トヨタの自動運転e-Palette、アメリカ輸出「解禁」か

「手動制御装置なし」も可能に



出典:トヨタプレスリリース

米運輸省国家道路交通安全局(NHTSA)が、自動運転専用車両に対応した新たな安全基準案を公表した。ハンドルなどの手動制御装置を備えない自動運転車両も、連邦自動車安全基準(FMVSS)に適合しやすくなる改正案だ。

この新基準が施行されれば、新規格の自動運転車も特段の免除申請を受けることなく自己認証によって公道走行が可能になり、その先にある商用利用への道も拓ける。


トヨタのe-Paletteのような自動運転モビリティが自由に公道走行可能になるイメージだ。e-Paletteも米国に持ち込めば、商業化に向けた展望が大きく開けるのではないだろうか。

米国の保安基準の概要とともに、最新動向に迫る。

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■連邦自動車安全基準の改正案の概要

日本は型式認証制度、米国は自己認証制度を採用

連邦自動車安全基準(FMVSS)は、日本の道路運送車両法における保安基準に相当し、自動車が道路を安全に走行するため最低限クリアすべき技術基準を示している。

日本との相違点としては、型式認証制度と自己認証制度の違いが挙げられる。日本が採用する型式認証制度は、新規開発した車両について、生産・販売前にあらかじめ国の審査を受け、保安基準への適合性などにお墨付きをもらうことで、生産した一台一台の車両に関して新規検査時の現車提示を省略することができる制度だ。


一方、米国が採用する自己認証制度は、国や行政機関による事前承認を原則とせず、メーカー自身が安全性や基準適合性を保証して市場に投入する制度となる。メーカー自らが責任をもって保安基準への適合を宣言・保証する内容だ。

つまり、米国では自己責任のもと保安基準への適合性を保証し、車両の販売や公道走行を行うことができるのだ。

新規格の自動運転車は安全基準に規定されていない

米国でハンドルなどの手動制御装置を備えない自動運転専用車両でサービス展開するZooxは、かつてこの自己認証制度に基づいて自動運転車の公道実証に着手した。

しかし、基準への適合性についてNHTSAが疑義を示し、協議が長らく続いた。安全基準では、日本同様ハンドルやペダル、ワイパー(フロントガラス払拭・洗浄システム)、平面鏡といった安全装備の搭載が義務付けられているためだ。


ただ、こうした装備は、人間のドライバーの存在を前提としたものだ。ドライバーの存在を前提としない新規格の自動運転車両にとってはナンセンスであるため、Zooxとしては字面通りに従うわけにはいかず、代替策でしっかりと安全性を確保していることを主張していた。

適用除外制度を活用

ZooxとNHTSAの協議は、外国製車両を対象とした適用除外制度を流用する形で落としどころを見出した。米国に輸入される自動運転システム搭載車両は、一定の安全性を示すことでFMVSSの基準を満たさなくとも実証などの用途で導入できる制度があり、これを米国製車両に対しても適用する運用を2025年に開始した。

研究または実証を目的とした非商業的な用途に限定されるが、その第一号として、同年8月にZooxに対し免除措置が正式に発行された。

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適用除外制度は実証限定、商用化に壁

Zooxは胸を張って公道走行することが可能になり、めでたしめでたし……と言いたいところだが、話はまだ終わらない。

あくまで実証用途に限定されているため、本質的な意味での商業展開が不可能なのだ。Zooxはすでにラスベガスなどで無人タクシーサービスを提供しているが、法的にはサービス実証に相当し、商業展開・有料化することができない運用形態に留まっている。それゆえ、ZooxとNHTSAの協議は継続されているという。

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NHTSAが安全基準の大幅見直しへ

そこでNHTSAが打ち出したのが、自動車安全基準の抜本的改訂だ。既存の安全基準を現代の技術に適合するよう見直し、技術革新を妨げる不要な規制上の障壁を取り除きつつ、自動車の安全性を損なわないことを確保するための措置として、新規格の自動運転車を明確に区別したうえで、その性能要件や試験手順などをとりまとめた。

その主な内容は以下の通りだ。

  • 人間が操作することを前提としない車両については、手動または足で操作するブレーキ制御装置の設置義務を撤廃する。手動操作装置を備えた自動運転車については、既存の規則を引き続き適用する。
  • 対象となるすべての車両は、代替試験手順を通じて、同じ制動距離性能基準を満たさなければならない。
  • 今回のアップデートにより、自動運転車は指示に応じて物理的に停止できることが保証されるが、NHTSAは実世界の運転状況における自動運転車の安全性能要件を別途策定する。
  • NHTSAは、引き続き広範な欠陥執行権限を行使し、安全ではない自動運転システムの挙動を調査し、リコールを監督していく。

詳細は省くが、警告灯に関する新たな要件案などを含め、自動運転専用設計車両に求めるべき要件や性能基準、試験手順などに関する案を取りまとめた。

今後、パブリックコメントを経て最終規則が発行される見通しだ。自動車安全基準は州法よりも優先されるため、これまで自動運転車の導入に否定的だった州でも活路が開ける可能性がありそうだ。

NHTSA長官のジョナサン・モリソン氏は「アメリカが先頭に立つためには、規制の枠組みを根本的に見直す必要がある。NHTSAは革新的な設計に対する無意味な障壁を取り除き、重要な基本的安全要件を強化し、自動運転開発者に安全な性能に対する責任を負わせている。このアプローチは最終的に、交通事故を減らし、死亡事故を防ぎ、移動の利便性を向上させるだろう」と述べている。

余談だが、第2期トランプ政権下では、前述した適用除外制度をはじめ、連邦安全ガイドラインの草案作成や自動運転車性能基準の開発なども進められている。トランプ氏の意向が働いているのかどうかは不明だが、連邦としてしっかりと自動運転施策を前進させているようだ。

▼連邦自動車安全基準改定案(公式)
https://www.nhtsa.gov/press-releases/fmvss-updates-brake-pedal-requirements
https://public-inspection.federalregister.gov/2026-12981.pdf

■安全基準改訂の影響

新規格の海外製車両にも商機到来?

この改正により、自動運転専用に設計された車両による商用利用を妨げる障壁は格段に下がる。Zooxをはじめ、ロボタクシー「Cybercab」の量産化を進めるテスラにとっても追い風となりそうだ。

日本では、唯一トヨタがハンドルなどを備えない自動運転サービス専用車両「e-Palette」を開発している。便宜上、ハンドルなどを備えた車両も後に開発・販売しているが、元祖は自動運転専用設計だった。

こうした海外製車両も、米国へ輸入して商用サービスを展開する道が拓かれる可能性があるのではないか。これまでにも、旧Navya社のARMAが米国内に導入された実績があるが、多くは実証用途で、通年運行サービスも基本的には導入企業や自治体などから委託費用が支払われる形でサービスを展開していたに過ぎない。乗客から直接運賃を徴収する形態はないものと思われる。

安全基準の改正は、自国内の開発企業の取り組みを促進するだけでなく、海外企業の米国進出も促す結果となり得る。自動運転大国としての地位を、開発面だけでなく実装面でもリードしていくことに繋がる。

e-Paletteも、米国であれば、本来の姿でさまざまなサービスを展開できるのかもしれない。米国には、e-Paletteのような多目的サービス向けの自動運転車両はないと思われる。米国で新たな波を起こし、世界にe-PaletteをPRする絶好の機会になるのではないだろうか。

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■【まとめ】日本も改訂に向け動くのか

日本の保安基準も、ハンドルなどの装置を備えていない車両を想定しておらず、基準緩和や特例制度を用いる形で公道走行している状況だ。

遅かれ早かれ米国のように改訂しなければならない日は訪れる。米国に追随する形で改訂に向けた動きを本格化させるのか、また、国際基準策定に向けた動きを活発化させるのかなど、日本政府の動向にも注目したいところだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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