米Appleの元エンジニアが、同社の自動運転技術を盗んだ容疑で起訴された。
米メディアによると、起訴されたのは、現在は中国のIT大手Baidu(百度)が支援するEV(電気自動車)企業の幹部であるWeibao Wang氏で、Appleを退社する4カ月前にその企業への就職を決めていたという。
■Appleとの秘密保持契約を無視か
2023年5月16日に、米国司法省はWang氏をAppleの自動運転技術の窃盗と窃盗未遂で起訴した。起訴状によると、同氏は2016年からAppleで働いており、同社が水面下で進める自動運転プロジェクトに携わっていた。秘密保持契約は結んでいたという。
その後、Wang氏は2018年にAppleを去ったが、Appleには秘密で退社の4カ月前に、「中国に本社を置き、自動運転車の開発に取り組んでいる企業の米国にある子会社」(※起訴状より)への就職を決めていたようだ。
Wang氏の退社後に、Appleは同氏が退職の数日前に社内の機密データベースにアクセスしたことを突き止め、法執行機関が自宅の捜索を行うことになった。Wang氏は捜索令状に従ったものの、その夜に飛行機で中国に向かった。その後、同機関はAppleの自動運転システムに関するソースコードやアーキテクチャ設計、モーションプランナーといった機密情報にWang氏がアクセスしたことを発見したという。
■Wang氏が転職したEV企業は?
ロイター通信によると、Wang氏が転職した先は百度の子会社であるJidu Auto(集度汽車)だ。
Jidu Autoは米テスラのライバルの1つとして注目されている新興EVメーカーで、百度が中国自動車大手のGeely(浙江吉利控股集団)とともに2021年に設立した。2022年12月には、自動運転EV「Robo-01 Lunar Edition」を2023年中に発売することを発表している。
今回のWang氏の罪が確定すれば、最高で10年に禁固刑が科せられる可能性がある。さらに、企業秘密の窃盗または窃盗未遂の各訴訟について、25万ドル(約3,400万円)または「計画によって生じた総利益または損失の2倍」を支払う必要があるようだ。
■Appleの秘密が盗まれる事件は過去にも
Appleが機密情報を窃盗されるという事件は、過去にもあった。2018年と2019年には、同社の2人の元エンジニアが自動運転プロジェクトから機密事項を盗んだとして起訴されている。
そのうちの1人であるXiaolang Zhang氏は、中国のEVスタートアップXiaopeng(シャオペン)に転職する前にプロジェクトに関する情報を持ち出しており、もう1人のJizhong Chen氏はマニュアルや、回路図、図表、コンピューター画面の画像など2,000以上のファイルをAppleから持ち出していたという。
■このような事件は今後も起きる?
「Titan(タイタン)」と呼ばれているAppleの自動運転プロジェクトは、公式には発表されていないが、2014年から始まったとされている。これにまつわるニュースが数多く出ているものの、同社からの公式発表は一切ない。
企業秘密は、企業の管理とそれに携わる社員のモラルによって成り立つが、このような事件は今後も起きるのだろうか。引き続き、注目していきたい。
【参考】関連記事としては「Apple Car暫定情報(2023年最新版) 自動運転技術に注目」も参照。