「ASIMO(アシモ)」という名前を聞いて、二足歩行のヒューマノイドロボットを思い浮かべる人は多いだろう。そのASIMOの名がいま、ホンダの新型EV「Honda 0 SALOON(ゼロ サルーン)」の頭脳となるビークルOS「ASIMO OS」として復活しようとしている。
2025年1月のCES 2025で発表されたHonda 0 SALOONは、2026年に北米市場への投入が決まった。自動運転レベル3(アイズオフ)機能を搭載し、OTA(Over The Air)によるソフトウェアアップデートで機能を順次拡張していく設計だ。
背景にあるのは、ホンダにとって痛恨の出来事だ。2024年12月にGM(ゼネラルモーターズ)が傘下のCruise(クルーズ)を通じて進めていたロボタクシー事業からの撤退を発表し、ホンダが東京で2026年初頭に予定していた自動運転タクシーサービス計画も事実上白紙となった。日産がWayve・Uberと組んで東京ロボタクシーへの参入を目指す外部連携路線を取る一方、ホンダはGMとの提携を解消し、独自の自動運転戦略に舵を切った。
巨額の研究開発費が必要な自動運転領域において、外部資本やパートナーに頼らず自社技術で勝負するこの独自路線が吉と出るか凶と出るか。Honda 0 SALOONはその答えを問う最初の1台となる。
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■Honda 0 SALOONは低全高・広室内の次世代EV
Honda 0 SALOONは2024年のCES(Consumer Electronics Show)でコンセプトモデルが公開され、2025年1月のCES 2025で量産モデルへの進化を示すプロトタイプが世界初公開された。Honda 0シリーズのフラッグシップに位置付けられており、新開発のEV専用アーキテクチャーをベースに設計されている。
外観の最大の特徴は「低全高でスポーティーなスタイルと、外観からは想像できないほどの広い室内空間の両立」だ。ホンダが「Thin, Light, and Wise(薄い、軽い、賢い)」と称する開発アプローチを体現しており、スポーツカーを思わせる低いルーフラインでありながら、乗員空間は広い。生産拠点は米国オハイオ州のHonda EV Hub(ホンダEVハブ)で、2026年前半に北米市場への投入を予定。その後、日本・欧州などグローバルへ展開される。
SUVとセット展開、Honda 0シリーズとして2026年に同時デビュー
Honda 0 SALOONと並行して、中型SUVの「Honda 0 SUV」も同じプラットフォームと哲学のもとで開発されており、2026年前半に北米投入という。こちらはホンダ独自のロボティクス技術から生まれた3次元ジャイロセンサーによる高精度の姿勢推定と安定化制御も搭載し、多様な路面環境での安定走行を実現する。SALOONがフラッグシップとして自動運転の旗を振り、SUVが量販を担う2車種体制で、Honda 0シリーズは北米市場への本格投入を図る。
【参考】関連記事としては「ホンダの自動運転・運転支援技術(ADAS)、現状と戦略は?」「日本で自動運転レベル3の車種はどれ?ホンダ・トヨタ・日産は販売済み?」も参照。
■車のOSに「ASIMO(アシモ)」の名を冠した理由
ASIMO OSとは、Honda 0シリーズ全車に搭載されるホンダ独自のビークルOS(車載オペレーティングシステム)だ。スマートフォンにおけるAndroid OSやiOSと同じように、車両全体を統括的にコントロールするための基本ソフトウェアに当たる。
「ASIMO(Advanced Step in Innovative Mobility)」はホンダが1986年から研究開発を開始し2000年に発表した世界的に著名なヒューマノイドロボットだ。「世界中に驚きと感動を与え、次世代EVの象徴となることを目指して命名した」とホンダは説明している。二足歩行ロボットとして培ったロボティクス技術の知見が、車両制御にも活かされることへの期待を込めた命名でもある。
ASIMO OSが統合するシステムと「超・個人最適化」体験
ASIMO OSはソフトウェアプラットフォームとして、AD(自動運転)/ADAS(先進運転支援)や車載インフォテイメントIVI、ダイナミクス統合制御といった車両の主要システムを統括するECU(電子制御ユニット)を一元管理する。スマートフォンのOSと同様、販売後もOTA経由でソフトウェアを継続的にアップデートする仕組みだ。
ホンダが訴求するのは「超・個人最適化」体験だ。ASIMO OSがユーザーの嗜好・習慣・ニーズを学習しながら、移動空間としての快適性やデジタルUXを個人に最適化していく。映画鑑賞・リモート会議・SNSといった「ドライバーによる移動中のセカンドタスク」が可能になる自動運転レベル3機能との組み合わせで、「クルマを移動する生活空間にする」というコンセプトを実現しようとしている。
ルネサスエレクトロニクスとの高性能SoC共同開発
ASIMO OSの処理基盤となるのは、ホンダがルネサスエレクトロニクスと共同開発するコアECU向け高性能SoC(システム・オン・チップ)だ。2000TOPSのAI処理性能を20TOPS/Wという電力効率で実現する見込みで、2020年代後半に投入する次世代Honda 0シリーズへの採用も予定している。自動運転処理・IVI・パワートレイン制御を一つのチップで高効率に処理する設計は、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)の核となる。
■自動運転レベル3「アイズオフ」機能
Honda 0 SALOONにおける自動運転の実装は「段階的拡張」という設計思想に基づく。まず 2026年の北米投入時点では、高速道路での渋滞時(低速域)における自動運転レベル3のアイズオフ走行からスタートする。その後、OTAによる機能アップデートを通じて、運転支援・自動運転レベル3が適用できる条件・範囲を順次拡大していく計画だ。
レベル3「アイズオフ」とは、特定の条件下でシステムが運転の主体となり、ドライバーは前方を目視する必要がなくなる状態を指す。映画鑑賞・リモート会議・読書など、これまで走行中には不可能だった「セカンドタスク」が法的に許容される。ホンダは最終的に「世界に先駆けて全域アイズオフを実現する」という高い目標を掲げており、Honda 0 SALOONはその第1歩に当たる。
ホンダがレベル3の先駆者である歴史的経緯
ホンダはレベル3の市販車化という観点で、世界で最も先行しているメーカーだ。2021年3月、高速道路での渋滞時アイズオフを可能にする「Honda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート)」を搭載した「LEGEND(レジェンド)」を発売。これは世界初の自動運転レベル3実用化という歴史的な実績となった。その知見と技術の蓄積が、Honda 0 SALOONへと受け継がれていく。
■GM Cruise撤退で白紙になった東京ロボタクシー計画、ホンダはどこへ
Honda 0 SALOONの2026年投入を理解するには、ホンダが直前に経験した「自動運転戦略の挫折」を知る必要がある。ホンダはGMおよびCruiseと日本での自動運転タクシー実現を目指していたが、2024年12月に親会社のGMがロボタクシー事業からの完全撤退を発表。ホンダはGMとの資本提携を解消し、東京のロボタクシー計画は事実上の白紙となった。
「独自路線」に切り替えたホンダの新戦略
Cruise撤退を受けてホンダが選んだ道は「自社開発への転換」だ。ホンダはAIを活用した画像認識技術に強みを持つ米スタートアップ・Helm.ai(ヘルム・エーアイ)との技術融合を進めており、高精度センサーとAI画像認識を組み合わせることで「熟練ドライバーのようにふるまうAD(自動運転)」の追求を続けている。Honda 0 SALOONは「パートナー依存からの脱却」と「自社技術での自動運転実現」というホンダの覚悟を体現した車種だ。
【参考】関連記事としては「ホンダ、自動運転タクシー計画を「白紙撤回」か GM撤退による影響不可避」「ホンダの自動運転・運転支援技術(ADAS)、現状と戦略は?」も参照。
■トヨタや日産の自動運転状況は?
Honda 0 SALOONの文脈を理解するため、トヨタと日産の現状も整理しておきたい。2026年4月時点で、日本国内で一般販売されているレベル3搭載の新車は存在しない。自動運転レベル3の実用化という意味ではホンダが圧倒的なリードを持つ。
トヨタはレベル3未実装、レベル4のe-Paletteで別路線
トヨタの市販車における最高水準は、高速道路での渋滞時ハンズオフを可能にするレベル2+機能(Advanced Drive)に留まっている。一方でトヨタはサービス車両のe-Palette(イーパレット)でレベル4に照準を絞っており、2027年度を目途にレベル4準拠車両の市場導入を目指す。市販乗用車でのレベル3とはまったく別のアプローチだ。
日産はWayve・Uberと組んで東京でレベル4ロボタクシーを狙う
日産は独自の市販車レベル3実装こそ実現していないが、2026年3月にWayveおよびUberと提携。2026年末を目標に東京でロボタクシーのパイロット展開を目指すと発表した。日産リーフをベース車両にWayveのAIドライバーを搭載する仕組みだ。
【参考】関連記事としては「日本で自動運転レベル3の車種はどれ?ホンダ・トヨタ・日産は販売済み?」「自動運転はいつ実用化?レベル・モビリティ別に動向・有力企業を解説」も参照。
■「自社開発」への転換で挑むホンダの新章
GM Cruiseのロボタクシー事業撤退という予期せぬ事態により、ホンダの自動運転戦略は大きな転換を余儀なくされた。しかし、その逆境を経て打ち出された「Honda 0 SALOON」と「ASIMO OS」は、パートナー依存から脱却し、自社技術で未来を切り拓くという同社の強い意志を象徴している。
2026年の北米投入を皮切りに、ホンダは世界初のレベル3量産車を実現した知見を活かし、市販車における自動運転の適用範囲をOTAで段階的に拡大していく方針だ。
トヨタがサービス車両のレベル4に、日産が他社との提携によるロボタクシーに活路を求めるなか、ホンダは「個人が所有し、自由に移動できる自動運転EV」という独自の価値を追求している。かつて世界を驚かせた二足歩行ロボット「ASIMO」の名を冠したOSが、車を単なる移動手段から高度な知能を持つ生活空間へと変容させるのか期待したい。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)