化する中、完成車メーカーによる企業買収がこれまでも度々発表されている。代表的な例としては、米大手自動車メーカーのGMによるCruise(クルーズ)の買収だ。2016年に買収を行っており、Cruiseは現在、GMの自動運転部門として自動運転車両の開発を進めている。
トヨタ自動車に関しては、子会社のウーブン・プラネット・ホールディングスを通じ、米ライドシェア準大手Lyftの自動運転部門「Level 5」を買収したことが知られている。欧州ステランティス(Stellantis)は2022年、ハンガリーの自動運転スタートアップ「aiMotive」の買収を発表した。
韓国最大手の自動車メーカーである現代自動車(ヒョンデ)については、自動運転技術を開発する同国のスタートアップ「42dot」の買収を検討していることが報じられている。
自動車部品サプライヤーも自動運転技術の強化に向け、有力ベンチャーの買収に乗り出している。例えば独ボッシュ(Bosch)は、イギリス国内に拠点を構える自動運転スタートアップ「ファイブ(Five)」の買収を2022年4月までに完了させている。
自動運転市場は今後の拡大が確実視されていく中、完成車メーカーや大手サプライヤーが資金を積んで短期間で高い技術力を取り込もうという動きは、今後も加速していきそうだ。
【参考】関連記事としては「韓国・現代、ベンチャー買収で自動運転事業加速か」も参照。