中国の自動運転車、異次元のスピード8ヶ月で量産体制へ

技術を売る「イネーブラー型」戦略とは



中国EV大手のXPeng(シャオペン)が、ロボタクシー計画の発表からわずか8ヶ月で社内テストにこぎ着けた。会長兼CEOの何小鵬が自ら最初の乗客となり、配車から乗車、目的地到着までの全行程を完走してみせた。


テスト開始は2026年7月10日。舞台は中国広州である。使用する自動運転車は同社が自社開発したTuring AIチップ4基と、視覚言語行動を統合したVLA 2.0モデルを搭載し、LiDARやHDマップに頼らない純視覚方式で走る。XPengはこの動きを、スマートEVからロボット車両へと軸足を移す重要な節目と位置づけている。

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■8ヶ月で量産体制は異次元のスピード

XPengのロボタクシーが、計画発表からテスト開始まで8ヶ月で駆け抜けた。

時系列を追うと、そのスピードが際立つ。2025年11月のAI Dayでロボタクシー計画を発表。2026年1月に広州で自動運転レベル4の公道テスト許可を取得し、定例の公道走行に入った。3月にはロボタクシー事業部を設立。5月18日には量産1号車が広州の工場でラインオフした。そして7月10日、社内向けのクローズドベータを開始し、配車から乗車までの全工程を一本につないでみせた。試作の披露ではなく、量産ラインに車を乗せたうえでのテスト開始である。

何小鵬はWeiboに、自身が最初の利用者になった様子を投稿した。オフィスの下で配車し、乗り込み、着席し、出発するまでが一連の流れとしてなめらかにつながったという。当初の想定を上回るペースだったことも本人が認めている。ここでいう異次元のスピードとは、発表から量産・テスト到達までの一連の工程を8ヶ月で走り切った事実そのものを指す。


【自動運転ラボの視点】
試作ではなく量産ラインに乗せたうえでのテスト開始という点が異次元。チップとAIと車両を一体で囲い込む手法は、ロボタクシーの量産コストを左右する。中国勢が量産フェーズに入った意味は大きい。

Googleロボタクシー「1万台が中国製」に?日本は「敗戦」確定か

■Turingチップ4基とVLA 2.0、純視覚方式という設計判断

XPengのロボタクシーは、頭脳から目に至るまで自社の技術でそろえている。中核を担うのが、同社が自社開発したTuring AIチップだ。ロボタクシー車にはこのチップが4基積まれ、量産車として世界最高水準となる3,000TOPSの車載演算能力を実現している。


走行の判断は、視覚言語行動を統合したVLA 2.0モデルが担う。特徴は、LiDARやHDマップを使わない純視覚方式を採ったことにある。カメラで捉えた情報だけで周囲を読み、判断する設計だ。ベース車両はXPengのフラッグシップSUV「GX」で、中国のメーカーがソフトからチップ、車両までを一貫して自社開発し量産にこぎ着けたロボタクシーは、これが初めてとなる。

純視覚という選択は、XPeng独自の設計判断である点に注意したい。自動運転タクシー市場全体が純視覚に方向をそろえているわけではなく、競合の中にはLiDARの採用を進める動きもある。センサー構成をめぐる考え方は、各社で今なお分かれている。

【参考】関連記事としては「中国 右ハンドル自動運転車を開発へ 狙いは日本か」も参照。

■自社では運行しない、技術を売る「イネーブラー型」戦略

XPengのロボタクシー戦略には、際立った特徴がある。自ら配車車隊を運営するのではなく、ソフトウェアとハードウェア、AIの仕組みを地元のパートナーに供給する立場を取るのだ。いわば技術の供給役に徹する「イネーブラー型」である。

この選び方には狙いがある。自社で車隊を保有し運行すれば、多額の維持費と、地域ごとに異なる規制への対応という重い負担がのしかかる。XPengはそこを外部のパートナーに委ね、自らは技術基盤の提供に集中することで、その負担を避けようとしている。ロボタクシー市場で先行するWaymoやBaiduのApollo Goが自社で車隊を保有し運行しているのとは、対照的な構えだ。

この戦略を裏づける動きもある。独VW(フォルクスワーゲン)が、XPengの運転支援システムVLA 2.0を採用する初の外部顧客となった。技術を外に供給して稼ぐという構想が、すでに具体的な形を取り始めている。

■広州から欧州・中東・東南アジアへ、グローバル展開の道筋

XPengは、広州をモデル都市と位置づけている。2026年中にここで試験運行と定例のデモ運行を実現し、運用の経験を積み上げる計画だ。

広州で得た運用ノウハウは、そのまま世界へ横展開する構想を描いている。実際、XPengはすでに欧州、中東、東南アジアでの提携を模索していることを明らかにした。イネーブラー型の戦略と重ねれば、各地のパートナーに技術を供給しながら面を広げていく青写真が見えてくる。

さらに先の工程表も示されている。ロボタクシーを動かす仕組みを外部の開発者に開放するSDK(ソフトウェア開発キット)を用意し、アリババ系の地図アプリAmap(高德地図)が初のグローバルなエコシステムパートナーとなる。加えて、2027年初頭には安全監視員を乗せない完全な無人運行を目指すとしている。ただし具体的な提携先や台数はなお模索の段階にあり、今後の発表を待つ必要がある。

■日本は異次元のスピードに追いつけるのか

8ヶ月というスピードは、確かに異次元である。ただし、それが意味するのはあくまで開発と量産の速さであって、運用の成熟度とは別の話だ。ここを分けて見ておきたい。

運用の実績という軸で見れば、先行勢との差はなお大きい。Waymoは2025年12月時点で累計2,000万回を超える有料乗車を記録し、2026年3月には週50万回を突破している。BaiduのApollo Goも2026年4月時点で累計2,200万回超、世界27都市に広がる。いずれも実路上で膨大な走行データを積み上げてきた蓄積がある。テストを始めたばかりのXPengが、この運用の厚みを一足飛びに埋められるわけではない。

それでも、中国のメーカーが自前で量産フェーズに入り、8ヶ月で全工程をつないでみせた事実は、自動運転タクシー市場の競争構図を確実に動かす。開発の速さでは中国勢が世界を驚かせ、運用の成熟度では米国勢が先を走る。この二つの軸がどう交わっていくのか。日本勢を含む各国のプレーヤーは、異次元のスピードで走り出した中国勢という現実に、どう応えるかを問われている。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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