独Volocopter、シンガポールで3年以内に「空飛ぶタクシー」!現地当局とタッグ

観光などでアーバンエアモビリティーとして活用



出典:Volocopterプレスリリース

空飛ぶクルマ」の開発を手掛けるドイツのVolocopter(ボロコプター)は2020年12月16日までに、シンガポールでエアタクシーサービスを今後3年以来に開始させる計画を発表した。いわゆる「空飛ぶタクシー」をシンガポールで誕生させる計画だ。

シンガポール経済開発庁(EDB)やシンガポール民間航空庁(CAAS)と協力して計画を進める。空飛ぶタクシーを「アーバンエアモビリティー」(都市航空交通:UAM)として運行し、観光や移動手段として役立てたい考えのようだ。


報道発表によると、空飛ぶタクシーの最初の飛行ルートは南部の海を巡るルートとなる見込みで、空飛ぶタクシーからマリーナ・ベイのスカイラインの景色を堪能できるようになりそうだ。いずれは国境を越えるルートでの飛行も計画したい考えだという。

■Volocopter CEO「シンガポールが最適」と強調

Volocopterは2019年10月、シンガポール中心部のマリーナ・ベイ地区で空飛ぶタクシーの有人試験飛行を成功させている経緯がある。同社は過去にドイツやドバイなどで実証実験を実施しているが、都市部で試験飛行を成功させたのは初めてのことだった。

Volocopterは今後のシンガポールでのサービス開始に先立ち、CAASや欧州航空安全機関などから必要な承認を得るなどしつつ、より実用サービスに近い形での飛行試験や検証を行っていくという。

VolocopterのFlorian Reuter最高経営責任者(CEO)は「シンガポールは、新しいテクノロジーの適応と生活における主導的な役割で有名である。前回のフライトでEDB、シンガポールの交通省(MOT)、CAASとの協力が成功したことは、アジアで電動エアタクシーサービスを開始するのにシンガポールが最適であることを示している」とコメントしている。



■空のモビリティ開発でライバルが増えつつある

Volocopter社は、eVTOL(電動垂直離着陸機)のパイオニア的存在だ。2011年に世界初と言われる有人飛行を実施し、2017年にはドバイでエアタクシーのテスト飛行を行った。そして前述の通り、2019年には空飛ぶタクシーの有人試験飛行をシンガポールで成功させている。

2020年10月には日本航空(JAL)、三井住友海上火災保険、MS&ADインターリスク総研との業務提携を発表した。同社の日本進出に向けた市場調査や日本でのeVTOLの社会実装に向け共同で取り組んでいくというものだ。

空飛ぶクルマの開発企業はVolocopterだけではない。航空機メーカーの仏エアバスや東京大学発スタートアップのテトラ・アビエーションなど、国内外で開発企業が増えている。そんな中でVolocopterがどこまで存在感を高めていけるか、関心が集まる。

ちなみに空飛ぶタクシーに関しては米Uberも開発を進めていたが、事業売却に関するニュースが最近あったばかりで、Volocopterのように国のバックアップを受けて本腰を入れて事業に取り組んでいる企業と、Uberのように非戦略事業化していく企業に、今後分かれていくことも考えられる。

空飛ぶタクシーの実現性を考えると、法的な側面もあり国のバックアップを受けることは事業の推進に向けて大きな鍵となる。そういった意味でもVolocopterの空飛ぶタクシーの実現期待度は高い。

【参考】関連記事としては「独VolocopterとJALなど、次世代エアモビリティ「eVTOL」で提携」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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