テスラ、「日本のタクシー会社」を買収か?ロボタクシー展開なら

"営業権"を狙う可能性あり?



テスラのロボタクシー「Cybercab(サイバーキャブ)」のお披露目イベントが東京で幕を開け、大きな注目を集めているようだ。


ハンドルなどを備えない新規格の自動運転車両で、センサー山積みのWaymoの自動運転車両とは一線を画すスタイリッシュな仕上がりだ。

今のところ日本導入は計画されていないが、テスラジャパン代表取締役社長の橋本理智氏は「チャンスがあれば実施したい」と意欲をのぞかせている。FSDの日本展開に留まらず、楽しみはまだまだ続きそうだ。

しかし、日本でロボタクシーを展開するにはタクシー事業の許認可が必須となっており、自社完結型のテスラには重荷となる可能性がある。唯我独尊のテスラが、タクシー会社とパートナーシップを結ぶイメージがわかないのだ。可能性としては、タクシー会社を買収して営業権を取得する――といった手法だろうか。

営業権に焦点を当て、日本におけるロボタクシーの最新動向に迫る。


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■テスラの国内動向

サイバーキャブのお披露目イベントを開催

出典:Tesla

テスラジャパンは2026年9月、サイバーキャブの実車両を観覧できる「Cybercab Japan Tour」を東京、大阪、名古屋で開催している。

サイバーキャブは、人間が運転することを前提とせず、無人のロボタクシーとしてゼロから設計された2人乗りの車両だ。ハンドルやブレーキなどのペダル類を備えておらず、車内には大きなセンタータッチスクリーン以外余計な設えはない。

曲線が際立つボディは金色をまとい、バタフライドアには「Cybercab」のロゴがあしらわれている。テスラらしいスタイリッシュなデザインだ。無人運転前提のため、サイドミラーやリアウィンドウもない。

自動運転用に外付けカメラを8個搭載しているが、ぱっと見どこに付いているのかわからないほど目立たない。LiDARなどの他のセンサーも搭載していない。くるくる回転するLiDARをルーフ上に搭載したWaymoの車両とは見た目から異なるのだ。


米国ではすでに量産化が進められており、テスラが「モデルY」でロボタクシー事業を先行展開しているテキサス州オースティンで2026年9月から導入が始まっている。

ロボタクシーとしてはWaymoに大きく後れを取っており、現状自律走行性能・安全性も及ばないものと思われるが、エンドツーエンド(E2E)モデルによるAI自動運転である点や、テスラオリジナルの新規格車両である点などが大きな注目を集めている。

課題発覚・トラブル発生はしばらく尽きないかもしれないが、イーロン・マスク氏待望の自動運転車であり、テスラが自動車メーカーではなくテクノロジー企業として新たな一歩を踏み出すための世界戦略車にもなり得る。

その影響力の高さから、いやでも世界が注目する取り組みとなることは間違いないだろう。

まずはFSD実装、その次は……

マスク氏はおそらくロボタクシーの世界制覇を視野に入れているものと推測されるが、まだ稼働を開始したばかりのため、現状は北米展開で手一杯と思われる。

日本市場では、ロボタクシーの大前提となるFSDが未実装のため、まだまだ計画できる段階ではなさそうだ。

ただ、テスラジャパンの橋本社長は、サイバーキャブお披露目イベントにおいて「日本での展開について、チャンスがあれば実施したい。日本の法整備と我々の安全性、この二つの面を両立できた時にローンチしたい」と意欲を示している。

目下の目標はFSDの国内実装であることは間違いなく、FSDが日本でも実用化されれば、BEVシェアとともに海外輸入車メーカーシェアでも国内ナンバーワンの座を勝ち取る可能性が高まる。

テスラジャパンは販売網の拡大を推し進めており、そのネットワークは全国に広がり始めた。2025年の販売台数は前年比倍増しており、2026年もさらに倍増するペースで伸びている。

FSDはオーナーカーからデータを収集することができる。つまり、販売台数が増加すればするほどより多くのデータを収集でき、技術を向上させることができる。そう考えると、日本におけるテスラは、販売網の拡大→FSDの実装→販売数の大幅増加→技術向上→自動運転化――という道を歩むのではないだろうか。

日本のタクシー事業に立ちはだかる規制の壁

しかし、テスラのロボタクシー日本展開は、技術面以外にも大きな課題を抱えている。ずばり、規制だ。規制と言っても、自動運転に関する規制ではなく、タクシー運行に関する規制だ。

日本の法令では、ロボタクシーの運行も既存タクシーと同様に、旅客運送サービスの認可を受けたタクシー事業者でなければ営業できないのだ。

自動運転ラボを主宰する下山哲平も、2026年9月に出演したテレビ東京の経済報道番組「WBS(ワールドビジネスサテライト)」内で、「日本の法律では、タクシー会社が運行しなければ、有償サービスとして提供できない。そのためテスラ単体では実現できない」と指摘している。

Cybercab Japan Tourを取り上げたWBSは、橋本氏の「チャンスがあれば実施したい」という発言を受け、自動運転ビジネス専門家の下山氏に意見を求めたようだ。

番組ではさらに、テレ朝のアナウンサーが橋本氏のもとを訪れ、「タクシー会社と今後連携していく予定はあるのか?」と質問した。橋本氏は「今の時点ではない。ただ、今後将来に渡って正しく検討・検証し、世の中に広めるのに有用であれば検討したい」と回答している。

テスラが日本でロボタクシー事業を行うには、道路運送法に定められた一般乗用旅客自動車運送事業者にならなければならない。しかし、自ら事業許可を得るのはハードルが高く、運行エリアによっては規制上サービスを提供できないこともある。

であるならば、現役のタクシー会社と手を組み、運行管理を任せるのが最も効率的と言える。テスラがロボタクシーを供給し、パートナーシップを結んだタクシー会社が運行を行う形態だ。日本でロボタクシー事業を計画しているWaymoやWayveもそれぞれタクシー会社と提携しており、王道と言える手法だ。

Waymoは日本交通、Wayve×Uberは日の丸交通とタッグ

出典:日本交通プレスリリース

Waymoは2024年12月、日本交通と同グループ系列の配車サービス大手GOとパートナーシップを締結したと発表した。東京都内で開始する実証に際し、日本交通がWaymo車両の運転・維持管理を担い、それを支えるインフラも提供する。GOは、配車プラットフォーマーとしてサポートするとしている。

日本交通グループを束ねる川鍋一朗会長は、全国ハイヤー・タクシー連合会の会長も務める業界のドン的存在だ。企業規模も申し分なく、自動運転に対する理解も深い。Waymoは最高のパートナーを選択したと言っていいだろう。

2026年9月には、東京における自動運転タクシー商用化に向けた戦略的パートナーシップに正式合意したことも発表されている。2027年中に国内初となるロボタクシー運行を東京都内で実現する目標を掲げている。日本交通は、東京最大手のタクシー事業者として、現場における運行管理や営業所運営を担うという。

Wayveは米配車サービスUber Technologiesと手を組み、世界10都市以上でロボタクシーを展開する計画を発表している。このうち、日本では乗用車領域でWayveと提携する日産がロボタクシーでもパートナーとなり、車両を供給する。

2026年8月には、新たに日の丸交通との提携を発表した。2026年後半をめどに東京都内でロボタクシーの試験運行を始めるとしている。

日の丸交通は、ロボタクシーの運行主体として車両基地の運営や車両の清掃・整備・点検・充電、稼働状況の管理などを担うという。日の丸交通も車両認可台数1,000台超の大手で、過去、ZMP(現ROBO-HI)と自動運転タクシー実証を行った実績を有するなど、自動運転に積極的な一社だ。

このほか、事業は流れたものの、かつてホンダが米GM、Cruiseと計画していたロボタクシー事業でも、帝都自動車交通と国際自動車がホンダとパートナーシップを結んでいた。ホンダは引き続き水面下でロボタクシー事業を模索しており、タクシー会社との提携もまだ続いているのかもしれない。

ティアフォーも、データ収集などの面で日本交通と手を組んでいる。開発面では、早くからGOと協働しており、運行の際のパートナーも日本交通勢が有力視されそうだ。

テスラは有力大手と手を結ぶ?それとも買収に動く?

このように、日本におけるロボタクシー事業を計画している各社は、例外なくタクシー会社と手を結んでいる。タクシー業界としても、自分たち抜きでロボタクシー事業を展開することが可能になれば、猛反発し断固阻止に動くことは間違いない。現状、タクシー会社が運行に必要なカギを握っているのだ。

では、テスラが日本でロボタクシー事業を行う場合、パートナー候補にはどのような企業が挙がるのか。全国にネットワークを持つ第一交通産業や、東京で一大勢力を誇る大和自動車交通、関西の梅田交通グループなど、有力大手はまだ残っている。

ただ、テスラとしてはおそらく自前の配車プラットフォームを優先するなど、独自色・ブランドを重視する可能性が高い。主導権を譲るような真似はしないだろう。

であるならば、タクシー会社買収に動く可能性も否定できない。傘下に収め営業権そのものを手中に収める戦略だ。

国内スタートアップのnewmoは、ある意味この戦略を採用していると言える。テクノロジーを駆使してタクシー事業にイノベーションを起こそうと国内各地のタクシー会社を買収・事業承継して営業網を拡大している。

自動運転開発にも本格着手しており、将来、自前の営業網が生かされることになりそうだ。

テスラも買収に動くか気になるところだが、テスラの場合、既存のタクシー事業そのものに関心はないものと思われるため、ドライバーの大半は解雇……など、飲めない条件を付される可能性が高い。買収戦略も思うように進まないのではないか。

実は販売戦略が有力?

しかし、他社と異なる戦略でテスラが一気にサービスを拡大する可能性もある。「自動運転車両の販売」だ。マスク氏はサイバーキャブ発表に際し、「価格3万ドル(約480万円)を目指す」と発言していた。販売を視野に入れているとすれば、状況は大きく異なってくる。

Waymoなど先行各社は今のところ自動運転車両を他社に販売する手法を採用していない。おそらく、管理・メンテナンス面などにおける不安を解消しきれないためと思われる。

しかし、テスラの場合、トラブルは後から解消すればよい……とする経営思想があるように感じられる。慎重に動くよりも、アジャイルな開発と実装で事業を進めていく戦略だ。そもそも、自家用車の自動運転化を目論むことに比べれば、事業者向けに自動運転車を販売する方がハードルは低い。

そう考えると、テスラのロボタクシーは「販売戦略」が軸となるのではないだろうか。タクシー会社がサイバーキャブを買い取り、またはリースにより導入し、それぞれがサービス展開する形だ。テスラは、車両とともに専用の配車プラットフォームを提供し、継続的に利益を得るビジネスだ。

日常メンテナンスもタクシー会社が担い、有事の際はテスラが対応する。サポート体制の構築がカギとなるが、この手法こそがテスラにはふさわしいのではないだろうか。

■【まとめ】ロボタクシーは将来パートナーシップ型から販売型へ移行する?

Waymoなどの先行勢と異なり、テスラは自動車メーカーであるため、車両とシステムを一体的に開発し、トータルコストを抑えることができる。自動運転車両そのものを商品化するハードルが低いのだ。

欧州など、日本以外にもタクシー営業権を重視している国は少なくない。自動運転車の安全性に目途が立ち、開発事業者の手を離れても運用できる体制が構築されれば、パートナーシップ型から販売型への移行が本格化することも考えられる。

テスラがこのシフトに先鞭をつけることになるのか、引き続き動向に注目したい。

【参考】関連記事としては「テスラの自動運転機能(FSD)とロボタクシーを徹底解説」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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