自動運転領域の上流で事業を展開する企業と絡むためには、競争力の高い技術力を自社で有していることなどが求められる。その技術の革新のためには、トヨタ自動車のWoven Cityとまではいかなくても、自前で検証施設を有するのもありだろう。
こうした視点でみると、日本電気株式会社(本社:東京都港区/代表取締役執行役員社長:新野隆)=NEC=の最近の発表が興味深い。実証施設「NECモビリティテストセンター」を静岡県御殿場市に開設したというニュースだ。
ローカル5Gや映像分析などの先進技術を活用し、インフラ協調型のモビリティサービスや自動運転支援などの検証・評価が可能なようになるという。この実証施設でNECの技術力が高まれば、自動運転領域で同社の存在感はますます高まることになりそうだ。
NECモビリティテストセンターにはテストコース(全長は約120メートル)が設けられ、信号器や横断歩道、交差点などの道路設備をはじめ、ローカル5G基地局や路車間通信のための道路側の無線通信設備、路側カメラ、AI用エッジ処理装置が設置されているという。
■ローカル5Gと映像分析の先進技術実験などを実施
新たなテストセンターなどを活用し、NECは今年度、ローカル5Gと車車間通信(V2V)、路車間通信(V2I)を組み合わせた以下の3つの実証実験を予定しているという。
- ローカル5Gと映像分析の先進技術実験
- 交通マネジメント実験
- 道路インフラのマネジメントの実験
特に注目したいのが、1つ目の「ローカル5Gと映像分析の先進技術実験」だ。道路側に設置されたカメラで交差点などの死角となりうる場所の俯瞰的な映像を取得し、ローカル5Gを用いて分析。横断者情報や衝突予測、速度超過車両情報などを5G端末搭載の車両へ知らせることで安全・安心な運転支援や自動運転につなげるという。
■【まとめ】自動運転社会の実現に不可欠な街の整備
自社で規模が大きめの実証施設を整備する事例が増えてきている。例えば、画像認識技術で自動運転に貢献しようと取り組んでいる香港企業SenseTime(センスタイム)は、2019年1月に自動車学校の跡地を活用したテストコースを開設したと発表している。
2019年末には、自動運転技術の開発にも力を入れているライドシェア最大手の米ウーバー・テクノロジーズが、自動運転向けの試験用地として米ペンシルベニア州で広大な土地を購入していたことも明らかになっている。その後の続報も気になるところだ。
自動車メーカーだけではなくさまざまな企業が、自動運転領域に切り込むために技術力を高めようと、このように自前の実証施設の整備に取り組んでいる。施設の整備にはコストが掛かるが、その分、競争力の源泉になっていくことが期待される。
【参考】関連記事としては「茨城に「AIが自動運転を学ぶ学校」誕生!自動車学校跡地を活用 センスタイム日本法人」「東京ドーム50個分!米Uber、AI自動運転の試験向けに土地購入」も参照。