タクシー2.0時代、20の革新 自動運転やMaaSも視野

事前確定運賃スタート、変動迎車料金や相乗り?





タクシー業界の改革が本格化している。国土交通省は2019年10月、配車アプリを活用したタクシーの事前確定運賃に関する新ルールの運用を開始し、認可事業者らを発表した。







報道によると、同省は本年度内に「変動迎車料金」「定額タクシー運賃」「相乗りタクシー」の3点についても道路運送法上の通達を改正する方針で、タクシー業界は来年秋にも新たなサービスを開始する見込みとなっているようだ。

大きく動き出したタクシー業界。今回は、事前確定運賃をはじめ近々導入予定の新サービスを中心に解説し、業界の動向を追っていこう。

■事前確定運賃:2019年10月に認可

事前確定運賃は、配車予約時に乗車地点と降車地点を提示することで、確定運賃情報を事前に通知・確定する新たな料金体系だ。事前にタクシー料金が確定することで、利用者は渋滞やメーターを気にせず安心感を得ることができる。配車アプリなどに搭載された電子地図を用いることで事前に送迎ルートの距離などを把握することが可能となったことから実現に目途がついた。

2019年4月、タクシーの事前確定運賃に関する本格運用ルールを策定し公表した。同年10月に認可され、札幌や東京など全国27地域でタクシー事業者約200社、約2万台の車両がサービスを開始した。配車アプリは、みんなのタクシーの「S.RIDE」、JapanTaxi の「JapanTaxi」、つばめタクシーグループの「スマたく」、ディー・エヌ・エーの「MOV」の4つが対応している。

運用ルールは、配車アプリなどにおいて、旅客が入力した乗車地点と降車地点との間の推計走行距離を基に算定した運賃に、地方運輸局が定める係数を乗じて算定することや、配車アプリなどによって旅客に対して走行予定ルートを示し、タクシーの運転者は原則として走行予定ルートどおりに運送を行うこと、事前に旅客と事業者との間で合意し、確定した運賃を支払うことなどが定められている。

導入に先立ち、国土交通省は2017年8月から10月にかけて東京都内で実証実験を行っている。日本交通グループ、国際自動車グループ、大和自動車交通グループ、第一交通産業グループの協力のもと、4648台の車両で7879回の利用があり、事前確定運賃の総額とメーター運賃の総額の乖離率は約0.6%と、おおむね適切に予測された結果となった。

また、約7割の利用者が「本格導入されたらまた利用したい」と回答し、理由として「値段が決まっていて安心であること」を最も多く挙げた。それまでタクシーをほとんど利用しなかった人の利用が伸びており、配車アプリを活用した新しいサービスは若年層を中心とした新たな顧客層への訴求に効果がありそうだ。

【参考】事前確定運賃については「タクシーの事前確定運賃スタート!計算に使う「統一係数」とは?」も参照。

■変動迎車料金:過去には「繁忙指数」を使った実証実験

国土交通省は2018年10月から11月にかけ、輸送実績などから時間帯ごとのタクシー需要を判断し、それに応じて段階的に料金を変動させる「変動迎車料金」に関する実証実験を東京都内で実施した。

需要の多寡によって料金を変動する「ダイナミックプライシング」の一環で、閑散時の「迎車料金が安ければタクシーを利用したい」といった潜在的ニーズや、混雑時の「少し高い料金を払っても優先的に配車を受けたい」といったニーズに柔軟に対応する迎車料金制度の導入を検討し、あわせて需要喚起と運行効率化を図ることでタクシー事業者の生産性向上を検証する狙いだ。

実証には、大和自動車交通グループと国際自動車グループ、日本交通グループが参加した。大和自動車交通と国際自動車は、過去の運送実績に基づく10分ごとの「繁忙指数」によって繁閑の状況を判定し、繁忙指数に応じて0円~910円の料金を適用し、現行より高い料金で配車依頼した場合は最優先で配車した。

日本交通は、特定の区域において日曜日と水曜日の11時から17時までの間を迎車料金0円とし、それ以外は利用者が優先的にタクシーを配車することを希望する際に追加的な料金を支払うことにより、より広範囲で配車可能なタクシーを探し優先的に配車する仕組みとした。

国交省は実験結果を集約・分析し、制度化を検討することとしている。

■定額タクシー運賃:一定の条件の範囲内で乗り放題に?

国土交通省は2018年10月から12月にかけ、一定の条件の範囲内でタクシーを定額で乗り放題とする運賃サービス「定額タクシー運賃」に関する実証実験を全国7地域で実施した。

定額タクシー運賃は、鉄道の定期券のように対象者やエリア、時間帯などを限定して定額でタクシーを利用できるサービスで、例えば運転免許を返納した高齢者の通院や、共働き夫婦の子どもの通塾など、各地域の実情に応じた移動ニーズに対し、地域の足として割安なタクシーサービスを提供する定期券のような運賃体系のもの。

実証には十勝中央観光タクシー(北海道帯広市など)、郡山観光交通(福島県郡山市)、白河観光交通(福島県白河市)、大和自動車交通グループ(東京都立川市など)、神奈中タクシーHD(神奈川県厚木市など)、フクモトタクシー(岡山県真庭市)、第一交通産業グループ(福岡県北九州市など)が参加し、それぞれの地域で乗り放題の実施や回数券の発行などを行った。

■相乗りタクシー:複数の利用者を1台のタクシーで

国土交通省は2018年1月から3月にかけ、配車アプリを活用して複数の利用者を1台のタクシーにマッチングする「相乗りタクシー」に関する実証実験を東京都内で実施した。

相乗りタクシーは、目的地が近い利用者同士をマッチングして相乗りすることで、割安にタクシーを利用することが可能となるサービスだ。終電後の深夜時間帯の帰宅やイベント時の利用、空港へのアクセスなどに需要が見込まれる。

運賃は、相乗りする利用者の最初の乗車地から最後の降車地までの走行距離に応じて算定した金額を、各利用者が単独で乗車した場合の推計走行距離に応じて按分して算定する。

実証には、大和自動車交通グループと日本交通グループが参加。期間中の相乗りタクシーの申込み人数は5036人で、そのうち実際の利用人数は494人という結果で、マッチングの成立率は約1割となった。

利用者アンケートによると、本格導入後の利用意向については約7割の利用者が「また利用したい」と回答した一方、実証にあわせて実施した国土交通省インターネットモニターアンケートにおいて、相乗りタクシーを利用する際に最も気になる点として、約5割のモニターが「同乗者とのトラブルに巻き込まれるのではないか」と回答したという。

こうした点を踏まえ、申込み人数の増加やマッチング効率を上げる工夫や、同乗者への不安感が強いことからこれを解消する必要があることを制度化に向け取り組むべき課題としている。

なお、相乗りの実証はこのほかにも熊本県荒尾市が2019年1月から2月にかけ、三井物産などとともにAI(人工知能)を活用した実証実験を行っているほか、タクシー相乗りアプリを提供するスタートアップNearMeなども存在する。

【参考】熊本県荒尾市の取り組みについては「熊本県荒尾市、三井物産などと相乗りタクシーの実証実験開始」も参照。NearMeについては「タクシー相乗りアプリ展開のNearMe、プレAで約3億円資金調達」も参照。

■配車アプリの登場でユーザビリティが一気に向上

事前確定料金や変動迎車料金、相乗りといった新しいサービスの根底には、「配車アプリ」の存在がある。デジタルマップやマッチングといった機能を手軽に利用するには、スマートフォンが欠かせないからだ。

配車アプリを使えばタクシーを探す手間もなく、見知らぬ土地でも大まかなルートと概算料金を事前に把握でき、目的地の説明をする必要もない。キャッシュレス決済も可能だ。

現状、基本的に迎車料金がかかるのがデメリットだが、こうした金銭面の負担も、各種キャンペーンやクーポンなどで得になるケースも多い。

ここに相乗りサービスや変動迎車料金などさまざまな乗車サービスが加わることで、より利便性の高い乗車が可能となる。

配車アプリの利用者数や利用可能な地域・タクシー事業者は増加傾向にあるが、こうした新サービスが増加に拍車をかけて相乗効果を生み、より広範囲で多くの人が配車アプリを利用するようになっていくものと思われる。

バスや鉄道などでは補えない、タクシーならではのドアtoドアの移動がより便利になっていくのだ。

【参考】配車アプリについては「タクシー配車アプリ戦争、5強体制の様相 勢力図は?」も参照。

■自動運転化:業界を取り巻く環境は大きく変わることに

将来のタクシー業界に大きな影響を及ぼすのが、自動運転技術だ。ドライバー不在の自動運転タクシーが実用化されることで、業界を取り巻く環境は大きく変わっていくことになる。

自動運転タクシーは、基本的に歩行者が手を挙げても停まらないため、配車アプリによる利用がベースとなる。料金のやり取りも当然キャッシュレスだ。AIが需給に合わせて効率よく配車するシステムなども自動運転では当たり前となるため、配車サービスはもとよりダイナミックプライシングなどとの相性も良さそうだ。

イニシャルコストは高いものの、ドライバー不在による人件費の削減効果は大きく、将来的に乗車料金が安くなる可能性が高い。タブレットなどを活用した車内広告も当たり前の存在となり、料金の低減に一役買いそうだ。

【参考】自動運転タクシーについては「自動運転タクシーの商用化に挑む世界の企業まとめ」も参照。タクシー広告については「タクシーへ広告掲載!主要な8形態まとめ 激アツは「後部座席タブレット」型」も参照。

■タクシー業界の取り組み:11項目に新たに9項目追加

事前確定料金や定額タクシー運賃、変動迎車料金、相乗りタクシーのほかにも、タクシー業界の取り組みは加速している。

全国ハイヤー・タクシー連合会は2016年10月、「タクシー業界において今後新たに取り組む事項について」と題したアクションプランを発表した。業界として懸念しているライドシェア対策に主眼を置いているが、取り組みそのものは純粋にタクシーサービスの更なる高度化に向けられており、利用者の利便性の向上が図られる内容だ。

全11項目で、事前確定料金や定額タクシー運賃、変動迎車料金、相乗りタクシーのほか、初乗り運賃の引き下げを行う「初乗り距離短縮運賃」、乗務員と客双方が互いを評価し合う「相互レイティング」、「ユニバーサルデザイン(UD)タクシー」、車体への広告掲載場所の制限緩和を目指す「タクシー全面広告」、「第2種免許緩和」、「訪日外国人等の富裕層の需要に対応するためのサービス」、交通不便地域対策や高齢者対応、観光型などの「乗合タクシー」となっている。

また、2019年6月には、追加項目として「MaaS(Mobility as a Service)への積極的参画」「自動運転技術の活用方策の検討」「キャッシュレス決済の導入促進」「子育てを応援するタクシーの普及」「UDタクシー・福祉タクシーの配車体制の構築」「運転者職場環境良好度認証制度の普及促進」「労働力確保対策の推進」「大規模災害時における緊急輸送に関する地方自治体との協定等の締結の推進」「タクシー産業の国内外へのアピールの推進」の9項目を挙げている。

計20項目の取り組みにより、社会的課題の解決から未来を見据えた取り組みまでさまざまな業界改革を推し進めていく構えだ。

■【まとめ】変わるタクシー業界 MaaSや自動運転技術の活用も視野に

配車アプリの導入によって、さまざまなサービス展開を図ることが可能になった形だ。新サービスの評判が良ければ、利用者・タクシー事業者双方による配車アプリの導入が進み、全国どこでも配車アプリが利用可能になるかもしれない。配車アプリの利用がスタンダードとなる時代。これこそがタクシー業界における大変革と言えるだろう。

また、検討すべき追加項目には、MaaSや自動運転技術の活用といった言葉も並び、次世代を見据えた移動サービスへの取り組みもますます加速していくものと思われる。業界の動向に引き続き注目していきたい。

【参考】全国ハイヤー・タクシー連合会の取り組みについては「日本のタクシー業界、改革へ11案策定 ダイナミックプライシングや相乗りサービス」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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