ソニー、3年で1兆円を自動運転向け画像処理センサー開発などに投資

2021年に営業利益最大8080億円に



ソニー株式会社(本社:東京都港区/代表執行役社長兼CEO:吉田憲一郎)は2018年5月22日、2018~2020年度の中期経営方針を発表した。車載センシングなどの新しいアプリケーションを育てていく方針を明らかにし、自動運転分野における画像処理センサーのシェア拡大を目指す構えだ。


3年で1兆円を画像処理センサー開発などの設備投資に充てる方針とみられる。中期経営計画の最終年度となる2021年3月期の営業利益については、目標を金融部門を除いて6380億〜8080億円と据えている。

中期経営方針では、同社の核の一つである半導体事業において、CMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサーをIoTやAI(人工知能)、自動運転など今後発展が期待される領域におけるキーデバイスと位置付け、イメージングだけではなくセンシングにおいても「グローバルナンバーワン」を目指すとしている。スマートフォン向けのセンシングアプリケーションから事業を展開し、車載センシングなどの新しいアプリケーションを育てていきたい考えだ。

【参考】ソニーが発表した中期経営方針については「ニュースリリース」を参照。

2014年から車載向けイメージセンサー開発に注力

ソニーは2014年に車載向けイメージセンサーの商品化を発表して以降、車載向けをイメージセンサービジネスにおける注力領域の一つと位置付けており、2015年10月にはTime of Flight(ToF)方式距離画像センサー技術を有するベルギーのSoftkinetic Systems S.A.(ソフトキネティックシステムズ社)を買収した。


【参考】ToF方式は、光源から出された光が対象物で反射し,センサーに届くまでの光の飛行時間(遅れ時間)を検出することで、対象物までの距離が得られる距離測定の方式の一つ。ToF方式距離画像センサーは、ToF方式で測距する画素をセンサー上に二次元で配列し、とらえた画像から対象物までの距離イメージを得ることができる。

2017年4月には、LED(発光ダイオード)フリッカーの抑制と高画質なHDR(ハイダイナミックレンジ)撮影を同時に実現する車載カメラ向け高感度CMOSイメージセンサーを業界で初めて商品化した。同年10月には、先進運転支援システム(ADAS)用途の前方センシングカメラ向けに、業界最高解像度となるCMOSイメージセンサーも商品化している。

1742万画素の業界最高解像度を持つ車載カメラ向けイメージセンサーとして2017年10月に発表された「IMX324」。価格は1万円(税抜)。上記画像は遠方における比較サンプル画像=ソニー社プレスリリース

【参考】2017年10月に商品化を発表したイメージセンサーは、米Intel(インテル)社傘下のモービルアイ社(本社:イスラエル)が開発中の自動運転技術向けイメージプロセッサー「EyeQ®4」「EyeQ®5」と接続可能になることも明らかになっている。モービルアイ社については「米インテル、自動運転技術で800万台分の巨大契約獲得 欧州メーカーに提供へ|自動運転ラボ 」も参照。

2018年1月にはトヨタ日産などとの協業発表

2018年1月に米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市といわれるCES2018では、自動車の周囲360度の状況を検知し、早い段階から危険回避行動を支援することで車の周囲により安全性を高めた領域を作り出すという同社が目指す安全性能のビジョン「Safety Cocoon(セーフティコクーン)」を紹介したほか、トヨタや日産、デンソー、ボッシュなどとパートナーとして協業することを発表している。


シェア拡大に向け、イメージセンサーを中心にビューイングとセンシングの領域において「車の眼」を進化させ、より高い安全性能を早期に実現することにより、自動運転社会の進展に貢献できるよう開発を推進していく方針だ。

自動運転において目の役割を担うセンサーは非常に重要で、荒天などの環境下でも対象の色や形、動き、距離などを正確に計測し分析する能力が必要とされる。カメラやミリ波レーダーLiDARなどのセンサー開発は世界的に進められており、自動車メーカーやサプライヤー、電機メーカー、IT系、新興企業らが垣根を超えたパートナーシップを結んだり買収合戦を繰り広げるなど競争が激化している。


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