トヨタ「ウーブン」、新体制3社の決算解説!自動運転技術やWoven Cityに注力

貸借対照表や損益計算書の中身は?



トヨタ子会社のウーブン・プラネット・グループの決算が2021年7月1日付の官報に掲載された。事業拡大に向け前身のTRI-ADを発展・進化させる形で誕生した同グループは、どのような業績をたたき出したのか。

グループ各社の決算概要とともに、近々の取り組みなど事業概要について解説していく。







■ウーブン・プラネット・グループの概要

トヨタは2020年7月、先端分野の研究開発を手掛けるTRI-ADの事業拡大・発展に向け、同社を持株会社ウーブン・プラネット・ホールディングスと事業会社となるウーブン・コア、ウーブン・アルファの新体制に移行することを発表した。

ウーブン・コアは自動運転技術の開発や実装、市場導入を担い、ウーブン・アルファはWoven City(ウーブン・シティ)やArene(アリーン)、Automated Mapping Platform(AMP)など既存の事業領域を超えた価値を創造する事業機会を探索し、革新的なプロジェクトの立ち上げを担う。

2020年9月には、新たに米国を拠点としたグローバル投資ファンド「ウーブン・キャピタル」の設立も発表している。

事業は2021年1月に本格着手しており、2021年7月時点のグループ社員数は860人となっている。自動運転技術やWoven City関連、サイバーセキュリティ関連など、専門知識を有するエンジニアの募集はまだまだ継続中だ。

■ウーブン・プラネット・ホールディングス
決算概要は?

決算公告によると、ウーブン・プラネット・ホールディングスの資産は386億円で、株主が出資した株主資本は352億円、利益剰余金はマイナス6億8,000万円を計上している。

売上高は34億円を計上しているが、21億円超の販売費・一般管理費の影響か、事業の収益力を表す営業利益はマイナス6億3,000万円となっている。当期純損失は6億8,000万円となった。

出典:官報

貸借対照表の要旨(2021年3月31日現在)
▼資産の部(単位:千円)
流動資産 20,153,324
固定資産 18,470,429
資産合計 38,623,753
▼負債及び純資産の部(単位:千円)
流動負債 3,271,585
(うち賞与引当金 107,848)
固定負債 155,953
(うち退職給付引当金 6,091)
株主資本 35,196,214
資本金 17,962,500
資本剰余金 17,912,500
資本準備金 17,912,500
利益剰余金 △678,785
その他利益剰余金 △678,785
負債・純資産合計 38,623,753

損益計算書の要旨(2020年8月27日~2021年3月31日)(単位:千円)
売上高 3,420,017
売上原価 1,932,350
売上総利益 1,487,666
販売費及び一般管理費 2,122,088
営業損失 632,421
営業外収益 14,473
営業外費用 57,332
経常損失 677,281
税引前当期純損失 677,281
法人税等 1,504
当期純損失 678,785

事業概要は?

ウーブン・プラネット・ホールディングスは、グループ全体に対する戦略的意思決定やパートナーとの協業拡大、新事業機会の創出、事業会社に対するシェアサービスの提供などを手掛けている。

TRI-ADを率いてきたジェームス・カフナー氏がCEO(最高経営責任者)、トヨタで自動運転技術をはじめ先進安全技術領域の開発責任者を担当する鯉渕健氏がCTO(最高技術責任者)をそれぞれ務める盤石の体制だ。また、TRI-AD創業メンバーの1人で、豊田章男社長の長男・豊田大輔氏も引き続きリーダーとして在籍している点も注目だ。

ホールディングスとしては、2021年4月に米配車サービス大手Lyftの自動運転開発部門「Level 5」の買収に合意したことを発表している。買収金額は約5億5,000万ドル(約600億円)。

両社合わせ1,200人の専門知識を集結した研究開発体制の強化をはじめ、センシングやコンピューティングといった自動運転システム開発に必要な戦略的能力の強化、本社を構える東京に加え、米カリフォルニア州パロ・アルトや英ロンドンへの開発拠点拡大といったグローバル展開を図っていく。

また、Lyftのシステムと車両データを活用し、ウーブン・プラネットが開発する自動運転技術の安全性と商用化を加速させる協業にも合意している。

【参考】Lyftの自動運転部門買収については「超優秀エンジニア1,200人で勝つ!トヨタ、Lyftの自動運転部門を買収」も参照。

2021年5月には、Woven CityにおいてトヨタとENEOSが水素エネルギーの利活用に向け具体的検討を進めることに基本合意したと発表している。公表された外部企業によるWoven Cityの実証案件としては第1号だ。

両社は、ウーブン・プラネット・ホールディングスとともに水素を「つくる」「運ぶ」「使う」という一連のサプライチェーンに関する実証を行う。具体的には以下の4項目について検討を進めていく。

  • Woven City近隣での水素ステーションの建設・運営
  • 水素ステーションに設置した水電解装置でグリーン水素を製造し、Woven Cityに供給するとともに、トヨタが定置式FC発電機をWoven City内に設置し、グリーン水素を使用する
  • Woven Cityや近隣における物流車両のFC化の推進とFC車両を中心とした水素需要の原単位の検証及び需給管理システムの構築
  • Woven City敷地内に設置予定の実証拠点における水素供給に関する先端技術研究

トヨタが進める燃料電池自動車(FCV)の開発・普及においても、この実証が大きな進展につながる可能性があり、要注目だ。

■ウーブン・アルファの決算と事業概要
決算概要は?

ウーブン・アルファの資産合計額は81億円で、当期純損失として7億5,000万円を計上している。研究開発に向けた先行投資の影響などと思われる。

出典:官報

貸借対照表の要旨(2021年3月31日現在)
▼資産の部(単位:千円)
流動資産 6,496,662
固定資産 1,629,145
資産合計 8,125,808
▼負債及び純資産の部(単位:千円)
流動負債 8,749,787
(うち賞与引当金 447,622)
固定負債 26,410
(うち退職給付引当金 9,059)
株主資本 △650,389
資本金 25,000
資本剰余金 75,000
資本準備金 75,000
利益剰余金 △750,389
その他資本剰余金 △750,389
(うち当期純損失 △750,389)
負債・純資産合計 8,125,808

事業概要は?

ウーブン・アルファは、Woven CityをはじめAreneや自動地図生成プラットフォーム「AMP」といったオープンソフトウェアプラットフォームなど、新領域に対する事業拡大の機会を探索し、革新的なプロジェクトを立ち上げ推進する役割を担っている。

同社は2021年6月、いすゞと日野とAMP活用に向けた検討を開始すると発表した。具体的には、AMPの小型トラック領域への活用などを検討し、高精度地図を用いた自動運転や先進運転支援技術による安全な物流の実現を目指すとしている。

また同月、三菱ふそうトラック・バスともAMPを用いた共同研究を開始することを発表している。両社は共同研究において10以上の実証項目の検討を進めており、第1弾として、AMPの高精度地図を三菱ふそうが開発するカーブ進入時速度超過警報装置(ECSW)に実装し、同装置を搭載した大型トラック「スーパーグレート」を走行させる実証実験を行う予定としている。

AMP関連では、高精度3次元地図の整備を進めるダイナミックマップ基盤とも2020年4月から共同で実証実験を進めており、AMP活用のもと、普及モデルの車両センサーで収集した画像などのデータから道路上の変化した箇所を検出することで、DMPのHDマップの効率的な更新の可能性を探っている。

この技術が確立されれば、費用対効果の高いHDマップの整備・維持管理が可能になる。一般道へ整備路線の拡大が進むHDマップの領域において、AMPの存在感が一気に高まる可能性を秘めており、実証の行方に要注目だ。

■ウーブン・コアの決算と事業概要
決算概要は?

ウーブン・コアの資産合計額は179億円で、当期純利益16億円を計上した。3社の中で唯一黒字となっている。

出典:官報

貸借対照表の要旨(2021年3月31日現在)
▼資産の部(単位:千円)
流動資産 6,400,759
固定資産 11,479,723
資産合計 17,880,483
▼負債及び純資産の部(単位:千円)
流動負債 15,526,726
(うち賞与引当金 837,755)
固定負債 234,488
(うち退職給付引当金 43,860)
株主資本 2,119,268
資本金 50,000
利益剰余金 2,069,268
利益準備金12,500
その他利益剰余金 2,056,768
(うち当期純利益 1,597,647)
負債・純資産合計 17,880,483

事業概要は?

ウーブン・コアは、グループにおける自動運転技術の開発を促進し、技術の実装や市場導入・普及までを担う。

トヨタの「Mobility Teammate Concept」の考え方に基づいて開発した最新の高度運転支援技術をはじめ、正確なセンシングとラベリングによる認識技術、最適なルート選択や車線維持技術などの開発を進めている。

Teammate Conceptに基づいた最新の高度運転支援技術「Toyota Teammate/Lexus Teammate」の新機能「Advanced Drive」は、2021年4月発売の新型レクサスLSと新型MIRAIに搭載された。

ちなみにAdvanced Driveは、Intelligent(知能化)、Reliable(信頼性)、Perceptive(認識性能)、Interactive(ドライバーとクルマの対話)、Upgradable(ソフトウェアアップデート)の5つの技術的特徴を備えている。

具体的には、高速道路や自動車専用道路の本線上において、HDマップ使用のもと車線・車間の維持や分岐、車線変更、追い越しといった運転操作を支援する。走行状況の常時監視は必須だが、アクセル、ブレーキ、ステアリング操作からドライバーを解放する高度なレベル2に相当する技術だ。

プライバシーに配慮したうえで各種走行データも収集し、今後の自動運転や先進安全技術、地図関連技術の研究開発に役立てるという。

自動運転やADASにおいて「コア」となる要素技術を開発する同社のテクノロジーは、今後トヨタ車をはじめ多くの車両へ実装されていくことになる。

【参考】Advanced Driveについては「トヨタの新型LS、「人とクルマが仲間」な自動運転レベル2搭載」も参照。

■【まとめ】研究開発の成果は徐々に社会実装段階へ

先端技術の研究開発をベースとする組織のため、単純に黒字・赤字で業績を図ることはできないが、北米のTRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)、直接の前身となるTRI-ADから引き継がれている最先端のテクノロジーは着実に実を結び始め、本格的な実証や実装の段階に到達した印象だ。

今後、トヨタの最先端技術にスタートアップらの独自技術が融合し、さらなる進化を遂げていく見通しだ。こうした技術の進捗は、実証都市Woven Cityなどで垣間見えるかもしれない。引き続き同グループの一挙手一投足に注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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