自動運転専用レーンをトヨタが計画!静岡で「日本初」濃厚

Woven City、未来志向の都市を設計



出典:トヨタ公式YouTube動画

日本初の自動運転専用レーンが静岡県内に誕生するかもしれない。トヨタが裾野市に建設中の実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」だ。私有地ではあるものの、未来志向の都市を一から設計して数々の先進的な実証を行っていく方針だ。

Woven Cityでは当然自動運転関連の実証も数多く行われることになるが、構想では自動運転専用道路の設置が計画されている。早ければ2024年にも第一期の取り組みが始まる見込みだ。


そこで今回は、Woven Cityの概要とともに自動運転専用道路に関する取り組みに迫っていく。

■Woven Cityの概要
Woven Cityは未来に向けた実証の場
トヨタが発表したWoven City計画=出典:トヨタプレスリリース

Woven Cityは、裾野市内のトヨタ自動車東日本東富士工場跡地を活用しトヨタが一から建設を進めている新たな「まち」で、賛同企業の参画のもと、モビリティをベースに未来の生活構造基盤の構築に向けたさまざまな取り組みにチャレンジしていく実証都市だ。

言い換えれば、自動運転などの各種モビリティをベースに民間主導で未来のスマートシティを模索していく実験の場だ。まちの規模は、最終的に70万8,000平方メートルに及ぶ。

2021年2月に造成工事を開始しており、2022年11月には建築工事も始まるという。2024~2025年の第1期オープンを目指し準備を進めている段階だ。


【参考】Woven Cityについては「Woven City、第1期は2024年開業か 初期住民は360人」も参照。

自動運転専用道をはじめ3種の道で街区を形成

予定では、Woven City内に自動運転モビリティ用の道と歩行者用の道、歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが共存する道の3種類の道路で街区を形成していく。また、地下にも物流ネットワーク用途に特化した第4の経路を設置する。

おそらく私有地における私道扱いになるものと思われるが、この自動運転モビリティ用の道が早ければ2024年にも供用開始されるのだ。規制が緩い私有地では、一般的な公道に比べチャレンジの幅が大きく広がる。

この専用道を有効活用すべく、トヨタのモビリティサービス専用自動運転車「e-Palette(イー・パレット)」をはじめ、多くの開発企業がWoven Cityに参画し、さまざまな実証を行うものと思われる。


e-Paletteはシャトルバスのような移動サービスのほか、ホテルやリテールショップなどさまざまな用途への活用が期待される。自動運転モビリティの可能性を追求する場として、Woven Cityはうってつけの都市空間となりそうだ。

■自動運転専用道路に関する取り組み
初期の自動運転実装に専用道路は有効

世界各地で開発が進められている自動運転車の多くは、車両単体で自動運転を実現するわけではない。安全性を高めるため、リアルタイムで更新されるダイナミックマップや路車間通信(V2I)、車車間通信(V2V)などあらゆる技術を駆使しているのだ。

インフラそのものを自動運転対応にするのもその一つだ。特に自動運転専用道や専用レーンは、自動運転技術の社会実装初期において非常に有効な手段となる。歩行者や一般車両を気にすることなく走行できる環境は、発展途上の技術を実用実証するのにもってこいだ。

東京都やNEXCO東日本などが設置を検討
出典:東京都

公道においても、自動運転専用道や専用レーンを整備する構想はすでに持ち上がっている。

東京都は自動運転社会を見据えた都市づくりの中で、正確なレーンキープ機能を備え高密度走行が可能な自動運転の特性から将来的に車道空間の縮小が可能とし、道路空間を再配分して自動運転車専用レーンを設置するイメージを描いている。

スマート信号機や電磁誘導線など、自動運転車向けのインフラを整備する先行整備も検討しているようだ。

【参考】東京都の取り組みについては「東京都、「自動運転レーン」の先行整備を検討」も参照。

一方、高速道路を管理するNEXCO東日本は、自動運転社会の実現を加速させる次世代高速道路の目指す姿として、自動運転車両専用レーンや専用 ICの設置などについて検討を進めている。

自動運転車や物流車両の隊列走行を円滑なものとするため、片側多車線の道路において1 車線を専用レーンとして区分する案だ。まず自己位置推定の基準点となる設備を整備し、実証フィールドとなるモデル区間の整備方針を2025年度までに策定し、自動運転車の普及状況や技術動向を踏まえながら2026年度以降に整備着手する計画だ。

BRTや道の駅においても専用化が進む?

廃線跡地を活用したBRT(バス高速輸送システム)路線も有力だ。JR各社などが取り組んでおり、気仙沼線BRTで2018年度から実証を積み重ねてきたJR東日本は、2022年12月に一部区間で自動運転バスを実用する方針だ。近い将来、BRTが自動運転専用道路になる日が訪れるかもしれない。

このほか、自動運転サービス導入に向け全国各地の道の駅を拠点に進められている実証でも、車道の一部を期間限定で一般車両が進入できない専用区間とし、自動運転レベル3で走行する取り組みなどが行われている。

海外では、米ミシガン州で全長64キロに及ぶ自動運転専用レーンの建設構想が進められている。アルファベット(グーグル)傘下のSidewalk LabsからスピンオフしたCavnueが計画に関わっているようだ。

中国では、スマートシティ実現に向け大規模開発が行われている雄安新区において自動運転専用道路の整備が進められている。また、同区と北京市を結ぶ全長100キロ弱の高速道路においても、自動運転専用レーン設置に向けた工事が進められているという。

【参考】道の駅における取り組みについては「自動運転と道の駅(2022年最新版)」も参照。

■【まとめ】道路の在り方も変わっていく

自動運転技術の本格的な社会実装はまだまだ先と思われているかもしれないが、すでに国内各地でさまざまな実証が進められている。2023年度までに施行される改正道路交通法をきっかけに、各取り組みはいっそう加速していくことが予想される。

自動運転専用道路・レーンの設置には短期目的のみならず中長期的視野が必要となるが、自動運転の実用化とともに道路の在り方も大きく変わっていく時期が到来しているのだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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