Woven City、第1期は2024年開業か 初期住民は360人

実証パートナーとしてENEOSが参画



トヨタが発表したWoven City計画=出典:トヨタプレスリリース

トヨタの実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」が、早ければ2024年にも第1期オープンを迎えるようだ。公式サイトに掲載された情報から明らかになった。

着々と建設が進み、実証パートナーとの取り組みも具体化し始めたWoven City。事業概要をおさらいしつつ、これまでの進捗状況を見ていこう。


■Woven Cityの概要
実証都市「Woven City」

Woven City構想は、世界最大の技術見本市「CES 2020」のトヨタプレスカンファレンスにおいて、豊田章男社長自らが発表した一大プロジェクトだ。

2020年末に閉鎖したトヨタ自動車東日本の東富士工場の跡地(静岡県裾野市)を再開発し、一から新たな都市・まちを構築している。構築の過程を含め、新都市ではパートナー企業とともにモビリティやロジスティクス、IoTなどさまざまな領域の先端技術を検証していく。新たな技術やサービスの実証・導入に特化した都市だ。

都市には、関係者や実証対象者などが実際に住む生活空間も用意し、リアリティあふれた研究・実証環境を提供する。

開発地は175エーカー(約70.8万平方メートル)で、東京ドーム15個分に相当する。2021年2月に着工し、その時々の研究に合わせて都市そのものの在り方を変えていく終わりのないまちづくりを進めていく予定だ。


2024~2025年に第1期オープン目指す

これまでに判明した情報によると、自動運転モビリティ用の道と歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが共存するプロムナード、歩道がある縦長の公園のような道の3種類の道路が3×3の街のブロックを形成する。また、第4の道としてモノを自動配送するネットワークを地下に構築し、地上の建物をつなげる。

都市には、トヨタの従業員やプロジェクト関係者をはじめ、まずは2,000人程度の住民が暮らすことを想定しているという。第1段階としては360人程度を予定しているようだ。

都市設計は、デンマーク出身の建築家でビャルケ・インゲルス・グループ創業者のビャルケ・インゲルス氏が担う。ニューヨークの第2ワールドトレードセンターやグーグルの新社屋などを担当した実績を誇る著名な建築家だ。

公式サイトによると、2024~2025年の第1期オープンを目指し準備を進めているという。早ければ2024年にも360人規模の都市が構築され、実証を本格化していくことになる。


12の研究領域を設定

研究領域は、モビリティ・トランスポーテーション、エネルギー、物流、農業・食品、IoT(データ・ICTインフラ)、ヘルスケア、教育、エンターテインメント・小売り・アーティスト、金融・決済、セーフティ・セキュリティ、スマートホーム、住宅・オフィスの12領域を設定している。

トヨタは、モビリティを日常生活における12の領域と組み合わせ、従来の「モビリティ=クルマや移動手段」という概念を超え、モビリティの可能性を広げていく構えだ。

ウーブン・プラネットがWoven Cityをけん引

Woven City構想とほぼ時を同じくして、トヨタは最先端技術の研究を担うトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)の組織改変を発表した。事業のさらなる拡大に向け、持株会社ウーブン・プラネット・ホールディングスと事業を担うウーブン・コア、ウーブン・アルファ、コーポレート・ベンチャー・キャピタルのウーブン・キャピタルの新体制へ移行したのだ。

このうち、ウーブン・アルファがWoven Cityをはじめ、車両開発に向けたプラットフォーム「Arene(アリーン)」や、自動地図生成プラットフォーム「AMP(Automated Mapping Platform)」といった新領域に対する事業拡大の機会探索や革新的プロジェクトの立ち上げなどを担うこととしている。

TRI-ADを引き継いだウーブン・プラネットの最先端技術をWoven Cityで実証し、社会実装を推進していくとともに、Woven Cityで次々と巻き起こるだろうイノベーションの波をサービス・ビジネスに昇華させていく事業展開に期待が寄せられるところだ。

ENEOSが水素活用に向け協業
Woven City近隣に建設する水素ステーションのイメージ=出典:Woven Planetプレスリリース

Woven Cityで実証を進めるパートナー企業も、徐々に姿を現し始めている。1社目に名乗りを上げたのはENEOSだ。水素エネルギーの利活用に向けた具体的な検討を開始しており、2022年3月に以下の点で共同開発や検討を進めていくことに合意している。

  • ①Woven City近隣での水素ステーションの建設・運営
  • ②上記水素ステーションに設置する水電解装置で再生可能エネルギー由来の水素(グリーン水素)を製造し、Woven Cityに供給する。トヨタは定置式の燃料電池発電機(FC発電機)を設置し、グリーン水素を使用
  • ③Woven Cityや近隣における物流車両のFC化の推進と、FCEVを中心とした水素需要の原単位の検証、その需給管理システムを構築
  • ④Woven Cityの敷地内に設置予定の実証拠点における水素供給に関する先端技術研究

Woven City隣接地への水素ステーションの建設や水電解装置の設置、パイプラインでWoven Cityに供給するシステムなどがすでに決定しているという。

また、ウーブン・プラネット・ホールディングスは2022年6月、ポータブル水素カートリッジのプロトタイプを開発したと発表した。手軽に持ち運び可能で、水素エネルギーを幅広い用途で使用できるという。Woven Cityをはじめさまざまな場所で実証を重ね、実用化に向けた検討を進めていく方針だ。

Woven Cityを舞台に、水素エネルギーの利活用が新たなフェーズに突入する可能性がありそうだ。

日清食品もWell-Beingの実現に向け検討

2022年4月には、日清食品と食を通じたWell-Beingの実現に向けた実証について検討を進めていくことも発表されている。完全栄養食メニューの提供を通じた住民の食の選択肢拡充と健康増進に関する共同実証と、最適な完全栄養食メニューの提供に向けたデータ連携について検討を進めていく。

従来のモビリティの概念とは結びつかない領域だが、こうした領域についても検証を可能とするのがWoven Cityなのだろう。

■【まとめ】第1期オープンに向け今後の動向に要注目

トヨタのMaaS専用自動運転車「e-Palette」の導入・実証などトヨタ自身の取り組みはもちろんのこと、今後どのようなパートナー企業が参画し、どのような事業検証を進めていくのか興味は尽きない。

まずは2024~2025年の第1期オープン時、Woven Cityがどのような姿をお披露目するのか。また、それまでに新たな事業展開が公表されるのか。引き続き今後の動向に要注目だ。

【参考】関連記事としては「トヨタの自動運転戦略(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事