トヨタのMaaSサービス「my route」を徹底解説

バスや鉄道のほか、カーシェアなども利用可能に





出典:トヨタプレスリリース

トヨタと西日本鉄道によるMaaSアプリ「my route」の本格運用がスタートした。JR九州などの新規参画のもとエリアを福岡市と北九州市に拡大し、機能を拡充していく方針だ。将来的には、他地域での展開も目指すこととしている。

海外では独ダイムラーが口火を切る形でMaaS分野に深く関わっているが、国内においては、自動車メーカーが直接MaaS構築に関わる例は乏しく、業界からの注目度も高い。







今回はmy routeの概要を中心に解説し、トヨタのMaaS戦略に触れてみよう。

■my routeとは?
2018年11月に実証スタート

my routeは、トヨタと西日本鉄道が交通・店舗・イベント情報のサービサー8社の協力のもと2018年11月から福岡県福岡市で実証を進めているマルチモーダルモビリティサービスで、鉄道やバスなどの公共交通やタクシー、シェアサイクルなどさまざまな移動手段を組み合わせたルート検索や、一部サービスの予約・決済のほか、店舗・イベント情報の検索も可能にした。

マルチモーダルルート検索では、駐車場シェア事業を手掛けるakippaやサイクルシェア事業を手掛けるメルカリが連携したほか、予約・決済ではタクシー事業を手掛けるJapanTaxiが同社の配車アプリを連携させた。アプリでは、移動ルートの選択肢を提示するほか、西鉄の路線バスのリアルタイムな位置情報や駐車場の満空状況なども表示することができる。

店舗・イベント情報の検索では、アクトインディやアソビュー、ipoca、サンマーク、福岡市がそれぞれのポータルサイトやアプリなどを連携させ、情報を提供した。

また、西鉄は福岡市内を走る路線バスに1日何度も乗り降り可能な「福岡市内1日フリー乗車券」をmy routeアプリ内で限定販売するなど、利便性の向上に努めた。

実証期間の1年間で約3万件のアプリがダウンロードされ、また利用後のアンケートでは、約8割のユーザーが「満足」と回答するなど好評を得ているようだ。

なお、2019年7月には、経路検索大手の株式会社ナビタイムジャパンがmy routeのルート検索機能をトヨタと共同開発すると発表している。

同社の経路探索エンジンをmy routeアプリにAPI形式で提供し、公共交通やタクシー、レンタカー、自転車などを含めた移動ルートの提案を支援している。

本格実施で何が変わる?

2019年11月28日からは、九州旅客鉄道(JR九州)も参画し、福岡市に加え北九州市にもサービス提供エリアを拡大してサービスを実施する。

トヨタは、my routeプラットフォームおよび決済システムの開発・運営をはじめ、トヨタのレンタカーやカーシェアサービスTOYOTA SHAREとの連携を担う。決済面では、TOYOTA Walletに対応するなど電子決済手段の拡充を図っている。今後、福岡市・北九州市を皮切りにmy routeを他地域でも展開予定としている。

西鉄は、同社が運行するバスの位置情報や西鉄グループが持つ店舗・イベント情報(天神サイトなど)の提供を行うとともに、アプリ内限定でバス・鉄道のデジタルフリー乗車券を販売する。2019年度内には、商業施設と連動したアプリ内QRコードクーポンの提供も予定している。

JR九州は、my route上において、インターネット列車予約サービスとの連携や同社が運行する新幹線・在来線の運行情報を提供する。今後、JR九州沿線におけるmy routeとの連携拡大について検討していく方針としている。

移動サービスでは、新たにトヨタのカーシェアサービス「TOYOTA SHARE」が加わった。予約・決済面では、トヨタの決済アプリ「TOYOTA Wallet」が連携したほか、タクシー配車・予約・決済に第一交通産業のタクシー配車アプリ「モタク」が2020年春ごろまでに加わる見込み。

また、高速バス予約として京王電鉄バスの高速バス予約サービス「ハイウェイバスドットコム」が2020年春ごろ、新幹線予約として九州旅客鉄道の列車予約サービス「JR九州インターネット列車予約」が2020年1月ごろをめどに、新たに対応する予定となっている。

店舗・イベント情報の検索では、北九州市による北九州市観光情報サイト「ぐるリッチ!北Q州」が新たに情報を提供している。

デジタルフリー乗車券は、福岡エリアでは西鉄バスの福岡市内フリー乗車券6時間券(大人600円)、同24時間券(同900円)、西鉄電車の1日フリー乗車券(同820円)をそれぞれ提供しているほか、訪日外国人専用の1日フリー乗車券「FUKUOKA TOURIST CITY PASS」(同1500円、太宰府エリア含め1820円)を2020年春ごろをめどに開始する予定。

北九州エリアでは、北九州エリアフリー乗車券の24時間券(同800円)、48時間券(同1500円)を提供している。

■TOYOTA Walletに対応

「TOYOTA Wallet(トヨタウォレット)」は、トヨタ自動車、トヨタファイナンシャルサービス、トヨタファイナンスのグループ3社が2019年11月に開始したスマートフォン決済アプリ。

プリペイド型電子マネー「TOYOTA Wallet残高」、クレジット型サービス「TOYOTA TS CUBIC Origami Pay」、デビット型サービス「銀行Pay」の3つの決済手段を搭載していることが特徴で、現在はiOS版のみだが、2020年春ごろAndroid向けアプリの提供も開始する予定となっている。

my routeをはじめ、トヨタ販売店や「トヨタレンタカー」、「TOYOTA SHARE」、「KINTO」、「MONET」など、トヨタグループ内外のさまざまなモビリティサービスと連携を進めていく予定で、未来のモビリティ社会を決済面から支える基盤となりそうだ。

■TOYOTA SHAREに対応

TOYOTA SHAREは、予約から車両の施錠や開錠、精算までをスマートフォンで済ますことが可能なカーシェアサービス。運営は主にトヨタ販売店とトヨタレンタリース店が担っている。2019年11月27日時点で、全国22都府県で計109件のステーションが登録されている。

福岡県内では10件で、このうち7件が福岡市内に位置している。北九州市は今のところ登録されていないようだ。

会員登録は無料で、コンパクトクラスは15分150円から、現行モデルの新しい車両も15分200円から利用することができる。コンパクトカーからSUV、ミニバンまで多彩なラインアップで、Basicクラスはバックモニター付カーナビや衝突回避支援パッケージ(Toyota Safety Sense)などを搭載している。

【参考】TOYOTA SHAREについては「トヨタの「TOYOTA SHARE」「チョクノリ!」、気になる中身は?」も参照。

■my routeアプリの使い方
アプリのインストールから利用まで

iOS、Androidともに対応しており、App Store・Google Playで検索すると「my route マイルート」が表示されるのでインストールする。

登録には、メールアドレスが必要だ。なお、このメールアドレスがIDとなるが、TOYOTA・LEXUS系アプリとの共通IDとなるため、「TOYOTA SHARE」などのサービスにもそのまま利用できるようだ。

メールアドレスを入力すると、6桁の認証番号が送信されるので、これを入力する。なお、この際にアプリをいったん閉じてしまうとやり直しを余儀なくされるケースがあるため注意が必要だ。その後、パスワード設定などを終えれば登録完了となる。

アプリを開くと、現在地と経由地、目的地の指定画面が地図とともに表示される。スタート地点は、GPS情報による現在地をはじめ、近くの駅やバス停、地図上からの指定などが可能。自宅や職場などをマイスポットとして登録することもできる。

ルート検索条件には、電車や路線バス、タクシー、サイクルシェア、カーシェア、レンタカー、特急、徒歩などがあり、初期設定ではすべて対象となっている。特定の移動方法を除外したい場合は選択を外す。このほか、移動人数も1~4人の範囲で指定できるようだ。

検索結果画面では、「タクシー」や「バス」などの各選択肢の所要時間や料金、乗り換え回数がそれぞれ表示される。検索結果は、到着が早い順、料金が安い順、乗り換えが少ない順でそれぞれ表示することができる。

各選択肢をタップすると、それぞれの詳細な案内やサービスをを受けることができる。例えば、移動方法が「タクシー」の選択肢をタップすると、タクシー配車アプリ「JapanTaxi」の案内や距離、料金などとともに「タクシーを呼ぶ」ボタンも表示される。

「路線バス」をタップすると、乗り場までの距離や所要時間、乗り換え場所などの案内が表示され、購入可能な区間については「購入」ボタンも表示される仕組みだ。

フリー乗車券利用時は、乗降車できる残り時間なども表示できるようだ。このほか、カレンダーアプリとの連携機能なども備えている。

マルチモーダルルート検索の画面イメージ=出典:トヨタプレスリリース
2大キャンペーン実施中

アプリの本格実施を記念し、現在キャンペーンが2つ行われている。キャンペーン1では、2019年12月31日までの期間中、my routeアプリ内でクレジットカード情報の新規登録、もしくはTOYOTA Walletの連携設定を完了すると、抽選で2000人に福岡市内6時間フリー乗車券または北九州エリア24時間フリー乗車券が当たる。

キャンペーン2では、2020年2月29日までの期間中、my routeアプリでネット決済の「TOYOTA Wallet残高」を選択して決済すると、初回に限り決済金額の20%を後日還元するほか、抽選で50人に1人、決済金額の100%を「TOYOTA Wallet残高」に還元する(還元上限金額は1000円まで)。

アプリの評価は?

2019年11月29日時点におけるApp StoreとGoogle Play内での評価は、App Storeが5点満点中2.8(評価件数77件)、Google Playが同3.7(同31件)となっている。

「とても便利でオススメです」「いろんな移動手段が使えて便利そう」といった声が挙がる一方、「ルート検索の精度が低すぎる」「6時間フリー乗車券はいい企画だが、フリー乗車券を使用中、いざ降りるときに表示させようとしたら、『アップデートが必要です』としか表示されず、バス代を二重にとられた」といった声も。

アプリの利便性そのものを望む意見も多く、今後の改善に期待が持たれるところだ。

■トヨタのMaaSに向けた取り組み

モビリティサービスへの事業シフトを強めるトヨタは、2018年4月にトヨタフリートリースとトヨタレンタリース東京を統合してトヨタモビリティサービス株式会社を設立し、モビリティ社会を見据えた新たなモビリティサービスの創造・提供に向けた取り組みを進めている。同年8月には、同社社屋内に法人客を主な対象としたモビリティサービスの体感・発信拠点「TOYOTA MOBILITY SHOWROOM」をオープンさせている。

また、米ラスベガスで開催されたCES2018では、モビリティサービス専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept(イー・パレット・コンセプト)」を展示するなど、MaaS向け車両の開発にも力を入れている。

シェアリング分野では、米Uberや東南アジアのGrab、中国のDiDiなど世界の大手配車サービス企業に出資するほか、駐車場事業などを手掛けるパーク24とともにパーソナルモビリティを活用したカーシェア実証実験を継続している。

2018年9月には、ソフトバンクと新しいモビリティサービスの構築に向けて戦略的提携に合意し、新会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)」を設立。翌年2月に事業を開始し、次世代のオンデマンドモビリティサービスの提供に向けて17自治体と連携することを発表。また、3月には、モビリティイノベーションの実現に向けた「なかまづくり」の一環として企業間の連携を推進する「MONETコンソーシアム」を設立し、多くの異業種参入のもとさまざまな活動を推進している。

このほかにも、愛車サブスクリプションサービス「KINTO」のスタートや、パナソニックとまちづくりに関する合弁会社設立の発表など多方面で事業を展開しており、「モビリティカンパニー」としての土台を着々と構築している姿がはっきりとうかがえる。

【参考】トヨタの取り組みについては「トヨタ×自動運転、ゼロから分かる4万字解説」も参照。

■【まとめ】トヨタの参入で陸地の役者出揃う MaaS業界地図は拡大の一途

各地で産声を上げ始めたMaaS。これまでは、鉄道やバスといった公共交通事業者や自治体を軸に、ナビタイムジャパンやヴァル研究所といった経路検索を手掛ける企業などが参画して構築を進めている例が多かったが、トヨタの本格参入によりついに自動車業界も本腰を入れ始めた格好となった。

タクシー業界はプラットフォーマーと独自の配車サービスを展開し、普及・浸透の観点から一歩先を進んでいる感が強いが、思いのほか早くMaaSアプリの実用実証が進んでいるため、今後はこうした各地のMaaSアプリとの連携がタクシー配車アプリ競争にも大きな影響を及ぼしそうだ。

トヨタの参戦により主導権争いが混とんとしてきたが、遅かれ早かれ自動車業界の参入は必然のものだ。各MaaSのベースは「エリア」が限定されているため、しばらくは住み分けを図ったまま実用化が進んでいくものと思われるが、将来的には利便性を高めるため一定程度標準化が進み、MaaS業界全体が洗練されたものに変わっていくはずだ。

いずれにしろ、陸地における既存の移動サービスを担う役者がこれで出揃った。飛行機や船、新モビリティなどをはじめ、付加サービスを提供する異業種とともにまだまだMaaS業界の地図は拡大を続けそうだ。

【参考】関連記事としては「MaaS(マース)の基礎知識と完成像を徹底解説&まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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