「自動運転バス×顔認証」に秘める可能性 リピート客への割引運賃適用も可能に

流し営業のタクシーとの相性も抜群



日本国内でも将来本格的に普及が進むとみられる自動運転バス。乗車予約に応じてルートを最適化する「オンデマンド型」での運行だけではなく、現在の路線バスのような形態での運行も当然行われるようになると考えられるが、そこで活躍するのが「顔認証技術」だ。







将来、自動運転バスにダイナミックプライシング(変動料金制)が導入されるとして、顔認証技術で新規の乗客かリピーターの乗客かを判別できれば、例えば、バスに乗る頻度が高い乗客に対しては下車の際に割引料金を提示する、といった仕組みを構築することができる。

こうした割引の仕組みが構築できれば、バスを高頻度で利用する人が増えていくことにつながり、結果的に自動運転バスの運行事業者のマネタイズの一助となることが予想される。

そしてこうした顔認証技術の活用例は一例に過ぎず、「自動運転×顔認証技術」は今後大きなマーケットになると考えられており、すでに国内の実証実験でも顔認証技術を活用した取り組みが目立ち始めている。

■顔認証技術導入の試みが徐々に盛んに
BOLDLYが運賃決済を想定した顔認証システムを検証

ソフトバンク子会社のBOLDLYと神奈川中央交通は2021年2月、横浜市内で実施する自動運転バスの実証実験において、顔認証システムによる運賃決済を想定した仕組みの検証を行うことを発表した。

産業技術総合研究所が統括する国の中型自動運転バスによる実証実験の一環で、2月9日から約1カ月間にわたり、同市栄区内で走行する。公道に設置した3D-LiDARによる対向車両検知(IHI)や信号灯色情報の利用(コイト電工)、交差点におけるLED電光掲示板による危険予知・注意喚起(アークノハラ)、座席センサー・フロアセンサーの活用(トーヨーケム)、顔認証システムの検証(BOLDLY)が主な実証内容だ。

BOLDLYは、運転手がいない自動運転バスの運賃決済を顔認証で実現することを目指し、個々の乗客が乗降したバス停を自動で判別する検証を行う。

具体的には、乗車口と降車口付近に設置したカメラによって乗降時の乗客の画像を読み込み、位置情報と連携させることで各乗客の乗車区間を把握し、降車の際、降車口付近のモニターにその乗客の乗車区間を瞬時に表示する。

同社は、将来的にこのシステムと決済システムを連携させ、乗車距離に応じた運賃の決済を顔認証により実現することを目指すとしている。

埼玉県さいたま市や愛知県西尾市でも取り組み

このほか、埼玉高速鉄道や群馬大学、日本信号などが2019年9月に埼玉県さいたま市内で実施した自動運転バスの実証においても、事前登録した顔認証情報をもとに乗車を可能にする取り組みが行われたほか、2020年7月から実施された兵庫県三田市における中型自動運転バス実証(神姫バスなど)でも、完全キャッシュレス化を想定した顔認証システムの実証が行われている。

【参考】さいたま市での取り組みについては「バス運転手目線での検証も!埼玉で自動運転バスの実証実験」も参照。

2020年12月には、愛知県西尾市で実施された「自動運転社会実装プロジェクト推進事業-住宅団地・郊外モデル」の実証において、NTTドコモがあらかじめ登録された顔認証情報をもとに乗車時に共通ポイントを付与する取り組みを行っている。

顔認証できるサイネージポストをバス停に設置する取り組みも

MaaS関連では、つくばスマートシティ協議会が取り組む「キャンパスMaaS・医療MaaS」の実証実験において、顔認証を可能とするサイネージポストをバス停に設置し、これを活用したバス乗降時のキャッシュレス決済の実証実験や、バス乗降時の顔認証による病院受付や診療費会計処理サービスといった取り組みを行っている。

■流しのタクシーの車内でも顔認証技術は活用できる

こうした顔認証技術は、タクシーの車内でも活用できる。

現在のタクシーでは、配車アプリを通じた配車予約でなければその客が新規の客かリピーターなのかは判別にしくいが、顔認証技術を導入すれば流し営業の際に拾った乗客であってもそうしたことが判別でき、初めての乗客には次回運賃が10%オフになるクーポンコードを車載ディスプレイを通じて見せる、といったことが可能になる。これにより次回の乗車が促され、タクシー事業者の売上増に結びつく。

また車載ディスプレイを使った広告でも顔認証技術が生かせる。その乗客がリピーターであれば、前回車載ディスプレイで表示した広告とは別の広告を見せることも可能になる。顔認証技術で使用するカメラで性別や年齢層も識別すれば、より広告効果を高めるためにターゲティング広告も打てる。

■【まとめ】セキュリティ技術や匿名化技術の進化も必要

このように、モビリティの将来を考えるときに、顔認証技術が相性が良い。

ただし顔認証システムでは、乗客の個人情報保護の視点も重要になり、セキュリティ技術や匿名化技術もセットで技術が進化していく必要がありそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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