
トヨタが出資する米自動運転開発企業May Mobility(メイモビリティ)と、中国の配車大手CaoCao(ツァオツァオ)が、欧州を起点にロボタクシーの大規模商用化を進める戦略的提携を結んだ。2030年に100万台のロボタクシー展開を目指す。
CaoCaoが車両の保有と配車運営を担い、May MobilityがAutonomy-as-a-Service(自動運転をサービスとして提供する仕組み)で自動運転技術を供給する。最初の市場として欧州を選び、実証から段階的に商用展開へ進める方針だ。
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■トヨタ出資のMay Mobilityが中国CaoCaoと提携
米Google系などと並ぶ自動運転開発企業の一角を占めるMay Mobility(メイモビリティ)と、中国の配車大手CaoCao(ツァオツァオ)が、2026年6月24日に戦略的提携を発表した。欧州を起点に、ロボタクシーの大規模な商用化を共同で進める内容だ。
CaoCaoが車両の保有者であり運営者として、配車運営、フリート管理、車両の保守、大規模な商用運営を担う。一方のMay Mobilityは、Autonomy-as-a-Service(自動運転をサービスとして提供する仕組み)で自動運転技術を供給し、CaoCaoのフリートを支える。技術は米国側、運営は中国側という分業である。

両社はまず欧州を対象に共同で実現可能性の調査を行い、パイロット展開を進める。実証で検証を重ねたうえで、段階的に拡大展開へ移す段取りだ。調印は香港で開かれた2026 International Automotive Expoの場で行われ、CaoCaoのGong Xin最高経営責任者と、May MobilityのEdwin Olson最高経営責任者が出席した。
技術を持つ米国企業と、運営基盤を持つ中国企業が手を組む構図は、これまでのロボタクシー業界ではあまり見られなかった。自社で技術から運営まで垂直統合するのが主流だったなかで、機能を水平に分け合う米中連合が現れた点に、この提携の新しさがある。
技術は米国、運営は中国という分業は、垂直統合が主流のロボタクシー業界では異色だ。地政学的な緊張が続くなかで、機能ごとに最適な相手と組む水平分業が成立した意味は大きいと言える。
【参考】関連記事としては「ロボタクシーの配車アプリ一覧【自動運転・無人】アメリカ・中国・日本」も参照。
■トヨタ・NTT・Grabが支える米自動運転企業「May Mobility」
May Mobility(メイモビリティ)は、米ミシガン州アナーバーを拠点とする自動運転開発企業である。出資企業として、トヨタ、NTT、そして東南アジアの配車大手Grab(グラブ)が資本を入れている。
トヨタとNTTの関係は特に深い。2023年11月、NTTが主導しToyota Venturesも参加した1億500万ドルのシリーズD調達が完了し、累計調達額は約3億ドルに達した。このときNTTは、日本国内でMay Mobilityの自動運転技術を独占的に販売する権利も取得している。トヨタとは車両プラットフォームでの協業も進み、シエナやe-Paletteを使った日本国内の展開実績がある。
配車面では、Grabが2025年10月に出資を発表し、東南アジアへの展開を後押しする。LyftやUberとは出資ではなく配車プラットフォーム上での連携という形で組んでおり、Lyftとはアトランタでの配車統合を進めている。出資企業と配車提携先を使い使い分けながら、技術提供に軸足を置く戦略が見て取れる。
自動運転の中核技術は、Multi-Policy Decision Making(複数の運転方針を比較して最適な動きを選ぶ意思決定システム)と呼ばれる独自方式だ。2020ミリ秒ごとにリアルタイムのデータを取り込み、毎秒数千の場面を分析して最適な操作を選ぶ。事前に集めた地域固有のデータに頼り切らないため、新しい国や環境にも適応しやすいとされる。米国と日本で累計50万回を超える商用自動運転ライドを達成しており、この実績が今回の欧州展開の土台になる。
■Geely傘下のCaoCaoが描くロボタクシー戦略
CaoCao(ツァオツァオ)は、中国の自動車大手Geely Holding Group(吉利控股集団)傘下の配車サービス大手である。2015年5月に設立され、中国のシェアモビリティ市場を切り開いてきた。今回の提携で車両保有と運営を担うのは、この大規模な配車運営の実績があるからだ。
CaoCaoは2026年6月18日、香港で開かれた博覧会でRoboX戦略を発表した。これは配車プラットフォームから、AIを軸とした物理空間のモビリティ技術プラットフォームへ転換するという全社方針である。May Mobilityとの提携発表が6月24日であるのに対し、このRoboX戦略は6日前の発表であり、両者は別のタイミングの動きだ。
RoboX戦略のなかでCaoCaoは、2030年までに10万台のロボタクシーと10万台のロボバンを展開する「双十万計画」を掲げた。対象は米自動車技術会SAEが定める自動運転レベル4にあたる無人運転だ。さらに同社は、香港をこの戦略の海外展開の第一歩と位置づけ、香港でロボタクシー事業を始めることも明らかにしている。May Mobilityとの提携は、この海外展開をさらに前へ進めるものと言える。
May MobilityのOlson最高経営責任者は提携にあたり、CaoCaoが掲げる2030年に10万台のロボタクシーを展開する目標に触れ、その実現に協力できることへの期待を示した。
【参考】関連記事としては「中国、自動運転車の事故「全額メーカー負担」も参照。
■欧州市場を選んだ狙い
両社が最初の市場に欧州を選んだ理由は、走行環境の多様さにある。CaoCaoは、欧州が多様な実環境とロボタクシー商用化の高い潜在性を備えていると評価している。さまざまな道路条件で技術を検証できる場として、欧州を実証の起点に据えた形だ。
May Mobilityにとって、今回のCaoCaoとの提携は事業者ネットワークをさらに広げる一手でもある。Uber、Lyft、Grab、トヨタ、飾るCaoCaoと、複数の事業者から検証を積み重ねることで、特定の陣営に偏らない中立的な自動運転プロバイダーとしての立場を強めている。自社で運営まで囲い込む垂直統合型の各社とは異なる立ち位置だ。
一方で論点もある。2030年に10万台という目標は野心的で、その実現性には精査が必要だとの指摘も出ている。加えて、米国の技術企業と中国の運営企業が欧州で組むという構図は、データの扱いや規制、米中をまたぐ事業運営という点で、地政学的な不確実性とも無縁ではない。技術と運営の分業が、こうした論点をどう乗り越えるかが問われる。
【参考】関連記事としては「米国が自動運転で中国に負ける テスラ・Waymo・議員が議会で異例の「共同警告」」も参照。
■米中連合が示すロボタクシー市場の新しい競争軸
May MobilityとCaoCaoの提携が示すのは、ロボタクシー市場における競争軸の変化である。技術を持つ企業と運営基盤を持つ企業が機能ごとに組み合わさる水平分業型のモデルは、技術から運営までを一社で抱える垂直統合型とは異なる勝ち筋を描く。
自動運転タクシー(ロボタクシー)市場の競争は、もはや一国・一社の枠内では完結しない。米国の技術と中国の運営力が欧州で交わる今回の米中連合は、国境と企業の壁をまたいだ連携が当たり前になりつつある現実を映している。2030年に10万台という目標がどこまで現実になるかは、この分業がどれだけ機能するかにかかっている。













