自動運転中のテスラ、「減速せずに」シカに激突

ADAS「FSD」作動中にぶつかる



出典:X(https://x.com/TheSeekerOf42/status/1850750169169760686)

米EV(電気自動車)大手のテスラの運転支援システム「FSD」(Full Self-Driving)が正常に作動しない場合があるという可能性が出てきた。

あるユーザーがFSDを使用して走行していたところ、減速せずに鹿にぶつかるといった出来事があった。しかも、衝突後に停止もしなかったという。つまりFSDは鹿の存在を検知せず、何の指示も出していないということだ。


Full Self-Drivingは直訳すると「完全自動運転」になるものの、自動運転レベル2のADAS(先進運転支援システム)に過ぎない。しかしADASであるとしても、危険物を察知できないというのは、機能に問題があるとの議論も出てきそうだ。

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■鹿と衝突した状況の詳細

あるX(旧Twitter)のアカウントが投稿した動画では、クルマがスピードを落とさずに、道路に出てきた鹿に近づいて行っている。その後、鹿と衝突し、バンパーとフロントガラスがひび割れ、ボンネットがへこんだという。走行中はFSDが作動していた主張している。


投稿者は下記のようにコメントしている。


Hit the deer with my Tesla. FSD didn’t stopped, even after hitting the deer on full speed. Huge surprise after getting a dozen of false stops every day! Experiencing worst side of Tesla service now.(テスラで鹿にぶつかった。全速力で鹿にぶつかってもFSDは止まらなかった。毎日何十回も誤停止していたのに!今、テスラのサービスの最悪の側面を経験しています)

Note: while the deer is slightly visible in the video for a second before impact, to the human eye, it just looked like another uneven patch of road.(注:動画では衝突の一瞬前に鹿がかすかに見えるが、人間の目にはただの道路の凸凹にしか見えなかった)

ただしこの投稿者は、テスラのCEO(最高経営責任者)であるイーロン・マスク氏に「極右的な」ソーシャルメディアサイトの購読料を支払っており、FSDは素晴らしい働きをしており、道路に出てきた鹿は「エッジケース(例外的な事例)」だと主張している。

■今回の衝突、何が問題?

FSDは自動運転機能ではないため、走行中にドライバーは常に運転を監視し、ハンドルに手を添えていなければならない。

今回の衝突トラブルでは、夜間の走行であったため鹿を正確に検知できなかった可能性がある。そして、より問題なのは、衝突後にクルマを減速させたり停車させたりといったことをしなかったということかもしれない。

鹿との衝撃はかなりのものであり、そのまま走行を続けるというのはシステムに欠陥があると言わざるを得ない、という指摘も出そうだ。

車同士の衝突でも、同様のケースがあってはならない。事故後にそのまま逃走することにもなってしまうかもしれない。ただし、FSDは責任の主体は人間にあるADASのため、基本的には人間が運転に責任を持たないといけない。

テスラの自動運転技術・Autopilot/FSDを徹底分析(2024年最新版)

■FSDの安全性について調査開始

かねてから、FSDの安全性には疑問の声が出ていた。このシステムの欠陥により死亡事故が起きた可能性が高いと予測されているという。この問題を重く見た米運輸省道路交通安全局(NHTSA)は2024年10月、FSDの調査を開始したことを発表した。

米国の道路を走る約240万台のテスラ車がその対象となり、2016〜2024年に生産された「モデルS」と「モデルX」、2017〜2024年に生産された「モデル3」、2020〜2024年に生産された「モデルY」、そして2023〜2024年に生産された「サイバートラック」が含まれるという。

NHTSAによる調査は、FSDが霧や太陽の光などにより道路上の視界が悪くなる状況においても、安全に機能するかを評価するといった内容になる。FSDを使用していたテスラのドライバーが歩行者をはねて死亡させた事件や、道路の見通しが悪くなった状況下でFSDが関わったとされる衝突事故を受けてのものになる。

米国の連邦自動車安全規制当局は、テスラのオートパイロットやFSDのような自動車メーカーが開発したADASを使用中の衝突事故について追跡調査を行っている。2024年10月1日時点で、NHTSAは衝突から30秒以内にテスラのADASが作動した事故を1,399件追跡しており、そのうち31件で死亡事故が発生している。

■波に乗っているテスラだが…

10月10日にロボットタクシーの詳細を発表し、自動運転車の販売へ向けての取り組みが本格化していることを感じさせたテスラだが、安全性への懸念も高くなりつつある。NHTSAの調査結果次第では、大規模リコールなどもあり得るかもしれない。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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