解禁!自動運転レベル4、道交法改正に伴う「法令改正案」概要

道交法施行令や内閣府令などの改正内容は?



自動運転レベル4や自動走行ロボットの公道走行を解禁する改正道路交通法が2023年4月1日に施行される見通しとなった。警察庁は、改正法に付随する関係政令・法令の改正案を公表し、2022年11月26日までの間パブリックコメントを実施している。


道路交通法施行令や内閣府令には、特定自動運行主任者や遠隔操作型小型車に関する細かな規定などが盛り込まれている。

この記事では、改正道路交通法の概要とともに、関係法令の改正案の中身に迫っていく。

■改正道路交通法の概要
レベル4の自動運転移動サービスを許可制の「特定自動運行」として規定

改正道路交通法では、新たに「特定自動運行」や「遠隔操作型小型車」について法整備がなされている。

特定自動運行は、道路において使用条件を満たした自動運行装置を使用して運行することを指す。ただし、使用条件を満たさなくなった際に自動的に安全な方法で自動車を停止させることができるもので、かつ運行中の道路や交通及び当該自動車の状況に応じて自動車の装置を操作する者がいる場合のものを除く。


これは自動運転レベル4を意味する。人が介在することなく走行し、万が一の際も自ら自動で安全に停止する機能を備えた自動運転車の運行を指す。車内や遠隔地に運転者が存在するレベル3などは、現行制度上においても道路使用許可を受けることで可能となるため、特定自動運行には相当しない。

改正法では、この特定自動運行の許可制度が規定された。レベル4の自動運転移動サービスを行う者は、特定自動運行計画を策定し、都道府県公安委員会に申請・審査を受けなければならない。

事実上、レベル4自家用車ではなくレベル4移動サービス用途などを意図した内容となっており、自動運転移動サービスを行うとする事業者を「特定自動運行実施者」と位置付け、サービスなどに関わる者を「特定自動運行業務従事者」としている。

「特定自動運行業務従事者」には、運行を担当する責任者「特定自動運行主任者」や、交通事故の場合に現場に急行し道路における危険防止措置を行う「現場措置業務実施者」を指定・選任し、教育しなければならない。


自動走行ロボットは「遠隔操作型小型車」として届出制に

一方、主に歩道を走行することが想定される自動走行ロボットについては、遠隔操作により通行する車であって、最高速度や車体の大きさが一定の基準に該当するものを「遠隔操作型小型車」と規定し、歩行者と同様の交通ルールを適用することとしている。

遠隔操作型小型車は届出制で、通行させようとする場所を管轄する都道府県公安委員会に事前に届出を行う。

【参考】改正道路交通法については「【資料解説】自動運転レベル4を解禁する「道路交通法改正案」」も参照。

■道路交通法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案
出典:警察庁(※クリックorタップすると拡大できます)
特定自動運行終了時の表示方法を規定

特定自動運行に係る許可制度の創設に関連し、特定自動運行において交通事故があった場合における損壊物などの保管の手続きについて、道路交通法施行令に新たに特則を設ける。現場の警察官が危険防止に向け必要と判断した際、交通事故において損壊した物などの移動やその他応急措置がとれる――といった内容だ。

また、高速自動車道などにおいて特定自動運行が終了した際に、特定自動運行主任者が行わなければならない表示の方法についても新たに特則を設けている。

特定自動運行用自動車が停止していることを表示する装置で、後面その他後方から進行してくる自動車の運転者が見やすい位置に取り付けられたものなど、内閣府令で定める基準に適合するものを作動させる方法により行うものとしている。

遠隔操作型小型車が従う信号機のルールを明示

遠隔操作型小型車に関しては、交通方法に関する規定を整備する。青色の灯火は進行することができ、黄色の灯火は道路の横断を始めてはならないなどとする歩行者の規定に、遠隔操作型小型車も加えることとしている(第2条関係)

つまり、歩行者が従うべき信号機のルールがそのまま遠隔操作型小型車にもあてはめられることとなる。

特定自動運行の許可に向けた審査手数料は7万9,200円

このほか、特定自動運行に係る業務上過失致死傷の犯罪の捜査に必要な経費を国庫支弁の対象に加える警察法施行令の改正案や、特定自動運行の許可に係る標準手数料として、特定自動運行の許可の申請に対する審査7万9,200円、特定自動運行計画の変更の許可の申請に対する審査7万8,500円とする、地方公共団体の手数料の標準に関する政令の一部改正案が盛り込まれている。

▼【案文】道路交通法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/public-comment/04-1_anbun-seirei.pdf

■道路交通法施行規則等の一部を改正する内閣府令案
出典:警察庁(※クリックorタップすると拡大できます)
出典:警察庁(※クリックorタップすると拡大できます)
特定自動運行に関する計画の要項を規定

道路交通法施行規則に特定自動運行の許可に関する規定を盛り込んでいる。特定自動運行の許可を公安委員会に申請する際に必要となる特定自動運行に関する計画には、道路交通法に規定された事項に加え、気象状況や道路の構造、自動運行が終了した場合に講じられる措置型の交通に及ぼす影響の程度などが必要となる。このほか、登記事項証明書など、申請の際に必要な書類についても細かく規定している。

特定自動運行主任者などに必要な教育や要件

また、道路交通法第七十五条の十九に定めた特定自動運行主任者、現場措置業務実施者、それ以外の特定自動運行業務従事者に実施しなければならない教育内容についてそれぞれ細かく規定している。

特定自動運行主任者は、自動運行装置の仕様や遠隔監視装置の作動状態の監視、特定自動運行を終了させるための措置、事故時の対応などが教育事項に盛り込まれている。

特定自動運行主任者の要件では、両眼の視力または両耳の聴力を喪失した者でないこと、遠隔監視装置その他の特定自動運行を行うために必要な設備を適切に使用することができる者であることなどを求めている。

遠隔監視装置の要件

遠隔監視装置には、以下の各要件を求めることとしている。

  • 特定自動運行用自動車に取り付けられた装置から送信された自動車の周囲の全方向の道路や交通の状況、車内の状況に係る鮮明な映像と明瞭な音声、自動車の位置情報を常時かつ即時に受信することができること
  • 特定自動運行主任者が映像や位置情報を視覚により認識するための機器を有すること(ディスプレイなど)
  • 特定自動運行主任者が音声を聴覚により認識するための機器を有すること(スピーカーなど)
  • 特定自動運行主任者が車内にいる者や車外にいる者との間で音声の送受信により通話をするための機器を有すること(無線通話装置など)
  • 映像や音声、位置情報の受信などを正常に行うことができないこととなった場合に、直ちに特定自動運行主任者にその旨を通知すること
  • 前項の映像や音声・位置情報、通話の内容、通知に係る情報を記録すること
  • サイバーセキュリティを確保するために必要な措置が講じられていること
遠隔操作型小型車の交通方法等に関する規定の整備関係

遠隔操作型小型車及び移動用小型車は、車体の大きさが長さ120センチメートル以下、幅70センチメートル以下、高さ120センチメートル以下のサイズで、車体の構造は、原動機として電動機を用いること、時速6キロメートルを超える速度を出すことができないこと、歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないことが基準として提示されている。

なお、遠隔操作型小型車の高さは、センサーやカメラなど周囲の状況を検知するための装置やヘッドサポートを除く。

非常停止装置は、車両の前方及び後方から容易に操作可能な押しボタンとし、作動時に直ちに原動機を停止させるものであり、かつ周囲の部分との色の明度や色相、彩度の差を大きくするなどして容易に押しボタンを識別できるものとしている。

遠隔操作による通行の届出

遠隔操作型小型車を道路で通行させる際、開始する1週間前までに届出書を提出する。届出には、大きさや原動機の種類、最高速度などをはじめ、業界の自主基準に適合することを証する書面などを要する。

届出番号などの表示は、遠隔操作型小型の見やすい箇所に明瞭に掲示しなければならない。

遠隔操作型小型車に形式認定制度

遠隔操作型小型車や移動用小型車において、その製作や販売を業とするものは、各車の型式について国家公安委員会の認定を受けることができる。遠隔操作型小型車の認定は、遠隔操作により通行できることや各基準に該当するものであるかどうかを判定する。

このほか、遠隔操作型小型車や移動用小型車に付ける標識の様式も示されている。

▼【案文】道路交通法施行規則等の一部を改正する内閣府令案
https://www.npa.go.jp/news/release/2022/20221027001.html

■道路標識、区画線及び道路標示に関する命令の一部を改正する命令案
出典:警察庁(※クリックorタップすると拡大できます)

標識関連では、補助標識「遠隔操作型小型車」が新設される。遠隔操作型小型車に限り、本標識が表示する交通規制の対象となること、またはならないことを示すもので、「遠隔小型」「遠隔小型を除く」といった感じで略称を用いることもできる。

また、既存の規制標識「通行止め」「自転車専用」「歩行者通行止め」「歩行者横断禁止」により通行・横断を禁止する対象に遠隔操作型小型車も含まれるよう、その表示する意味を改めるほか、「歩行者専用」などの標識も、歩行者と遠隔操作型小型車の両方を含む「歩行者等」に改める。

▼【案文】道路標識、区画線及び道路標示に関する命令の一部を改正する命令案
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/public-comment/06_anbun-hyoushiki.pdf

■道路交通法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係国家公安委員会規則の整備に関する規則案
出典:警察庁(※クリックorタップすると拡大できます)

特定自動運行や移動用小型車・遠隔操作型小型車が新たに認められたため、指定講習機関に関する規則や交通事故調査分析センターに関する規則、原動機を用いる歩行補助車等の型式認定の手続等に関する規則、道路交通法の規定に基づく意見の聴取及び弁明の機会の付与に関する規則など、関連するものを一部改正する。

【案文】道路交通法の一部を改正する法律等の施行に伴う関係国家公安委員会規則の整備に関する規則案
https://www.npa.go.jp/news/release/2022/20221027001.html

■【まとめ】レベル4移動サービスの第1陣に注目

下位法令は今回のパブコメを経て必要に応じて修正し、改正道路交通法と同日に施行する予定だ。法律関係以外にも、道路交通の安全確保に向けた運用ルールとなる各種ガイドラインなども今後策定・改訂されるものと思われる。

予定通り進めば、2023年4月にレベル4移動サービスが解禁され、本格的な自動運転社会が到来することになる。現在実質レベル2で継続運行している茨城県境町のサービスなどが、第1陣として特定自動運行に踏み出すものと思われる。

引き続き国の取り組みとともに各社の動向に注視したい。

※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。

【参考】関連記事としては「自動運転と警察(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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