自動運転、トヨタ出資のPony.aiが広州で初「完全無人」許可

タクシーライセンスも取得済み



出典:Pony.aiプレスリリース

トヨタが出資する中国の自動運転スタートアップPony.ai(小馬智行)は2023年5月8日までに、中国の広州市で「完全無人」による自動運転タクシーの運行許可を取得したことを発表した。

広州でこの許可を取得したのは、同社が初となる。Pony.aiは、同年3月に北京でも完全無人の自動運転タクシーの走行許可を取得している。


■セーフティドライバー無しでOK

今回Pony.aiが取得したライセンスは、広州市南沙区の約800平方キロの範囲で、セーフティドライバー(保安要員)無しで自動運転タクシーに乗客を乗せることができるものだ。広州市の南部に位置する南沙区は、2012年に国家レベルの発展新区として指定され、住宅地やビジネス街、駅、公園などがある街となっている。

まずは17台の自動運転車が配備される予定で、ユーザーは専用アプリ「PonyPilot+」で自動運転タクシーを呼び、右側後部ドアにあるQRコードを読み取ることで乗車できるようになっている。

出典:Pony.aiプレスリリース
■タクシーライセンスも取得済み

Pony.aiは2022年4月に、自動運転開発企業として中国で初めてタクシーライセンスを取得した。南沙区で100台もの自動運転タクシーを、従来のタクシーと同様の形で運用できるようにするという内容であった。ただしこの時点では、セーフティドライバーが同乗する必要があった。

北京では2022年12月に車外遠隔操作の実証実験許可を取得し、ドライバーレスの完全自動運転タクシー10台を用いて走行試験を行った。その後、2023年3月に完全無人の自動運転タクシー走行許可を取得した。これにより、北京の特定エリア60平方キロで、自動運転タクシーサービス営業を行うことができるようになった。



アメリカでは一悶着あるが…

また米国においては、2017年に米カリフォルニア州車両管理局(DMV)からセーフティドライバーありの公道走行ライセンスを取得し、公道実証に着手した。2021年5月には、カリフォルニア州で8社目となるドライバーレスによる走行も許可された。

しかしDMVは2021年12月に、Pony.aiのドライバーレス走行のライセンスを停止した。同年10月にフリーモントで走行中の自動運転車が左車線変更操作を行った際、中央分離帯と交通標識に衝突する事故を起こしたことを受けてのものだ。また、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、同社の自動運転ソフトウェアをリコールする意向を固め、2022年3月までに同社がこれに同意したことを発表している。自動運転ソフトウェアのリコールは全米初であったようだ。

2022年5月には、DMVがPony.aiのセーフティドライバー付きの自動運転走行ライセンスを停止したことが各種メディアで報じられた。報道によると、ライセンス更新に向けPony.aiの報告者を精査した際、運転記録に多数の違反が見つかり、許可を停止したという。

ただし、DMVの公式サイトを見てみると、「Permit Holders(Testing with a Driver)」=セーフティドライバーありの走行許可=にPony.aiの名前があるため、どのタイミングかは不明だがライセンスは復活しているようだ。しかし、「Permit Holders(Driverless Testing)」=セーフティドライバー無しの走行許可=には名前が無い。

■トヨタも注目するPony.ai

2016年設立のPony.aiは、米カリフォルニア州でGoogleとBaidu(百度)出身の2人が立ち上げた中国発の自動運転開発企業だ。

2019年8月にトヨタとの提携を発表し、2020年2月にはトヨタから4億ドル(約460億円:当時のレート)の出資を受けている。2022年1月には、トヨタが自動運転タクシー向けに開発中の車両「シエナAutono-MaaS」に、Pony.aiが開発した第6世代の自動運転システムを搭載し、2023年前半にも中国で商用展開する予定であることを明らかにしている。

資金調達なども順調で、IPOも間近に見えたPony.aiだが、2022年11月には複数部門を縮小し、米研究センターの幹部も離職するという報道が中国メディアによりされている。また2023年3月には、CFO(最高財務責任者)のLawrence Steyn氏が辞任したというニュースもあった。

■Baiduのライバル的存在

米国における自動運転タクシー開発の進捗は、あまり芳しくない状況かもしれないが、中国では先陣を切って許可を取り、実用化に向け進んでいるようだ。

中国の自動運転タクシー開発では、IT大手のBaidu(百度)も低コスト車両を開発しており、この2社はお互いライバル的存在と言えそうだ。今後の展開も追っていきたい。

▼Pony.ai公式サイト
https://pony.ai/

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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