Cruise内部からの手紙「自動運転タクシーに多数の懸念」

匿名でカリフォルニア州当局に告発



出典:GM Cruise公式サイト

ドライバーレスの自動運転タクシーサービスを2022年2月からサンフランシスコで展開している米GM傘下のCruise。同年6月には有料化にも踏み切るなど、スピード感ある事業展開を見せている。

そんな中、自動運転タクシーの営業許可証を発行するカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)に対し、Cruiseの内部の人間から「自動運転サービスの開始が早すぎ、懸念が多い」という趣旨の手紙が送られていたことが明らかになった。


米メディアの報道によると、手紙が届いたのは2022年5月中旬。送り主はCruiseで数年間勤務している人物だという。

■匿名で届いた手紙の内容は?

告発内容は、自動運転車の安全面への懸念と社内の問題点についてだ。手紙では、自動運転車が交差点でエンストして車線をふさいだり、緊急車両の妨げになったりする可能性について強調されていたようだ。

このような事態が発生した場合には遠隔操作だけでの解決は難しく、レッカー移動が必要になるとのことで、一部の従業員の間ではサービスの商業化について疑問視する声もあったようだ。

■「予言」通りにトラブル頻発

実際、Cruiseの自動運転車は2022年に入り何度かトラブルを起こしている。


4月には、Cruiseの自動運転車が緊急出動中の消防車を25秒間足止めした。さらに5月には、約10台の自動運転タクシーが公道をふさぐ形で数時間立ち往生。翌6月にも同様のトラブルが生じた。

このほか、夜間にも関わらずヘッドライトを点灯せずに走行したり、横断歩道を渡ろうとしていた歩行者の通行を妨げたりした事例も報告されている。7月には、トヨタのプリウスとの衝突事故も発生し、米国道路交通安全局が調査を行っているようだ。

■問題浮き彫りで許可取り消しも?

2013年に設立され、2016年にGMの傘下に入ったCruise。サンフランシスコを中心に実証実験を進め、2022年3月には、自動運転タクシーの車両を2030年までに100万台まで増やす目標を公表している。米国内でサービスの拡大を進めており、2023年にはドバイでもサービス開始を予定するなど。順調に進んでいたかのように見えていた。

なお、ホンダ、GM、Cruiseは協業しており、自動運転車「クルーズAV」を使用した実証実験が日本で進められようとしている。


自動運転タクシーの事業化にあたり、CPUCは認可条件などについて「安全でない行動が明らかになった場合、いつでも許可を停止または取り消す権限を持つ」との説明をしていた。状況次第では、Cruiseのサービス停止となる可能性も否めない。

▼Cruise公式サイト
https://www.getcruise.com/

【参考】関連記事としては「住民唖然!Cruiseの自動運転タクシー、深夜の「道路封鎖」」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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