自動運転分野に注力!測量大手アイサンテクノロジー、最新決算資料を読み解く

高精度3次元地図の整備や実証実験を加速



撮影:自動運転ラボ

測量大手のアイサンテクノロジーが2021年3月期(2020年4月~2021年3月)決算を発表した。新型コロナウイルスの蔓延が利益を押し下げる格好となったものの、スマートシティや自動運転社会の実現に向けた取り組みは依然活発だ。

今後、自動運転技術が本格的な実用段階を迎えるとともに、同社の業績も大きく伸びていくことが予想される。この記事では、決算概要とともに同社の取り組みを解説していく。


■2021年3月期決算の概要

アイサンテクノロジーの2021年3月期の連結業績は、売上高が前期比16.5%減の35億8,900万円、経常利益は同51.1%減の2億4,200万円となった。

出典:アイサンテクノロジー決算短信

セグメント別では、測地ソリューションが売上高18億4,600万円(同9.0%減)でセグメント利益4億6,300万円(同9.8%減)、G空間ソリューションが売上高11億4,700万円(同31.3%減)でセグメント利益8,000万円(同72.6%減)、新規事業が売上高5億8,400万円(同0.9%減)でセグメント利益は1,300万円の赤字となっている。

出典:アイサンテクノロジー決算短信
測地ソリューション

測地ソリューションでは、主力製品「WingneoINFINITY」の最新バージョンによる収益があった一方、緊急事態宣言などの影響でテレワーク向けのライセンス販売が減少した。測量・土木分野の点群処理ツール「WingEarth」は販促活動の効果があり売り上げを伸ばした。

G空間ソリューション

G空間ソリューションにおいては、コロナの感染拡大により多くの商談が次年度以降への延期や中止となったという。MMS(モービルマッピングシステム)計測機器販売では、既存顧客への保守契約や性能向上に向けた受注、新規売上があった一方、前期に大型案件があった反動などにより、前年実績を大きく下回る結果となった。


高精度3次元地図関連事業

高精度3次元地図関連事業は、前期に自動運転分野における受注が堅調に推移したことから、仕掛案件への納品対応・売上があった。その一方、国内企業や自治体などにおける商談の一部が次年度以降へ延期や中止となったことに加え、海外案件も延期となり、売上実績は前期を下回る結果となった。

また、今後成長が見込まれる自動運転分野に向け、生産体制の強化や効率化など積極的な研究開発を進めた結果、販売費や一般管理費が増加している。

新規事業

新規事業では、自動運転分野で多くの企業や自治体などから実用化に向けた実証実験や自動運転車両の構築業務などを受注した一方、緊急事態宣言の発出に伴う実証実験の延期や中止、さらには世界的な半導体不足による納品延期などにより、売上が次期へスライドするなど損益に影響が及んだ。

なお、同事業分野は投資フェーズと捉えており、将来の事業活動に向けた先行投資として事業推進に必要な人材確保をはじめ、システム構築や機材などの投資を積極的に行っている段階だ。


■「中期経営計画 Investment & Innovation」の概要

アイサンテクノロジーは、決算発表とともに2021年度からの新たな3カ年計画「中期経営計画 Investment & Innovation」を公表した。

計画では、地理空間情報プラットフォームのもとネクスト事業の開拓・創出や、持続的成長を支える人財の採用と育成などを基本方針に据え、経営目標として以下の5点を掲げている。

  • 2024年3月期に営業利益7億円
  • Investment & Innovationの実施
  • 公共セグメントにおいて市場占有率を高める
  • 自動運転に関わる技術やノウハウを収益に変える
  • 新常態に適応したワークスタイルを確立

次期においては、セグメントを市場別に見直し、「公共セグメント」「モビリティセグメント」「その他」の3区分に変更する。モビリティセグメントは自動車関連やMaaS関連市場を主なターゲットに据え、MMS計測機器や3次元計測・解析業務の請負、自動運転システムの構築、自動運転の実証実験請負、衛星測位に係るサービス、3次元点群ソフトウェアなどを取り扱う。

国を挙げた取り組みが進む自動運転分野は実用化時期を2025年度としたさまざまな法改正や制度改正が進んでいるとし、モビリティセグメントにおいても2025年をターゲットに事業を推進しており、投資局面として高精度3次元地図の整備や実証実験、モビリティ開発やスマートシティ・スーパーシティプロジェクトへの参画などを進め、2025年度以降のビジネスモデルを構築していく構えだ。

また自動車メーカーがレベル2からレベル3に対応した車種を発売しており、高精度3次元地図も実用化フェーズに移行しているとし、市場のニーズに対応した高品質な3次元データの提供を進めていく。

モビリティセグメントにおける基本方針には以下の3点を据えた。

  • 2025年に向けモビリティ業界での成長戦略を推進
  • 2024年3月期のセグメント利益1億円をクリア
  • 2025年の自動運転サービスの実用化

また、主要施策として、以下の5点を掲げている

  • 自治体との連携で自動運転をビジネス化し収益獲得
  • 自社製品やソリューションを確立し収益性を向上
  • 地図作成の生産性を向上させ、市場競争力を向上
  • 3次元利活用プラットフォーマーとしての立場を確立
  • モビリティ分野への研究開発を推進

次期2022年3月期の連結業績予想は、売上高44億5,000万円(前期比24%増)、経常利益2億1,000万円(同13.4%減)を見込む。増収減益を予測しているが、これはまさに投資局面を反映した結果と言える。

中期経営計画3年目となる2024年3月期には、売上高55億円、営業利益7億円を達成し、投資段階から本格的なビジネス化へと転換していく構えだ。

■自動運転関連分野におけるこの1年の取り組み

同社は2020年4月、高精度3次元地図の計測事業強化と自動運転実用化に向け新拠点「アイサンテクノロジー モビリティセンター」を開設した。同年5月には、トヨタマップマスター、三英技研とともに、走行軌道生成装置や走行軌道生成方法、走行軌道生成プログラム、記録媒体に関する特許の取得、2021年5月には、損害保険ジャパン、ティアフォーとともにインシュアテックソリューション「自動運転向けデジタルリスクアセスメント」の開発・提供をそれぞれ発表している。

実証関連では、東京都の「自動運転技術を活用したビジネスモデル構築に関するプロジェクト」や経済産業省の地域新MaaS創出推進事業「塩尻型地域新MaaS×自動運転実証プロジェクト」、愛知県の事業「自動運転社会実装プロジェクト推進事業」、「しずおか自動運転Show CASEプロジェクト」、ティアフォーらと取り組む自動運転タクシーの実証実験、国土交通省スマートシティモデル事業におけるスマート・コミュニティ・モビリティ実証実験など、数々の実証に参画している。

コロナ禍による業績への影響は避けられなかったものの、自動運転の実用化に向けた取り組みは依然活発なようだ。

【参考】モビリティセンター開設については「自動運転実証「常連組」のアイサンテクノロジーが新拠点!3D地図の計測事業など強化」も参照。

■【まとめ】未来に向けた投資の成果はまもなく訪れる

未来に向けた投資を重ねている段階でコロナ禍を迎え、結果として減収減益となったようだ。中期経営計画によると、来たるべき自動運転時代に向け受け身になることなく前進していく印象で、今後への期待が膨らむ内容となっている。

海外では、LiDARなどのハードウェアをはじめ自動運転業界がビジネス段階に突入しつつある。日本も間もなく新たなフェーズに移行し、これまでの取り組みが業績に大きく反映されていく時代を迎えることになる。

次代を見据え積極投資を続けるアイサンテクノロジーの未来は大きく広がっているのだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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