
ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ傘下の巨大食品流通が、トラックから運転手を降ろした。2026年5月6日、全米最大級の流通企業McLane(マクレーン)が、Aurora(オーロラ)の自動運転トラックで完全無人の商業輸送を開始したと発表したのだ。運ぶのは、チェーンレストランに届けるための食材である。
舞台はテキサス州のダラス〜ヒューストン間。週7日、自動運転トラックが食材を積んで往復する。安全運転手は乗らない完全無人のトラック輸送だ。2023年からのパイロットで28万マイルを走り、1,400便を納期100%で届けた実績を踏まえての本格運用である。投資の神様の会社が選んだのは、人間が運転しない物流だった。
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■バークシャー傘下の巨大物流が「完全無人トラック」を選んだ
AuroraとMcLaneは2026年5月6日、テキサス州で完全無人の商業輸送を開始する合意を発表した。McLaneはウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイの完全子会社である。1894年創業、130年を超える歴史を持つ全米最大級の流通企業だ。配送センターは全米に80カ所超、従業員は2万5000人を超え、ほぼすべての郵便番号エリアに荷物を届ける。
運ぶのは、チェーンレストランやコンビニ、量販店に向けた食材や生鮮品である。アメリカの名だたる外食ブランドの裏側を支える物流の動脈が、人間の運転を前提としない形へと切り替わった。舞台はダラス〜ヒューストン間。自動運転タクシー市場で先行する米国は、長距離トラック輸送でも無人化の実装段階に入りつつある。

注目すべきは、この決断を下したのが堅実経営で知られるバークシャー傘下だという点だろう。派手な新技術への賭けではなく、コストと効率を見据えた経営判断として完全無人トラックが選ばれた。自動運転物流が投資対象として現実味を帯びてきたことを、この一件は静かに示している。
堅実投資で知られるバークシャー傘下が完全無人輸送を選んだ意味は大きい。自動運転トラックはもはや実験ではなく、採算が見込める事業段階に入った。人を消すのではなく役割を移す転換と捉えるべきだ。
【参考】関連記事としては「自動運転トラック、ついに無人で長距離輸送230マイルを走り切る」も参照。
■人間なしで何が変わるのか。「中間は機械、最終は人」というハイブリッド
今回の運用は、すべてを機械任せにするものではない。長距離の中間輸送はAuroraの自動運転が担い、顧客への最終配送はMcLaneのドライバーが受け持つ。ダラスとヒューストンのターミナルで、機械から人へとバトンが渡される設計だ。使用技術はSAEレベル4の自動運転システム、Aurora Driver(オーロラドライバー)である。
ここで「完全無人」という言葉の意味を正確にしておきたい。運転を代われる安全運転手は乗っていない。一方で、トラックメーカーPaccar(パッカー)との取り決めにより、運転操作を行わない人間の観察者はキャブに同乗している。つまり運転からは人間が外れたが、車内が無人になったわけではない。
この役割分担には合理性がある。単調で長時間に及ぶ幹線輸送は機械が得意とし、きめ細かな対応が必要な最終配送は人間が担う。人を排除するのではなく、人と機械が得意分野で住み分ける。自動運転トラックの現実的な実装の形が、ここに表れている。
【参考】関連記事としては「自動運転トラックとは?開発企業は?【実用化時期・メリットも解説】」も参照。
■28万マイルの実績が「実験」を「事業」に変えた
無人化への移行は、いきなり始まったわけではない。両社は2023年から監視付きのパイロットを重ねてきた。その間にAurora Driverはテキサスで28万マイルを走行し、1400便を運んだ。納期の達成率は100%だった。この実績を踏まえて、McLaneはダラス〜ヒューストン間の無人運用を承認した。
Auroraは年内に、米サンベルト地域にあるMcLaneの配送センター間へと運行ルートを広げる計画だ。さらにAuroraは、自動運転トラックを開発する企業から、運行で収益を上げる商業事業者へと軸足を移しつつある。砂を運ぶDetmar Logistics(デットマー)向けの案件も走っており、取り組みは一社との一区間にとどまらない。
加えて、トラック運送のHirschbach Motor Lines(ヒルシュバック)がAuroraのトラック500台を購入する方向で合意した。こちらは基本合意の段階で、年内の正式契約を見込む。点だった自動運転トラックの導入が、面として広がり始めている。実験のフェーズはすでに過ぎ、採算の取れる事業へと移行したと言える。
【参考】関連記事としては「時価総額1兆円超え、トヨタ出資トラック大手アーチオン上場で自動運転が加速」も参照。
■日本の物流は大丈夫か。ドライバー不足と自動物流道路
では、日本の物流はどうだろう。日本はトラックドライバー不足が深刻だ。トラックドライバーの有効求人倍率は2025年4月時点で2.51倍に達する。さらに、時間外労働の上限規制が始まったことで生じる、いわゆる物流の2024年問題も重い。対策を講じなければ、輸送能力は2024年度に約14%、2030年度には約34%が不足する可能性があると国土交通省は試算する。
この危機に対し、日本も中間輸送の自動化へと動いている。国土交通省が構想する自動物流道路、オートフロー・ロードがそれだ。道路空間や地下に物流専用のスペースを設け、荷物そのものを自動で運ぶ。2025年7月に最終とりまとめが公表され、2030年代半ばに東京〜大阪間の一部区間での導入を目指す方針が示された。
実現すれば、将来不足する輸送量の約8〜22%をカバーし、ドライバー約2万〜5万7000人分の労働を代替できるという。幹線は自動化し、端末は人が担う。この発想は、米国McLaneの「中間は機械、最終は人」というハイブリッドモデルと驚くほど近い。日米はアプローチこそ違えど、同じ方向に進しようとしている。
【参考】関連記事としては「【国内初】化学業界で自動運転トラック開始!定期輸送は約520kmも」も参照。
■まとめ:バフェットの「完全無人トラック」が映す、物流の本番
堅実なバークシャー傘下が完全無人トラックを選んだ事実は、自動運転物流が一過性の話題ではないことを物語る。28万マイルの実績が実験を事業へと変え、Auroraは開発企業から運行企業へと姿を変えつつある。米国の自動運転トラックは、いよいよ本番を迎えた。
では日本の物流は大丈夫か。ドライバー不足と2024年問題という重い課題を前に、日本も自動物流道路という独自の解を描いている。米国のハイブリッドモデルと発想は近く、進むべき方向は見えている。問われるのは、雇用や規制、社会の受け止めという残された論点を、どう乗り越えるかだ。
完全無人トラックは、人を消すための技術ではない。単調な幹線を機械に委ね、人はより価値の高い仕事へ向かう。その役割の移し替えをどう設計するか。バフェットの会社が選んだ一台のトラックは、日本にもその問いを投げかけている格好だ。













