自動運転開発を手掛けるグーグル系Waymoが、1年4カ月ぶりとなる資金調達を発表した。新たに約160億ドル(約2兆5,000億円)の調達で、企業評価額は約1,260億ドル(約20兆円)に達した。
アルファベット傘下とは言え、未上場で評価額20兆円超という数字は驚きだ。日本企業と比較すると、その額はソニーグループや、ユニクロを展開するファーストリテイリングと同規模、三菱商事などの総合商社を超える額となる。
自動運転タクシーの世界市場は、今後5年間で急拡大し、少なくとも約1,200億ドル規模(約20兆円)へと膨張すると考えられており、この巨大な商機を狙った投資マネーがWaymoに流入しているわけだ。
Waymoの資金調達をはじめ、自動運転業界の企業評価額について考察する(記事監修:自動運転ビジネス専門家 下山哲平)。
■Waymoの資金調達
160億ドルを新たに調達
Waymoに今回資金を出した企業はどんな面々なのか。
発表によると、160億ドルに上る最新の資金調達ラウンドでは、以下から資金提供を受けた。
- Dragoneer Investment Group
- DST Global
- Sequoia Capital
- Andreessen Horowitz
- Mubadala Capital
- Bessemer Venture Partners
- Silver Lake
- Tiger Global
- T. Rowe Price
- BDT & MSD Partners
- CapitalG
- Fidelity Management & Research Company
- GV
- Kleiner Perkins
- Perry Creek Capital
- Temasek
▼Accelerating our global growth: Waymo raises $16 billion investment round
https://waymo.com/blog/2026/02/waymo-raises-usd16-billion-investment-round
Waymoはこれまで、2020年のシリーズAでアルファベットやマグナインターナショナル、オートネーションなどから計30億5,000万ドル、2021年のシリーズBで25億ドル、2024年のシリーズCで56億ドルをそれぞれ調達している。シリーズC時点での企業評価額は450億ドル(約7兆円)超だった。
意外と見るかどうかは見解が分かれそうだが、参加企業の大半は投資会社で、自動車メーカーをはじめとする業界からのシリーズ参加者は非常に少ない。
出資しているティア1サプライヤーのマグナは、Waymoが仕入れた自家用車に自動運転システムを統合する自動運転車両の製造面でパートナーシップを結んでおり、自動車小売のオートネーションはメンテナンスや修理面でパートナーシップを結んでいる。
今回の資金調達でも投資会社が中心となっている。この辺りはやはり通常のスタートアップと異なるところだろう。
Fortune Business Insightsが発表した市場予測レポートでは、2022年時点のロボタクシーの市場規模は約17億ドルで、2031年にかけて約80%の複合年間成長率(CAGR)を伴いながら、2031年には1,200億ドル規模になるという。
▼ロボタクシー市場規模、シェア、分析、統計、レポート、2031年
https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/%E3%83%AD%E3%83%9C%E3%82%BF%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%BC%E5%B8%82%E5%A0%B4-103661
【参考】関連記事「Googleの自動運転部門、時価総額が「ホンダ級」に!評価額6.8兆円規模」も参照。
20兆円規模は日本市場で7位相当
評価額20兆円とのことだが、どれほどの規模なのか。国内市場に上場する日本企業と比較すると、2026年2月8日時点では、ソニーグループやユニクロを展開するファーストリテイリングが同規模となる。
ちなみに時価総額国内トップはトヨタ自動車で約59兆円、2位は三菱UFJフィナンシャル・グループの約35兆円、3位には日立製作所が約24兆円で続いている。
米国市場では90番目付近
さすがに日本と米国では投資水準が異なり過ぎる。では、米国市場ではどれほどの位置付けになるのか。以下は時価総額ランキングだ。
- 1位:NVIDIA 4兆6,000億ドル
- 2位:アップル 3兆8,000億ドル
- 3位:マイクロソフト 3兆2,000億ドル
- 4位:アマゾン 2兆5,000億ドル
- 5位:アルファベットA(議決権あり) 2兆ドル
- 6位:アルファベットC(議決権なし)1兆8,000億ドル
- 7位:テスラ 1兆6,000億ドル
Waymoの時価総額は、米国市場で90番目付近に値する。今のところIPO(新規株式公開)の計画は発表されていないが、機は熟し始めているのではないだろうか。上場時、どこまで価値を高めているのか要注目だ。
なお、参考までに、世界最大のスタートアップOpenAIは企業価値5,000億ドル(約77兆円)と言われており、すでに米国市場で17番目ほどの水準に達している。OpenAIはすでにトヨタを抜き去っているのだ。ブーム的要素が含まれているとしても、やはり米国勢の資金調達は文字通り桁が違うようだ。
■自動運転の企業有力組は1兆円超を達成
では、他の自動運転スタートアップはどのような水準なのか。
過去の有力組(事業停止済み)では、GM傘下Cruiseは2021年のピーク時に評価額300億ドル(約3兆1,000億円)とされていた。フォードなどから出資を受けていたArgo AIは124億ドル(約1.8兆円)と評価されていた。
バックボーンが強力なため……とも言えそうだが、名だたる自動車メーカーが欲しがる技術力があったからこそ高い評価を受けたことに変わりはない。
あくまで日本円換算だが、1兆円超は一つのマイルストーンと言える。現役スタートアップの中にも、1兆円突破が見えてきた企業が出始めている。
英WayveはシリーズCまでのラウンドで計13億ドルを調達しており、2025年秋にはマイクロソフトやソフトバンクグループと最大20億ドル(3,100億円)の資金調達に向け交渉を進めていることが報じられている。この調達が成功すれば、同社の企業価値は約80億ドル(約1兆2,400億円)規模に達するという。
同社にはソフトバンクグループが出資しており、日産ともパートナーシップを交わしている。エンドツーエンドの自動運転モデル開発を早くから進めており、投資面、サービス面などさまざまな観点から今後注目度が高まることは間違いない。
【参考】関連記事「ついに自動運転に「巨額の孫マネー」流入か!英Wayveに大興奮」も参照。
アマゾン傘下の米Zoox
アマゾン傘下の米Zooxは、2020年に買収されるまでに9億5,500万ドルを調達しており、買収額は12億ドル超(約1300億円以上)とされている。2025年の評価額は32億ドル(約5,000億円)と言われている。
オリジナル設計の自動運転タクシーサービスを2025年に開始しており、今後の展開に注目が集まる一社だ。
米Nuroは、これまでにソフトバンク・ビジョン・ファンドなどから計23億ドルを調達している。2025年のシリーズEには、Uber TechnologiesやNVIDIAも参加している。シリーズEでは、評価額が60億ドル(約9,300億円)に達したことを発表している。
Nuroは中速中型タイプの自動配送ロボット開発で知られるが、近年は人の移動の無人化にも注力しており、Uber Technologiesと新興EVメーカーのLucid Groupと手を組み、自動運転タクシーの開発・実装を進めている。UberがNuroの自動運転システムのライセンスを取得し、Lucidの車両に統合して世界展開を図る計画だ。2026年中に実用化し、米国をはじめ世界の数十の市場に2万台以上の自動運転タクシーを展開していくとしている。
すでにシリーズEに達しており、自動運転タクシーの動向次第では大型IPOが実現する可能性もありそうだ。
【参考】関連記事「Uber、日本に3000億円の巨額投資!自動運転タクシーでGOに対抗か」も参照。
カナダのWaabi
自動運転トラック開発を手掛けるカナダのWaabiは、2026年1月のシリーズCまでに計10億ドル超を獲得しており、企業評価額は30億ドル(約4,600億円)と言われている。
米Avrideは、2025年のコーポレートラウンドでUber Technologiesなどから3億7500万ドル(約580億円)を調達した。企業評価額は不明だが、ロシア系Yandexを起源とする有力企業だけに、今後の動向に注目が集まる。
米Tensorもポテンシャルが高い。中国系AutoXの米国部門が独立する形で2025年ごろに急に表舞台に出始めた。パーソナル用途、つまりレベル4自家用車の開発を手掛けており、すでに量産化に向けた取り組みを進めている。CES2026などでロボカーモデルも公開されている。
AutoXは中国で自動運転タクシーを実現した実績を誇る。LyftはTensorのロボカー数百台を2027年にも導入する計画という。また、デンマークのカーシェア事業者GreenMobilityと同国で2,000台規模のフリートで自動運転カーシェアサービスを展開するパートナーシップも結んだという。
AutoXはこれまで2億7700万ドルの資金調達を行ってきたが、TensorはIPOに向けた準備を進めていることが報じられている。市場からどのような評価が下されるか、要注目だ。
米May Mobility
米May Mobilityは、これまでに計3億960万ドル(約480億円)を調達している。日本企業のようにスモールスタートで堅実に前進している印象で、トヨタをはじめとする保全勢からの出資も非常に多い。
当初は自動運転シャトルの開発が中心だったが、徐々に自動運転タクシーにシフトしているような印象だ。ルールベースではなく、独自運行システム「Multi-Policy Decision Making(MPDM・自動運転意思決定AI)」による自動運転システムは、リアルタイムでオンボードシミュレーションを継続的に実行し、毎秒何千もの可能なシナリオを仮想的に想像して自ら安全な行動を選択できるという。
ある意味、日本のスタートアップの参考になりそうな企業と言える。
上場組は1兆円に迫る規模
新興勢のくくりで、上場済みの企業も見ていこう。2021年にナスダック市場に上場した米Aurora Innovationの時価総額は65億ドル(約1兆円)となっている。
中国WeRideはナスダック市場で26億ドル(約4,000億円)、Pony.aiは47億ドル(約7,300億円)となっている。両社はそれぞれ香港市場にも重複上場しているが、こちらの時価総額は不明だ。
日本勢は数百億円規模
日本勢では、ティアフォーが2024年のシリーズBまでに381億円を調達している。2025年には三井住友銀行、三井住友信託銀行と計30億円規模の融資契約を結んでいる。Crunchbaseのデータでは累計4億7130万ドル(約730億円)とされている。
Turingは2025年のシリーズAで約153億円を調達した。Crunchbaseのデータでは、シードラウンド含め累計223億円とされている。
【参考】関連記事「自動運転エンジニア社長のティアフォー、資金調達で「日本1位」に!2024年1〜6月調査」も参照。
■自動運転市場のポテンシャル
自動運転市場はまだまだ序の口
日本では数百億円規模の資金調達でトップレベルとなるが、米国では数千億円規模がゴロゴロ存在する。期待度の高い企業に至っては1兆円超も珍しくないようだ。
Waymoの20兆円は、グーグル(アルファベット)というバックボーンがあってこそ……であることも否めないが、これが自動運転業界のポテンシャルとも言えるだろう。
言わずもがな、Waymoは自動運転開発競争の火付け役であり、レベル4自動運転サービスのパイオニア的存在でもある。
2018年にアリゾナ州フェニックスで自動運転タクシーの商用化を実現して以来、カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリア、ロサンゼルス、テキサス州オースティン、ジョージア州アトランタ、フロリダ州マイアミでサービスを実装している。
2025年ごろからサービス展開を加速しており、今後、テキサス州ダラス、ヒューストン、サンアントニオ、カリフォルニア州サンディエゴ、コロラド州デンバー、ミシガン州デトロイト、フロリダ州オーランド、ネバダ州ラスベガス、テネシー州ナッシュビル、ワシントンD.C.への拡大を計画している。
英ロンドン、日本の東京への進出も計画中で、左側走行など北米と異なる交通環境への対応など進め、世界展開を加速していくものと思われる。
【参考】関連記事「Googleの自動運転タクシー、東京で来年展開か」も参照。
完全自動運転による実走行は1億2,700万マイル(月往復260回以上)に達し、累計乗車回数は2,000万回超となった。2025年の年間乗車回数は1,500万回に達しており、商業面・収益面を考慮するとIPOもそう遠い未来の話ではないかもしれない。
現時点で20兆円の評価を受けているが、北米全域規模に拡大した際やグローバル展開が本格化した際など、その評価はどこまで上がるのか。今のところ天井知らずの状況と言えるだろう。
また、自動運転開発の現場は、これまでのルールベースからエンドツーエンド(E2E)モデルへのシフトが進み始めている。このE2Eモデルが実用化されれば、本格的な自動運転時代が到来し、無人移動とさまざまなサービスを掛け合わせた新産業が次々と生まれることが予想される。
自動運転市場はまだまだ序の口の段階であり、近い将来望外な成長を遂げるのだ。
【参考】関連記事「自動運転モデル「ルールベース」「E2Eモデル」とは?」も参照。
■【まとめ】自動運転のポテンシャルは未知数
自動運転市場が一大産業へと変貌するとき、Waymoや、Waymoを追いかける各企業の評価額はどのような数字となっているのか。そのころには、企業価値ランキングでトップ争いを続けるGAFAMなどの位置付けも変わっている可能性が高い。
未知数とも言えるポテンシャルが眠っている自動運転業界。関連企業の今後の躍進に期待大だ。
【参考】関連記事としては「自動運転はいつ実用化?レベル・モビリティ別に動向・有力企業を解説」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)