MaaS、2020年の業界展望を大予測!アプリ次々と実用実証へ、Whimも日本上陸

マイクロモビリティの実証にも注目の1年に





世界的に加速するMaaS(Mobility as a Service/移動のサービス化)構築に向けた動きは、日本も例外ではない。クルマ社会と呼ばれて久しいが、鉄道やバス、タクシーをはじめとした交通機関とともに移動サービス全般の在り方が見直され、SDGs(持続可能な開発目標)の潮流とも相まって、効率的かつ効果的なサービス体系の構築が各地で模索されている。







スマートモビリティチャレンジなどでMaaSに取り組む自治体が増加する中、2020年のMaaS業界はどのような変化を遂げるのか。次世代モビリティに関する取材・分析を進める自動運転ラボの視点から、業界の動向を見通してみよう。

■観光MaaSアプリのリリース本格化、Whimも日本上陸へ

MaaSアプリの開発が急速に進んでいる。とりわけ、地域活性化やビジネスにつなげやすい観光型MaaSアプリの実用実証が加速している印象で、自動運転ラボでは、2020年は全国各地でMaaSアプリのリリースが本格化する年になるとみている。

東京急行電鉄とJR東日本、専用MaaSアプリ「Izuko」の実証
出典:Izukoアプリダウンロードページ

伊豆エリアで観光型MaaSの実証実験に取り組む東京急行電鉄と東日本旅客鉄道(JR東日本)、及びジェイアール東日本企画は、2019年4月から6月までの3カ月間にわたり「Phase1」、12月から3月までの約3カ月間にわたり「Phase2」として計6カ月間にわたり、専用MaaSアプリ「Izuko」の実証を進めている。

Izukoでは、伊豆急線全線(伊東~伊豆急下田)や伊豆箱根鉄道駿豆線全線(三島~修善寺)の鉄道路線と、エリア内を運行する伊豆箱根バスと東海バスの路線バスの検索が可能で、地元タクシー会社によるAIオンデマンド乗合交通やレンタサイクル、レンタカーの予約を行うことができる。

決済機能は、伊豆急線全線と伊東市内および下田駅周辺路線バスが2日間乗り放題となる「Izukoイースト」や、伊豆箱根鉄道駿豆線全線や修善寺駅および下田駅周辺路線バスなどが2日間乗り放題となる「Izukoワイド」といったデジタルフリーパスをはじめ、複数の観光施設入場券の購入・決済も可能とした。

デジタルマップでは、飲食施設や携帯充電可能な場所などを多言語案内するほか、画面を提示することにより約30施設の観光施設が割り引きとなるサービスも付加した。

Phase1では、6カ月間の目標値であった2万ダウンロードを早くも超える23231ダウンロードを記録。一方、6カ月間で1万枚の販売を目指すデジタルフリーパスは1045枚の状況で、課題が明確になった様子だ。

高速バス大手WILLER、観光MaaSアプリの提供開始
出典:iOS版WILLERSアプリ・ダウンロードページ

また、高速バス大手のWILLERは2019年7月、観光MaaSアプリ「WILLERSアプリ」によるサービスの提供を2019年8月から開始すると発表した。まず「ひがし北海道」と「京都丹後鉄道沿線地域」を対象エリアとし、目的地までのルート検索やオススメ周辺スポット情報、旅程の作成、交通と体験の一括予約・決済、目的地までの観光ガイド、デジタルチケットなどの各機能を提供している。

こうした動きが交通事業者を中心に活発化しており、各地域の他の交通事業者や観光団体、飲食店などと連携して実証する事例が相次いでいる。

【参考】WILLERSアプリについては「鉄道でもタクシーでも予約決済OK!WILLERが観光MaaSアプリをリリース」も参照。

交通事業者だけではなくIT系企業も参入に本腰か

こうした動きは加速傾向にあり、今後、交通事業者だけでなくIT系企業が本腰を挙げて参入してくるものと思われる。

例えば、配車サービス大手と手を組むソフトバンクグループや、タクシー配車やカーシェアなどのプラットフォーム事業に参入したソニーやDeNAなどだ。

現状のMaaSは地域性を重視しており、比較的狭い範囲で各交通手段などの統合が進められているが、今後、有力な交通事業者などMaaS構築をリードする企業がいない地域に向けた汎用性の高いプラットフォーム開発などが進められるものと思われる。また、将来的にはMaaSの広域化を図る動きも出てくるはずだ。こうした際に頭角を現すのが、特定の地域性を持たずかつ万能なプラットフォーム開発能力を持つIT系だ。2020年は新規参入組にも要注目だ。

フィンランド発祥の「Whim」が日本上陸へ

新規参入と言えば、MaaSの生みの親として知られるフィンランドのMaaS Global社が展開する「Whim」が日本初上陸し、2019年12月から千葉県柏市でサービスを開始する予定となっている。

同社は、「街づくり×MaaS事業」を展開する三井不動産と提携し、同市柏の葉の住民向けに「MaaSシティ」実現に向けたプロジェクトとして事業展開する。カーシェアリングやタクシー、バスなどの交通事業者との提携がすでに決定しており、検索をはじめ異なる交通手段の決済統合、エリアの物件、街の行事、観光スポットも含むシームレスな移動体験の提供を目指すほか、数カ月後には月額定額制(サブスクリプション)の実現も目指すこととしている。

Whimは基本的に月額定額制を採用しているのも特徴の一つだ。月額定額制の導入により、通勤や通学など毎日のように各交通機関を利用する乗客の利便性が大幅に増す。観光型では1日フリーパスなどが支持されそうだが、住民対象のMaaSであればこちらも選択肢となる。こういった課金方法の在り方も今後MaaSの焦点になりそうだ。

■MaaS系企業、「決済」や「観光情報」との連携も本格化
いまの国内のMaaSレベルは概ねレベル1

2020年は、MaaSレベルの向上を着実に図る年になるとみている。MaaSレベルは0から4に分けられており、レベル0は「統合なし」、レベル1が「情報の統合」、レベル2が「予約、決済の統合」、レベル3が「サービス提供の統合」、レベル4が「政策の統合」と言われている。

レベル1は経路検索サイト・アプリに代表されるもので、さまざまな交通機関の時刻表や運行経路などの情報が統合される。レベル2では、アプリで目的地までのさまざまな移動手段を一括比較し、複数の移動主体を組み合わせたまま予約や決済などができるようになる。

レベル3では、アプリ上のさまざま交通機関のサービスや料金体系も統合され、利用者目線では各交通事業者の区別が実質上必要なくなる。事業者間で提携や連携が進み、アプリ上においては一つの事業者となってサービスを展開するようなイメージだ。そしてレベル4では、国や自治体、事業者が、都市計画や政策レベルで交通の在り方について協調していくことになる。

現在の国内のMaaSレベルは概ねレベル1で、「ジョルダン」や「NAVITIME」などが代表例だ。現在各地で実証が進められているMaaSは、フリーパスの形で決済の統合を図るケースが一部でみられるものの、完全なレベル2とはまだ言えない状況だ。

【参考】MaaSレベルについては「MaaSレベルとは? 0〜4の5段階に分類」も参照。

第一関門は経路検索と決済機能を結びつけていくこと

国内のMaaSが徐々にレベルを上げていく第一関門は、まず経路検索と決済機能を確実に結び付けていき、各アプリから直接決済できるようにすることだ。

一括決済が理想だが、まず各交通機関が個別であっても同一のアプリ上から気軽に決済できるか否かが問われることになる。この工程をクリアした後、同一の決済プラットフォームを通じた一括決済の道が開かれていくことになるが、2020年はこうした決済プラットフォームの統一を進める動きが活発化するものとみている。

合わせて、観光情報や飲食店情報、観光施設・飲食店の決済といった付加価値部分も統合が進んでいくものと思われる。

現在、交通系におけるキャッシュレス決済の代表はJR東日本の「Suica」やパスモが発行する「PASMO」といったICカードだ。各ICカード間の相互利用も進んでいる。

しかし、スマートフォンが普及した現在、こうしたICカードの機能を効果的にスマートフォンに移行していくことも求められており、そうした取り組みの一つがJR東日本をはじめとした「モビリティ変革コンソーシアム」による「Ringo Pass」の実証だ。

「Ringo Pass」は、JR東日本と日立製作所が、移動のための情報・購入・決済をオールインワンで提供する「モビリティ・インケージ・プラットフォーム」によってシームレスな移動の実現を図るため、各交通サービスごとに独立している情報検索機能や利用者情報、決済方法の登録手続きなどを一つのアプリに統合し、各交通サービスをワンストップ化するものだ。

2018年秋から取り組んでいる実証実験では、各モビリティサービスを検索する機能をはじめ、Suicaをモビリティサービスの鍵として利用する機能、QRコード決済機能を備えたアプリによって、鉄道と「ドコモ・バイクシェア」、「kmタクシー」の利用をシームレスに連携させた移動の利便性向上に関して検証を進めている。

こうした取り組みが2020年に各地で実証を進めるMaaSに飛び火し、決済の統一化に向けた動きが着実に進み始めるものと思われる。

【参考】モビリティ変革コンソーシアムについては「【インタビュー】将来あるべきMaaSの姿を模索 JR東日本のモビリティ変革コンソーシアム」も参照。

経路検索サービスの提供企業、MaaSの主役に

また、MaaSレベルの向上を図るうえで最も注目すべきなのが、経路検索サービスを提供する企業だ。各社の情報プラットフォームはMaaSレベル1の根本を担うものであり、いわばMaaSアプリのベースとなる基礎部分だ。このベースを生かし、決済機能などを付加・統合していくことで自ずとMaaSレベルは向上していく。

ジョルダンは、MaaS事業への本格参入のため2018年7月に全額出資の子会社「J MaaS 株式会社」の設立を発表したほか、2019年1月に公共交通チケットサービスを提供している英国のMasabi社と日本における総代理店契約を交わした。

各交通事業者がMasabiのシステムを用いることで、利用者はスマートフォン上でチケットの購入から乗車までをシームレスに行うことが可能となる。

一方、「NAVITIME」を運営するナビタイムジャパンは2019年3月にJapanTaxiと連携し、NAVITIMEとタクシーアプリ「JapanTaxi」のAPI連携を開始した。この連携により、NAVITIMEのルート検索結果からそのままJapanTaxiアプリに加盟するすべてのタクシーを呼ぶことができるようになった

「駅すぱあと」を運営するヴァル研究所は、2018年9月に小田急電鉄株式会社とともに自動運転バスの実証実験にあわせてMaaSのトライアルを実施。同年12月には、「小田急MaaS」の実現に向け、小田急電鉄とシステム開発やデータ連携、サービスの検討を相互に連携・協力することにも合意している。

レベル1プラットフォームを武器に各社との連携や開発を進める経路検索サービス企業の動向にも要注目だ。

【参考】経路検索サービス提供企業については「MaaS実現のコア技術「経路検索」を手掛ける企業まとめ」も参照。

■MaaS実証実験、舞台は全国に

経済産業省・国土交通省は2019年4月から新しいモビリティサービスの社会実装を通じた移動課題の解決及び地域活性化に挑戦する地域や企業を応援する新プロジェクト「スマートモビリティチャレンジ」を開始し、先駆的に新しいモビリティサービスの社会実装に取り組む地域・事業を推進している。

この事業のもと、全国各地でMaaS実現に向けた実証がスタートしており、自動運転ラボでは、こうした動きに伴って2020年には各地で「MaaS」が浸透し、その存在が一般化していくものとみている。

スマートモビリティチャレンジにおいては、先駆的に新しいモビリティサービスの社会実装に取り組み、事業計画策定や効果分析など(パイロット地域分析事業)に協力する「パイロット地域」に13地域が選定されたほか、全国各地のMaaSなど新たなモビリティサービスの実証実験を支援し、地域の交通課題解決に向けたモデル構築を推進する「新モビリティサービス推進事業」に19事業が選定された。

両事業では、2020年度から複数交通モードでの定額制および生活サービスと連携したMaaS構築を目指す「新潟MaaS検討推進プロジェクト」をはじめ、AI相乗りタクシーとMaaSアプリの運用・多分野事業間連携の促進を図る「静岡型MaaS基幹事業実証プロジェクト」、中心市街地における住民向けMaaSと比叡山における観光客向けMaaSを推進する「大津市版MaaS推進事業」、自動運転車両を含めた地方版MaaSモデルの構築を図る「日立地域MaaSプロジェクト」などが注目だ。

またそのほかにも注目プロジェクトとしては、自動運転バスとオンデマンド型の交通サービスを導入し、既存の公共交通機関と連携したうえで一括ルート検索・決済を目指す「前橋版MaaS構築事業」、自動運転車両やパーソナルモビリティ、バス・タクシーといった既存公共交通機関、住民共助型システムによる移動支援など、新たなモビリティサービスと既存交通とのベストミックスを図る愛知県春日井市の「MaaSビジネススキーム構築プロジェクト」などがあり、MaaS実現に向け積極に取り組む自治体・事業体が多数を占める。

こうした先進事例は全国各地から注目を集めており、新たな取り組みの呼び水にもなりそうだ。業界用語としてのイメージが強いMaaSだが、地域住民をはじめMaaSという言葉の一般化が着実に進むだろう。

また、各自治体と締結を交わし、次世代モビリティサービスを推進するMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)の取り組みにも具体的な動きが出てくるものと思われる。こちらの動きにも要注目だ。

【参考】新モビリティサービス推進事業については「いざMaaS元年へ!決定した19の先行モデル事業の詳細 自動運転やライドシェアの導入も」も参照。

■カーシェア、デジタルキーや乗り捨て型の取り組み進む
デジタルキー解禁でカーシェア普及に拍車

MaaSを構成する移動サービスの一つ「カーシェアリング」も、飛躍の1年になりそうだ。カーシェアは、公共交通が乏しい地域や都市圏における柔軟な移動に適したラストワンマイルを担う移動サービスとして有用で、右肩上がりの成長を続けている。

現在、国土交通省が自動車の施錠装置に関する保安基準の改正に向け準備を進めているようで、従来の鍵の代わりにスマートフォンなどを活用する「スマートキー(バーチャルキー、もしくはデジタルキー)」が2020年にも解禁される可能性が高く、こうした技術がカーシェアの普及に拍車をかけそうだ。

スマートキーシステムを導入することで、従来の物理的な「鍵」は不必要となり、スマートフォンで解錠・施錠・エンジンのスタートなどを行うことができるようになる。このシステムを応用することで、一台のクルマに対し複数のスマートフォンを鍵にすることが可能になり、カーシェアやレンタカーをはじめとした各種シェアリングサービスへの導入に期待がもたれる。

注目すべきは「乗り捨て型」サービスの普及

もう一点、カーシェアで注目すべきなのが、借りた場所と異なる場所に返却できる「乗り捨て型」のサービス、いわゆるワンウェイ方式だ。

規制緩和とともにカーシェアにおいてもワンウェイ方式の道が開け、パーク24とトヨタ自動車による取り組み「Times Car PLUS×Ha:mo」のように実用実証が進んでいる。

ワンウェイ方式の導入により利用者側の利便性が大幅に増すことは間違いなく、本格導入に向けた動きにも注視したい。

また、カーシェアは事業者が各利用者に貸し出す従来のB2C型に加え、個人が個人に貸し出すC2C型の「個人間カーシェア」も成長を遂げている。自家用車の休眠時間を有効活用したいオーナーや、さまざまなクルマに乗りたい利用者などさまざまな需要を背景に、2020年もサービスを拡大していくものと思われる。

【参考】個人間カーシェアについては「個人間カーシェアの主要4サービス・アプリまとめ MaaSサービスの一種」も参照。

■配車アプリ、各社が利用可能エリアを大幅拡張
JapanTaxi、MOV、Uber、DiDi、みんなのタクシー

2019年は、タクシーの配車アプリ市場の拡大が著しい年となったが、この勢いは2020年も続き、各社が利用可能エリアを大幅に拡張するものとみている。

全国展開で先行するJapanTaxiは2019年8月、配車アプリの累計ダウンロード数が800万ダウンロードを突破したと発表。着実に数字を伸ばしている。

ディー・エヌ・エー(DeNA)が2017年に神奈川県で実用実験を開始した「MOV(当時はタクベル)」は、現在東京都と神奈川県、京都府、大阪府にエリアを拡大している。

2018年7月に兵庫県淡路島で配車アプリ導入に向けた実証実験を開始し、日本国内での配車アプリ事業を本格化。同年9月に愛知県名古屋市で正式に配車アプリ事業をスタートしたUberは、現在大阪、仙台、青森、郡山、広島、京都、福山、福岡の各市で利用可能となっている。

2018年9月に大阪府内でサービスを開始した「DiDi」は、現在京都、兵庫、東京、群馬、埼玉、千葉、北海道、青森、新潟、宮城、愛知、広島、山口、福岡、大分、沖縄とサービスエリアを急拡大している。

2019年4月に東京都内最大級の配車サービスという触れ込みでスタートしたみんなのタクシーの「S.RIDE」は、今後は横浜エリアなどでも展開していく予定を発表している。

【参考】関連記事としては「タクシー配車アプリ戦争、5強体制の様相 勢力図は?」も参照。

変動迎車料金や定額タクシー運賃の解禁にも注目

タクシー業界では現在、事前確定運賃サービスがスタートするなど業界を挙げた改革が進んでおり、近く変動迎車料金や定額タクシー運賃、相乗りサービスなども認可される見込みだ。

こうした新たな取り組みに必須となるのがスマートフォンを用いた配車アプリで、地方のタクシー業者なども対応すべく取り組みを加速している。こうした流れに乗じて配車アプリ提供各社がタクシー事業者に提携を促し、サービスの拡大に努める動きが2020年はより活発化するものと思われる。

なお、こうしたタクシー配車アプリもMaaSの一翼を担っている。海外ではライドシェアが主流となっている国が多いが、日本ではタクシー配車が大幅に進化を遂げている。現状はタクシーに特化した形だが、他のMaaSアプリに比べ認知度や利用度は抜群に高く、決済を含めたプラットフォームとしてすでに成立している強みがある。

場合によっては、各社が事業領域を広げ、他の交通機関の予約や決済機能も搭載し、MaaSアプリの本命に急浮上する可能性も否定できない。全国各地のタクシー事業者をめぐるエリア拡大競争とともに、開発面でも注目したい。

【参考】タクシー配車アプリについては「タクシー配車アプリ戦争、5強体制の様相 勢力図は?」も参照。

■マイクロモビリティ系、規制緩和へ各地で実証実験
電動キックボード、規制のサンドボックス制度で認定
実証実験で使われる二輪電動キックボード(左)と高齢者向け四輪電動キックボード(右)=出典:Luup社プレスリリース

海外で一大ブームを巻き起こしている電動キックボード。利用マナーや安全確保など課題は山積しているものの、手軽に利用できるモビリティとして国内でも注目を集めており、実用化を目指す動きが活発化し始めている。

電動キックボードのシェアリング事業に取り組むLuupは埼玉県や東京都内で実証実験を進めており、2019年10月には、国の「新技術等実証制度(規制のサンドボックス制度)」の認定も受けた。

モビリティ分野では初の認定で、12月までの期間、横浜国立大学常盤台キャンパス内の一部区域で電動キックボードシェアの実証実験に取り組み、社会実装に必要な走行条件データなどを取得し、関係省庁に提出する。

同様に、電動キックボードのシェアリング事業に取り組むmobby rideも九州大学や福岡市などとともに規制のサンドボックス制度の認定を受け、10月から九州大学伊都キャンパス内で電動キックボードシェアリングサービス「mobby」の実証実験を開始している。

ハイブリッドバイクも規制緩和対象に、普及に期待感
出典:glafit社プレスリリース

規制のサンドボックス制度の認定を受けた企業はもう一社ある。ハイブリッドバイクの開発を手掛けるglafitだ。「人力モード」と「電動モード」の切り替えが可能な「ハイブリッドバイク」に関し、人力モードの扱いは本来「自転車」だが、電動モードは「原動機付自転車」となるため、現在の規制では自転車レーンを走行することはできないようだ。

そこで、glafitと和歌山市が規制のサンドボックス制度の認定を受け、2019年11月から和歌山市内の公道で実証実験を実施することとしている。安全上の懸念を払しょくし、規制緩和につなげる狙いのようだ。

現状規制に縛られているものの、こうした新たなモビリティの有用性と有望性に商機を感じるベンチャーの勢いと、新たな移動サービスの在り方を模索する国の動きがマッチしており、2020年は実証実験が本格化する年になるものとみている。ラストワンマイルを担う新モビリティの動向に注目だ。

■【まとめ】MaaS同士の競合も? 2020年は先々を見通す1年に

全国各地で実証が進められるMaaS。その成果や課題が2020年に浮き彫りになり、地域事情なども考慮しながら改良を重ね、着実に実用化に近づいていく年になりそうだ。

また、MaaS完成形の一つといえるWhimの上陸の影響も気になるところだ。MaaS Globalが今後日本国内でどのような展開を狙っているのか。場合によっては、同地域におけるMaaSアプリ同士の競合が始まる可能性も否定できない。

移動の選択肢が多い都市部では近い将来、複数のMaaSがサービス合戦を繰り広げる可能性もある。2020年は、こうしたMaaSの先々を見通す指標になる1年になりそうだ。

【参考】MaaSについては「MaaS(マース)の基礎知識と完成像を徹底解説&まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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