トヨタ・レクサス、完成度が高すぎて「ほぼ自動運転じゃん!」と話題に

高速道路走行時、レベル2が大幅進化?

B!
出典:Flickr / DennisM2 (CC0 1.0 : Public Domain)

SNSで、レクサスNXのADAS(先進運転支援システム)を高評価する声がいくつも上がっている。中には「ほぼ自動運転」と絶賛する声もあるようだ。

なかなか自動運転に踏み切らないトヨタだが、同社のADASはそんなに完成度が高いのだろうか?

評判とともに、その実態に迫ってみる。

\レクサスのサブスクなら (PR)/
KINTO
【自動運転ラボの視点】
ちなみにレクサスNXのシステムが、人間側に常時責任が生じるADAS(※自動運転レベルでいうとレベル2)の水準だとしても、LiDAR非搭載モデルとして、こうした完成度の高さを実現しているとすれば、それは注目に値することだ。テスラは先日、LiDARを搭載しない完全自動運転車の計画を発表したが、その計画が実現するリアリティがぐっと高まったと言えそうだ。(※LiDARセンサーは「自動運転の目」と言われ、クルマの自動運転化には必須だと考えられてきた経緯がある。詳しくは「LiDAR(ライダー)センサーとは?特徴は?」も参照。)

■レクサスNXの概要と評判

高速道路での長距離走行が楽?

現行モデルとなる2代目NXは2021年にデビューした。

電動化ビジョン「Lexus Electrified」 に基づきパワートレーンにレクサス初のPHEVが設定されたほか、最新ADAS「Lexus Safety System +」や、レクサス初のリモート機能付き[Lexus Teammate Advanced Park]の設定、世界初となる停車時のドア操作において事故防止に貢献する「安心降車アシスト(ドアオープン制御付)」を搭載するなど、数多くの先進技術が採用されている。

出典:トヨタプレスリリース

SNSサイト「X」では、NXオーナーによる例えば以下の投稿が見られる。

「愛知より4時間ちょっと、約300キロかけて舞浜に到着しました。新車のレクサスNXの運転支援が快適すぎて、ほぼ自動運転な感じで最高でした」(https://x.com/tanukixponpoko/status/1647232340014530560

「待ちに待って昨年納車されたレクサスNX。1年乗った感想。安全装備やほぼ自動運転システム、静粛性等、満足する部分は多くて長距離運転が楽しくなった」(https://x.com/amanepapa0227/status/1844391063026585772

他にも「ほぼ全区間を自動運転可能なのはすごい」といった好意的な感想を寄せている投稿が多い。

「レクサスNXのLESS+3.0のPDAとLTAが優秀すぎて2週間に一度ペースで東京行ってますがドライブが全く苦になりません。 法定内速度であれば東名高速道路のほぼ全区間を自動運転可能なのはすごい。かなり理想のラインを走ってくれるので運転がうまくなった気分になりますね。」(https://x.com/namaxchang/status/1731092064958599425

ポイントは、各オーナーが「ほぼ自動運転」と感じている点だ。人間による常時自動車制御が必要なADASながら、高速道路走行時はほぼ手動制御が必要ないと体感しているのだ。

自動運転に直結するADASの代表格としてアダプティブクルーズコントロールとレーンキープアシストが挙げられるが、恐らくこれらのシステムの出来が非常に良いのだろう。アクセルやブレーキ、ハンドルをほぼ操作することなく長距離移動できる点は特筆に値する。

\レクサスのサブスクなら! (PR)/

Lexus Safety System+がレベル2を実現

Lexus Safety System+には、「プリクラッシュセーフティ」「プロアクティブドライビングアシスト」「ロードサインアシスト」「発進遅れ告知機能」「レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)」「レーンディパーチャーアラート」「レーントレーシングアシスト」「レーンチェンジアシスト」「ドライバー異常時対応システム」「ブラインドスポットモニター」「安心降車アシスト(ドアオープン制御付)」「パノラミックビューモニター(床下透過表示機能付)」「ITS Connect」などの各機能が備わっている。

また、Lexus Teammateの「Advanced Park」にも対応している。Advanced Parkは駐車支援システムで、カメラと超音波センサーにより車両の全周囲を監視することで、並列駐車シーンにおいて前向き駐車・バック出庫・前向き出庫を可能にしている。一部モデルではリモート機能付を選ぶこともでき、車外から専用スマートフォンアプリを使用することで遠隔駐車・出庫を可能にしている。

プリクラッシュセーフティは、進路上の車両や歩行者、自転車運転者、自動二輪車をミリ波レーダーと単眼カメラで検出し、衝突の恐れがあるとシステムが判断した場合、ブザーやブレーキ支援、操舵支援などを行う。見通しの悪い交差点においても、左右から接近する車両をいち早く検知し、注意喚起を行う。

プロアクティブドライビングアシストは、歩行者の横断や飛び出してくるかもしれない可能性など、運転の状況に応じたリスクの先読みを行うことで、危険に近づき過ぎないよう運転操作をサポートする。

レーダークルーズコントロールは、ミリ波レーダーと単眼カメラで先行車を認識し、設定した車間距離を保ちながら追従走行を支援する。時速80キロ以上でウインカー操作をした際、遅い先行車を追い越すための予備加速、または車線変更先にいる遅い先行車に追従するための予備減速も実施する。

レーントレーシングアシストは、レーダークルーズコントロール作動時、車線維持に必要なステアリング操作支援を行う。滑らかにふらつきを抑えながらレーン中央をキープする走行を可能にし、車線が検出困難な場合でも先行車に追従する支援を行う。

ドライバー異常時対応システムは、レーントレーシングアシスト制御中にドライバーの無操作状態が継続している場合、音や表示、緩減速による警告でドライバーに操作を促す。それでも反応がない場合は、ハザード・ホーン・ストップランプで車外に異常を報知しながら自車線内で減速・停車し、自損・加害事故の回避・事故被害低減を支援する。

クルコンとレーンキープアシストが重要

SNSに投稿したオーナーは高速道路走行時、レーダークルーズコントロールとレーントレーシングアシストによりほぼ手動制御なしの状態で走行できたものと思われる。

あくまで運転を支援するレベル2のため、ペダルに足、ハンドルに手を添え常に周囲の監視を行わなければならないが、自動運転と見紛うほど精度の高い走行を実現しているのだろう。

レーダークルーズコントロールの上限は時速180キロらしく、通常の高速走行を楽にクリアしている。特段の問題がなければ、高速道路入り口から出口までほぼ手動制御なしで走行できるのかもしれない。

■トヨタのADAS

ハンズオフを可能にする上位版「Advanced Drive」も

Lexus Safety System+でもまるで自動運転かのような走行を体感できるようだが、トヨタのADASにはさらに上がある。Lexus Teammateにおける「Advanced Drive」と「Advanced Drive(渋滞時支援)」だ。

Advanced Driveは、高速道路・自動車専用道路の本線から分岐までの走行を支援するシステムで、あらかじめナビゲーションで目的地を設定すると、ドライバー監視のもと交通状況に応じてシステムが適切に認知、判断、操作を支援し、車線・車間維持、分岐、車線変更、追い越しなどを行いながらインターチェンジの分岐まで運転を支援する。時速125キロまで対応している。

隣接車線を走行する車両との側方間隔の確保や、ジャンクションでの目的地方面への分岐における自動ウインカーや車線変更など、細やかに走行をサポートしてくれるのだ。

同様に、Advanced Drive(渋滞時支援)は、一部の高速道路・自動車専用道路をレーダークルーズコントロールとレーントレーシングアシストを作動させて運転している際、時速40キロまでの渋滞になると使用可能になり、システムが認知・判断・操作を総合的に支援する。

Advanced Drive、Advanced Drive(渋滞時支援)はレベル2+に相当し、システム作動中はハンドルから手を離す、いわゆるハンズオフ運転が可能となる。常時監視は必須だが、一歩レベル3に近づいたシステムと言える。

今のところ、レクサスブランドにおけるAdvanced Drive対応車種はLSのみで、Advanced Drive(渋滞時支援)はGX、RX、RZ、LBX、LS、LMが対応している。

【参考】レクサスのADAS機能については「レクサスと自動運転」も参照。

\レクサスのサブスクなら! (PR)/

■レベル2からレベル2+、レベル3への進化

レベル2~3の主力機能は同一?

レベル2の主力となる機能は、アダプティブクルーズコントロールとレーンキープアシストシステムだ。アダプティブクルーズコントロールによる縦方向の制御と、レーンキープアシストによる横方向の制御を組み合わせることで同一車線上における安定した走行支援を行うことができる。

この二つを一定の精度まで向上させれば、ハンズオフも可能となる。歩行者などの不確定要素に対応しきれないため、多くは自動車専用道路で実用化されている。自動車専用道路であれば、原則車線内を走行する周囲の自動車やオートバイなどに気を付けていればよいためだ。

このハンズオフにおいて、手動介入を要するシーンを一つずつ解決し、一定のODD(運行設計領域)内で手動介入なしで走行することが可能になれば、自動運転領域であるレベル3が見えてくる。

出典:自動車技術会

レベル3も基本的なシステムはレベル2+と変わらず、アダプティブクルーズコントロールとレーンキープアシストシステムが主力となる。

加えて、ドライバーの異常を検知するドライバーモニタリングシステムや、万が一の際に安全に路肩に停車するなど被害を最小限に留めるミニマル・リスク・マヌーバー技術、イベントデータレコーダーなども備えることで、リスク最小化とリスク原因の究明も可能とすることなどが求められるが、基本的な仕組みは一緒なのだ。

誤解を恐れずに言えば、レベル2+をブラッシュアップしていけばレベル3に到達できると言える。

ハンズオフを可能とするモデルは増加傾向にあるが、各オーナーがハンズオフ運転時に実際どれだけ手動介入したか、どういった場面で手動介入したか……といったデータは非常に有用なものとなる。

メーカーが車載通信機を介して走行時のデータを収集するケースも増加しているが、こうした手動介入時の状況把握にも力を入れているものと思われる。なぜ手動介入が必要となったか、その原因を一つずつつぶしていくことでハンズオフシステムの性能を高め、レベル3に近づいていくことができるためだ。

現在、ホンダやメルセデス・ベンツなどが実用化しているレベル3は、自動車専用道路における渋滞時をODDとしている。これはレベル2+のODDに含まれる条件だ。渋滞時という条件が抜け、制限速度を満たすレベル3になってもレベル2+のODDに収まる(インターチェンジなどは除く)。

つまり、レベル2+の実装を進め、データ収集・解析に力を入れることはレベル3への近道となり得るのだ。こうした観点からも各社の開発動向を予測することができそうだ。

【参考】ODDについては「自動運転のODD(運行設計領域)とは?(2024年最新版)」も参照。

ハンズオフ可能モデルは徐々に増加

ハンズオフ運転が可能なモデルは、トヨタではMIRAIがAdvanced Drive、アルファード、ヴェルファイア、ヴォクシー、ノア、クラウン、クラウン(クロスオーバー・スポーツ)、ランドクルーザー250、センチュリーがAdvanced Drive(渋滞時支援)に対応している。

国内メーカーで最も早くハンズオフを可能にした日産「ProPILOT2.0」は、スカイラインのほかアリア、セレナも対応している。

ホンダは、世界初のレベル3量産車レジェンドに搭載した「Honda SENSING Elite」がハンズオフにも対応しているが、レジェンド以降、今のところ搭載例がない。

スバルは、「アイサイトX」がハンズオフに対応しており、レイバック、レガシィアウトバック、レヴォーグ、WRX S4が搭載可能となっている。

手放し運転(ハンズオフ)ができる車種・機能一覧(2024年最新版) トヨタ・ホンダ・日産・・・

■レベル3のハードル

レベル3は絶対的な精度が求められる

レベル2+を磨き上げればレベル3の実現が見えてくることに間違いはないが、レベル3は原則としてドライバーに頼ることなく自律走行を実現しなければならないため、絶対的な精度が求められることになる。

レベル3では、ドライバーはシステム作動中、周囲の常時監視義務を負わない。アイズオフが可能となり、自動運転中はスマートフォンの閲覧などを行うことができる。

ただし、イレギュラーな場面に遭遇したりODDを外れたりした際にはシステムから手動運転が要請されるため、ただちに運転操作に戻れる状態でなければならない。自動運転とは言え、念のためドライバーが備えているような状態だ。

とは言え、ODD内においてはドライバーに甘えることなくシステムのみで走行を遂行すべきであることに違いはないため、手動介入を必要としない絶対的な自動運転システムが求められるのだ。

その意味では、レベル2+からレベル3への進化のハードルは非常に高いと言える。自動運転走行中に起きた事故などのトラブルの責任は、開発メーカーがすべて負う――くらいの自負がなければ実装できない。

トヨタがレベル3を実装する日は訪れるのか。レベル2+含め、今後の動向に引き続き注目したいところだ。

【参考】レベル3については「自動運転、レベル2とレベル3の違いは?(2024年最新版)」も参照。

■【まとめ】挽回のチャンスはまだまだある

レベル2の評判が上場のトヨタ(レクサス)。レベル2+対応車種も増えており、相当磨きがかかっているのではないだろうか。

現状、レベル3においてはホンダやメルセデス、BMWに後れを取っているが、制限速度を満たす非渋滞時のレベル3や幹線道路におけるレベル3など、各社共通の課題も多い。

トヨタにもまだまだ挽回のチャンスはある。そろそろ正式にレベル3~4実現に向けたロードマップの公表を望みたいところだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



B!
関連記事