車をレンタルする際、店舗に車両を取りに訪れなくてもよく、好きな場所で乗り捨てできる——。そんな夢のようなサービスが、2021年中にも米ラスベガスで実用化される。サービスを運用するのは、自動運転技術開発のスタートアップ企業として知られる米Haloだ。
サービス提供においては、Haloに対して米通信大手のT-Mobileが次世代通信規格「5G」の通信サービスを提供し、遠隔運転で車両をユーザーのもとまで届けるという仕組みとなっている。車両の回収も遠隔運転で行う。
こうした仕組みのため、ユーザーは店舗に車両を取りに訪れなくてもよく、好きな場所で乗り捨てできるわけだ。両社はこの構想を2年前から持っていたようだ。言うなれば、「車両の無人デリバリーサービス」といったところか。
Haloはラスベガスを拠点に自動運転の技術開発を行っており、まずはラスベガスでサービスの導入が行われる。しかしその後は恐らく、全米へとサービスを拡大していく計画だとみられる。
■「超高速」「低遅延」の5Gを使って遠隔運転を実現
もう少し詳しくHaloの無人デリバリーサービスについて紐解いていこう。
発表によれば、レンタルを希望するユーザーは、アプリで自分が乗り降りしたい希望場所を指定し、リクエストを送信する。すると、ユーザーが指定した希望場所まで車両が遠隔運転で届けられる。
遠隔運転の際には、リモートオペレーターが車両に搭載された複数のカメラから送られる道路映像を見ながら運転を行う。この仕組みの構築に5Gが必要となる。
5Gは「超高速」「低遅延」といった特徴を有する。そのため5G通信を使えば、リモートオペレーターは道路映像をほぼリアルタイムに確認できる。映像送信に少しでも遅延が生じれば思わぬ事故につながる怖れがある。だから5Gでなければいけないわけだ。
そしてユーザーのもとに車両が届くと、ここからはユーザーがハンドルを握り、通常通り運転する。目的地に到着したら利用者はそのまま車を乗り捨て、運転は再び遠隔オペレーターの手に委ねられる。
そしてその後、車両はまた遠隔運転で次のユーザーのもとへ向かうか、もしくはHaloのガレージに戻るという。ちなみに同社は現在、公式ウェブサイトでサービスの希望者を募っている。
▼Halo公式サイト
https://halo.car/
■自動運転化を見据えているナンダクマールCEO
同じく自動運転技術の開発で知られるGoogle系WaymoやGM Cruiseといった企業は、人間による運転操作の介入を排除する完全自動運転化を目指している。Haloの方向性はこの両社とは異なるようにも見えるが、実はHaloが目指すところも完全自動運転化だ。
Haloのアナンド・ナンダクマールCEO(最高経営責任者)は今回のサービスの発表に伴い、「人間がハンドルを取り自動車を操作する裏で、車両は運転操作解析を繰り返し、時間をかけて自動運転レベル3相当の能力を獲得できるよう学習していく」と説明する。
つまり、いずれはHaloの車両に自動運転技術を搭載させることを計画しているわけだ。いまはその「つなぎ期間」で、将来的にはユーザーのもとまで車両が自律的に移動できるようにし、その後はもちろん自動運転タクシー化も見据えているのだろう。
また、ナンダクマールCEOは「完全なる自動運転化の実用には、十分な技術や社会の信頼を獲得する必要があり、まだ数年はかかる」と言及した上で、「まずはサービスの提供から始め、時間をかけてでも確実な自動運転技術の開発を目指していく」とも述べている。
■現段階ですでにユーザーにとって便利なサービス
今回発表されたHaloの車両の無人デリバリーサービスは、届ける過程を完全自動化させるまでの過渡期のサービスに過ぎないという見方があるものの、利用者にとって非常に便利なサービスとなることは間違いない。
早い段階からユーザーを集めておけば、自動運転化を果たしたあとの収益化も早期に実現しやすい。ナンダクマールCEOはそこまで見据え、いまサービスの提供を開始するのだろう。
【参考】関連記事としては「自動運転時代に花開く「つなぎビジネス」の先見性!」も参照。