あっ、危ない!Googleの自動運転車、通学児童の列に突入寸前

交通指導員、約25%が「危機一髪」経験



自動運転タクシーの導入が進む米カリフォルニア州サンフランシスコで最近、通学途中の児童が交差点でGoogleの無人自動運転車にひかれそうになるという事例が相次いでいるようだ。同州のテレビ局による調査で明らかになった。


NBCベイエリアの調査班が、サンフランシスコの学校に常駐する交通指導員に話を聞いたところ、約25%が横断歩道で自動運転車と接触しそうになるといったヒヤリとした経験があるという。どんな調査が行われたのか、詳しく見ていこう。

▼School crossing guards say they’ve had to dodge driverless cars to avoid being hit
https://www.nbcbayarea.com/investigations/school-crossing-guards-driverless-cars-close-calls/3544306/

■NBCベイエリアが交通指導員を調査

Google系Waymoが展開している自動運転タクシー=出典:Waymo公式ブログ

NBCベイエリアの調査班は、サンフランシスコの20以上の学校に配置されている交通指導員30人に取材を行った。交通指導員は、通学時に交差点などで児童の通学を見守るといった業務を担っている。

その結果、25%近くにあたる7人が横断歩道でWaymoの自動運転車と「危機一髪」となるような場面に遭遇したと回答したという。WaymoはGoogle系の自動運転開発企業だ。


ある交通指導員は、この1年で3回、ドライバーレスの自動運転車にひかれそうになった。いずれも横断歩道で一時停止のサインを掲げて歩いているときに起きたが、Waymo車は人間を認識しなかったようだ。

そのほかの交通指導員も、「6回ほどひかれそうになったことがある」「(自動運転車を見かけたら)子どもたちには立ち止まるように言っている」などと回答している。

■Waymoはインタビュー要請を断る

この件に関してWaymo側は、正確な日時や詳細が分からなければ、自動運転車が何をしたのかについて説明できないとし、NBCベイエリアのインタビュー要請を断ったという。


しかし今回の調査結果のような社会的な懸念を非常に真剣に受け止めており、「当社の安全実績を誇りに思う一方で、他の道路利用者がWaymoのテクノロジーを安心して快適に接することができるようする重要性も認識している」との声明を出している。

カリフォルニア州の交通ルールでは原則として、歩行者が横断歩道から完全にいなくなるまで、車は横断歩道を渡るのを待たなければならない。

NBCベイエリアはこれまでにも、子どもの通行の場合も含めて、無人自動運転車がどのくらいの頻度でそれを遵守しているのかについて疑問を呈している。

【参考】関連記事としては「Googleの自動運転車、公道を逆走!Xで目撃投稿」も参照。

https://x.com/jidountenlab/status/1790134819168370985

■「人間より運転が上手」と語る人も

カリフォルニア州の議会などでは、自動運転車を運営する企業に今まで以上に厳しい報告を求める声も出ている。

ある議員は米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)に、自動運転車によるニアミスの頻度を明らかにするよう、Waymoなどの企業に求めることを正式に要請した。なお現在は、実際に起こった衝突事故のみを報告する義務となっている。

ただし、自動運転車に対する否定的な意見ばかりではない。交通指導員によっては、自動運転車は人間より運転が上手だと感じている人もいる。実際、子どもの親が運転しているクルマにひかれそうになったことがあり、自動運転車の方が人間よりもきちんと一時停止してくれると語っている人もいる。

また、自動運転車にひかれそうになった経験をしていない交通指導員でも、自動運転車に神経をとがらせている人や、突然停止して車線や横断歩道をふさぐといった別の問題について語る人もいた。

■将来的には確実に手動運転より安全に

自動運転AIの技術は飛躍的に向上しているが、現時点では適切な対応ができないケースがあることも事実だ。しかし、将来的には人間のようなヒューマンエラーがほぼ起こらなくなり、確実に手動運転よりも安全になる。いまはその時期を迎える前段階だ。今後の開発各社の技術革新に注目したい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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