中国 自動運転「国家5カ年計画」を発表 世界初の安全重視へ

新規許可停止から一転「大量展開」へ



中国政府が、自動運転車の普及を国家目標として明確に打ち出した。2026年9月11日、中国工業和信息化部(MIIT)など9省庁が共同で発表した「第15次5カ年NEV産業発展計画」は、2030年までに自動運転車の大量展開を目指すとともに、商業承認の条件として世界初の人間ドライバーを大幅に上回る安全性能の達成を求めた。


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■自動運転「国家5カ年計画」、世界初の安全重視

第15次5カ年NEV産業発展計画は、2026年から2030年までの中国の新エネルギー車(NEV)産業政策を包括的に定めたものだ。中国工業和信息化部(MIIT)、国家発展改革委員会、公安部など9つの政府機関が共同で策定し、2026年9月11日に発表した。

計画の柱の一つが、自動運転車の大量展開である。高速道路や都市高速道路、一部の市街地道路での自動運転車の本格的な普及を2030年までに目指す方針を打ち出した。ただし、大量展開そのものについて具体的な普及率や台数などの数値目標までは設定されていない。あくまで国家戦略としての方向性を示したものだ。

一方で、自動運転システムの商業承認については明確な条件が加わった。人間ドライバーの運転能力を大幅に上回る安全性能を達成することが求められる。数値目標なき普及拡大の前提として、世界初となる安全性を位置づけた形だ。

【自動運転ラボの視点】
中国が数値目標なき目標表明にとどめず、安全性能の基準や法的責任の所在まで同時に明文化した点は世界的にも異例だ。規制整備と普及支援を両輪で進める姿勢は、日本を含む各国の自動運転政策の設計にも影響を与えていくだろう。

【参考】関連記事としては「中国 DiDiが完全無人の自動運転レベル4専用ロボタクシーを発表」も参照。


■責任の所在を明確にする法整備も同時に進行

自動運転の普及を後押しする一方、責任の所在を明確にする法整備も同時に進んでいる。8月に開催された全国人民代表大会(全人代)常務委員会の会議では、道路交通安全法の改正案が初めての審議に入った。改正案には自動運転車に関する特別な章が新設され、自動運転機能を作動させた状態で交通違反が発生した場合、その処理は車両の生産企業または輸入企業が引き受けると規定した。

なお、自動運転機能を作動させていない車両や、運転支援機能にとどまる車両については、従来どおり通常の車両として扱われる。今回の改正が対象とするのは、あくまで自動運転機能作動中の交通違反行為の処理であり、交通事故による損害賠償や刑事責任のすべてを自動的にメーカー側へ転嫁するものではない点には注意が必要だ。

第15次5カ年NEV産業発展計画が掲げる安全性能の要件と、道路交通安全法改正案による責任の所在の明確化が組み合わさることで、自動運転を巡る国家レベルの法的枠組みが一段と具体化した。

【参考】関連記事としては「テスラ事故の運転手逮捕、「自動運転車にも責任ある」と提訴」も参照。


■新車乗用車における自動運転レベル2の搭載率はすでに70%に

第15次5カ年NEV産業発展計画は、2030年までに新車販売に占める新エネルギー車の比率を、乗用車で70%、商用車で40%に高める目標も掲げている。あわせて、乗用車の平均燃料消費量を100キロメートルあたり3.3リットルに抑える目標や、バッテリー電気自動車の平均電力消費量を100キロメートルあたり約11.5キロワット時に抑える目標も盛り込まれた。

普及の現状を示すデータも明らかになっている。7月に北京で開催された2026世界智能網聯汽車大会のメディア円卓会議で、中国工業和信息化部装備工業一司の郭守剛司長は、乗用車新車における自動運転レベル2の搭載率が70.5%、ナビゲート機能付き運転支援(NOA)の搭載率が34.2%に達したと明らかにした。

また同月末には、全国で発行された自動運転の実証走行ライセンスが累計2万件を超えたこともMIITから発表されている。これらは第15次5カ年計画そのものの数値ではないが、計画が掲げる目標の土台となる普及状況を示すものだ。

■自動運転の新規許可停止から一転「大量展開」へ

中国の自動運転政策は、この1年余りで大きく揺れ動いてきた。2026年3月末に武漢で百度のロボタクシーサービス「Apollo Go」の車両が路上で相次いで停止するトラブルが発生したことが引き金となり、2026年5月には、中国政府が自動運転の新規ライセンス発行を無期限で停止した。そのため新たな車両の増車や新規テストプロジェクトの開始、新都市への展開が事実上できなくなった。既存サービス自体は継続されていたものの、業界には慎重ムードが広がっていた。

それから半年足らずで、中国政府は一転して自動運転の大量展開を国家目標に掲げるまでに至った。新規許可の停止という慎重路線から、安全基準と法的責任の明確化を条件に普及を後押しする路線への転換である。規制を緩めるのではなく、安全性能と責任の所在という土台を整えたうえで普及を進めるという、中国なりの段階的なアプローチが見えてくる。

【参考】関連記事としては「中国政府、自動運転を「全てストップ」 百度が原因か」も参照。

中国政府、自動運転を「全てストップ」 百度が原因か

■「国家5カ年計画」が問う自動運転の次のステージ

第15次5カ年NEV産業発展計画と道路交通安全法改正案は、自動運転の普及と安全性の担保を同時に進める、中国としての国家戦略を体現するものだ。

数値目標なき大量展開の方針、人間を上回る安全性能という世界初の商業承認条件、作動中の違反処理をメーカーが担うという責任の枠組みだ。

新規許可停止という慎重な時期を経て、安全性と責任の所在を明確にしたうえで大量展開を目指すという中国の姿勢は、自動運転タクシー市場やロボタクシー市場を巡る各国の制度設計にも一つの参照点を提供するだろう。日本を含む各国が自国の安全基準や法的責任のあり方をどう定めていくか、中国の動向は今後も注視する価値がある。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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