中国の空港でドライバーレスの自動運転シャトルサービスが始まっている。IT大手のBaidu(百度)が、湖北省武漢市の武漢天河国際空港で展開している。中国で初の空港と都市の間を結ぶ無人移動サービスだ。
■2023年9月までに一般向けにも
百度が展開しているのは、武漢の空港と市街地の間を走行するドライバーレスの自動運転シャトルサービスだ。都市部の道路や高速道路も走行ルートに含まれており、その両方を走行する自動運転サービスは中国初になるという。このサービスは現在一部のユーザー向けに提供されており、2023年9月までに一般向けにも提供される予定だ。
なお運営は、百度傘下の自動運転タクシー配車サービス「蘿蔔快跑(ルオボークワイパオ)」により行われている形のようだ。百度は同様のサービスを他のエリアにも拡大していく予定としている。
■百度の自動運転サービスの歩み
Baiduは、湖南省長沙市で一般客を対象とした自動運転タクシーサービス「Apollo Go Robotaxi」を2020年4月に開始した。この段階ではセーフティドライバー同乗のサービスとなり、同年8月に河北省滄州、同年9月に北京市にエリアを拡大している。
その後、2020年9月に長沙でドライバーレス走行のライセンスを取得した、同年12月には北京市でドライバーレス走行のライセンスを取得したことを発表、翌年にサービスを開始した。
2021年9月には上海で自動運転タクシーサービスを開始したことを発表した。また同年11月に北京の一般道路における自動運転サービスの商用運行の承認を受けたと発表、市内の指定エリアで有料サービスを提供できるようになった。
2022年2月には深センでも自動運転タクシーサービスを開始した。北京、上海、広州、重慶、長沙、滄州に続く7番目の都市となった。同年4月に、運転席無人による自動運転サービスの許可を北京市から取得したと発表した。完全ドライバーレスではなく、乗客を実際に乗せたサービスにおいて運転席を無人化し、オペレーターが助手席に同乗する形で運行するという許可になる。
また同年8月には重慶と武漢で、完全ドライバーレスの自動運転タクシーの商用運行許可を取得、12月には北京で完全ドライバーレスの実証許可を取得したのち、2023年4月には商用許可も取得した。それに続き、2023年6月に深センでも完全ドライバーレスの商用サービスの許可を取得している。完全ドライバーレスのサービス許可は重慶、武漢、北京に次ぐ4都市目となった。
■自動運転実証は日本の空港でも
日本にも空港を舞台にした自動運転移動サービスはある。
羽田空港に隣接する大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITY(HICity)」と羽田空港第3ターミナル間の公道で、2021〜2023年にかけて自動運転バスの実証実験が5回行われた。実証を行ったのは、鹿島建設とソフトバンク子会社のBOLDLYだ。
また2020年9月からHICityの敷地内で定期運行を行っており、2023年8月30日時点での累計乗車人数は62,898人、累計走行便数は12,155便にも上る。いずれも仏Navya製の自動運転シャトル「NAVYA ARMA」が使用されている。
なお、人の移動ではないが、貨物搬送を想定した自動運転トーイングトラクターの実証はJAL(日本航空)やANA(全日空)がすでに着手している。
そのほかパーソナルモビリティを手掛けるWHILLが提供する、次世代電動車いすを用いた空港ターミナル内の自動運転移動サービスが2023年4月から成田空港で正式導入されたことも、注目を集めた。
【参考】関連記事としては「自動運転バス、累計88日・599便無事故!羽田空港で運行中」も参照。
自動運転バス、累計88日・599便無事故!羽田空港で運行中 https://t.co/9C3fAaiYUS @jidountenlab #自動運転 #無事故
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) March 6, 2023
■百度はトラブルなしで展開できるか
武漢天河国際空港から市街地までは約26キロ、車で40分ほどかかる。この長距離を完全無人の自動運転シャトルが走行することになる。
アメリカでは特定の州でWaymoやCruiseのドライバーレスの自動運転タクシーがすでに実用化されているが、急停止し交通を妨げるなどのトラブルが頻発している。今回のBaiduの新たな取り組みはどうか。事業の展開状況に注目していきたい。
【参考】関連記事としては「百度(Baidu)の自動運転戦略(2023年最新版)」も参照。