東京海上日動火災保険株式会社(本社:東京都千代田区/取締役社長:広瀬伸一)と東京海上ディーアール株式会社(本社:東京都千代田区/代表取締役社長:嶋倉泰造)は2022年11月1日までに、新たな自動運転関連事業者向けのリスクコンサルティングサービスと専用特約の提供を開始したことを発表した。
報道発表によれば、ホンダが栃木県宇都宮市と芳賀町で実施している自動運転技術実証に提供されるようだ。
■年間250万件以上の事故対応の知見を活かす
リスクコンサルティングサービスでは、自動運転システムの技術特性・走行環境条件などの情報と、道路上のリスク地点を把握できるリスクマップの情報から、走行ルートの現地調査を行う。自動運転の実証で実効性を高めるべく、実証実験の走行ルートを選定する際のアドバイスや、危険シナリオを抽出し、評価や事故予防策などの情報も提供する。
リスクマップは、東京海上日動がこれまで収集してきた自動車事故やドライブレコーダーから集めた危険挙動などのデータと、道路や交通量、天気などの外部データをかけ合わせて開発したという。
東京海上日動は年間250万件以上の事故対応で、事故の発生状況や原因などのデータを収集しており、データを活用したリスクマップは今後も改善しながら、全国版の開発も進めていくようだ。
■「自動運転車両開発事業者等」も被保険者に
従来の自動車保険では車両所有者や運転者が被保険者だったが、専用特約では、従来含まれていなかった「自動運転車両開発事業者等」も、被保険者に追加される。そのため、自動運転実証実験中に保険の対象となる事故が発生しても、被保険者である事業者間で責任を分担せずに済むようになる。
この専用特約により、事故が発生しても開発事業者間での協力関係が悪化することなく、自動運転車両の技術やサービス導入が停滞しないことが期待できそうだ。
■「安全な未来」のための取り組みを下支え
自動運転が「ほぼ100%事故を起こさない」状況になるのは、もう少し先の未来の話だ。現状では、海外で展開されている自動運転タクシーにおいても、日本で実証走行した自動運転バスにおいても、一定程度の事故の事例がある。
しかし、事故がある程度起きる可能性があるからといって、実証実験を止めるのはナンセンスだ。もちろん、物的被害や人的被害が出ないように最大限努めることは大前提ではあるが、事故率を限りなくゼロに近付けるための実証実験を続けていくことが、最終的には安全な社会の構築につながる。
実証実験の実施主体を支える保険の存在は、そうした取り組みを下支えする。そういう意味でも、今回のような専用特約は非常に有用なものと言える。
【参考】関連記事としては「自動運転の事故責任、誰が負う?(2022年最新版)」も参照。