自動運転車は「119番」の敵!?米国で消防車出動の妨げに

サンフランシスコで15件のトラブル発生



出典:GM Cruise公式サイト

米Google系WaymoとGM傘下のCruiseは、米カリフォルニア州サンフランシスコでドライバーレスの自動運転車の公道走行許可を得ているが、たびたび消防車などの緊急出動車両の邪魔をしているという。

米メディアが報じたもので、これまでの緊急出動車両の邪魔をしたり交通を遮断したりといったトラブルは15件に上るようだ。アメリカにおける緊急電話番号は911番であり、自動運転車は911番の敵、日本で言うところの110番や119番の敵と言えるのだろうか。


■どういう「邪魔」をしているのか

米メディアが入手した事故報告書によると、あるトラブルは2023年4月に消防車が出動中に起きた。2台の消防車が、車がすれ違うことができないくらい狭い道に入ったところ、反対方向からWaymoの自動運転車が向かってきた。Waymo車は、消防車との距離が3メートルを切るくらいまで近づき、そのまま停止してしまった。Waymo車は遠隔運転によってすぐその場を離れることはなく、結局、消防車はバックして迂回して出動先までいくことになったという。

また同年1月には、Cruiseの自動運転車が消火活動中の現場に接近した。消防士は、Crise
車が消防車のホースの上を走り消火活動の妨げになるのではと考え、窓ガラスを割って車両を停止させたという。

Cruiseは2022年4月にも交通トラブルを起こしている。緊急出動中の消防車が市内を走行中、ゴミ収集車に行く手を阻まれ対向車線側を走行しようとしたとき、対向車線を走っていた自動運転車がゴミ収集車の隣でストップし、道路が完全にふさがれたという。そのため消防車は、25秒間その場にとどまらなければいけなかった。最終的には、ゴミ収集車の運転手が戻ってきて車両を移動し、その状況が解消されたようだ。

■気象状況によるトラブルも

緊急車両を邪魔したケースではないが、ほかのトラブルもたびたび起きている。


2023年4月には、Waymoの自動運転タクシー5台がサンフランシスコを走行中に、濃霧の影響で機能がうまく作動せずに停車し、道路をふさいでしまったという。中には道路の中央に停車した車両もあり、交通渋滞は時間が経つにつれて悪化した。約6分後に霧が晴れ、再び走行を始めた。

Cruiseの自動運転タクシーも、同年3月にサンフランシスコを走行中に進入禁止テープに絡まり停車したというトラブルを起こしている。前日に発生した嵐の影響により、木や電柱が倒れ、注意喚起のために黄色のテープが設置されていたが、それを検知できなかったという。

【参考】関連記事としては「自動運転とトラブル(2023年最新版)」も参照。

■再発防止策を練る過程こそが…

このような事例から分かることは、自動運転車がトラブルを起こした際、遠隔監視センターが迅速に対応することは現段階ではまだ難しいということだ。恐らく、現場でトラブルを検知するまでにある程度の時間を要しているのではないか。

数々のトラブル事例を受け、サンフランシスコ交通当局はWaymoとCruiseに対し、安全上の懸念から自動運転タクシーサービスの拡大を遅らせるよう求めているという。報道によると、サンフランシスコ交通当局の関係者は「2社のサービス拡大は不合理である」としている。

さらに、交通問題を引き起こす時間帯や頻度のデータをしっかりと収集することを求め、道路運営や交通サービスに大きな支障を与えることがなくなるまで、中心部での運転を制限することも要望しているようだ。

ただし、もちろんトラブルは少ないに越したことはないが、トラブルに直面して再発防止策を練る過程こそが、技術やサービスが進化するときと言える。自動運転車の展開企業は、そういう意味では今は「成長期」のまっただ中にいるととらえることもできそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事