24時間低コスト!スズキと組む自動配送ロボ企業のLOMBY的未来

IoT宅配ロッカーとの連携も



出典:LOMBY公式サイト

自動配送ロボットの開発を進めるLOMBY株式会社(本社:東京都品川区/代表取締役:内山 智晴)=ロンビー=はこのほど、自動車メーカーのスズキと屋外自動配送ロボットの量産を見据えた共同開発契約を締結したと発表した。

遠隔操作タイプや自動運転タイプのロボットで24時間稼働可能な低コストの配送実現を目指す同社は、自動配送ロボット分野においてどのように存在感を高めていくのか。LOMBYの実態に迫る。


■LOMBYの概要
置き配「OKIPPA」のYperが設立

LOMBYは、置き配バッグ「OKIPPA」を展開するYper(イーパー)が自動配送ロボットの開発や社会実装を目的に2022年4月に設立したスタートアップだ。

Yperは宅配物のラストマイルにおける再配達問題解決に取り組んでおり、2021年に自動配送ロボット分野の事業に着手した。置き配との2つの事業の相乗効果により、物流ラストマイルの社会課題を解決する狙いだ。

第1弾プロジェクトは、広島県が実施するAI・IoT実証プラットフォームの事業構想「ひろしまサンドボックス」のアクセラレーションプログラム「D-EGGS PROJECT」の採択事業として始まった。

Yperは「中山間地域での新たなラストマイルインフラの構築」をテーマに掲げ、自動配送ロボットによる無人物流インフラの構築を提案した。


2021年6月には、広島県北広島町とショッピングセンターの運営管理を手掛けるコムズと協定を交わし、自動配送ロボットを既存システムと融合させロボットによる宅配物と生鮮食品の混載配送を行う実証を行うと発表した。

実証は同年10月に行われ、自動配送ロボット「LOMBY」を公開した。各種センサーの情報を統合し、最適な配達ルートで自律走行する自動配送ロボットで、宅配物と生鮮品などを自動混載する機能を搭載し、複数地点に設置されたステーションにあるボックス間配送の完全自動化の実現を目指すという。

実証では、LOMBYの性能検証にとどまらず、中山間地域における物流の利便性を確保しながら、自動配送ロボットを新たな買い物支援として運用するための収益モデルの検証も行うとしている。

その後、本格実用化に向け2022年4月にLOMBY事業を独立させた。同年6月には資金調達のシードラウンドでDRONE FUNDから出資を受けたことを発表している。


■自動配送ロボット「LOMBY」の概要
遠隔操作と自動運転のハイブリッド

現在実証などに用いているモデル「LM-R」は、屋外を遠隔操作、屋内を自動運転で走行することができる。遠隔操作のため事前マッピングなどが不要で、導入先周辺の通信状況の確認のみで容易に導入可能という。

安価な低遅延遠隔操作システムと複数の遠隔操作者が任意のロボットをスイッチングして操作可能で、ネットワーク環境があればどこからでもロボットの遠隔操作を可能にしている点が特徴だ。

また、24時間稼働に向け開発中の「LM-A」モデルは、屋外におけるレベル4クラスの自律走行を可能にする見込みとしている。2023年度のサービス導入を目指すとしている。

メイドインジャパンで量産化目指す

LOMBYは幅492×高さ358×前後長175または438ミリの2室を備え、複数商品の混載を可能にしている。最大積載重量は25キロで、最高速度6キロで最大8時間ほど稼働させることができる。10度の登坂能力、10センチの段差を超える走破能力を有しているようだ。

ハードウェアとソフトウェアの両方を自社開発しているのもウリで、大手自動車メーカー出身者が製造チームの中心となり、遠隔操作型小型車の安全基準に則ったリスクアセスメントを実施している。

駆動部と車体は国内自動車メーカーと共同開発を行い、安全性、耐久性を追求している。メイドインジャパンでの量産を目指す方針で、販売する機体は全て認証機関の認証に合格した機体になるという。

出典:LOMBY公式サイト
ロボットのベースはスズキの電動車いす、量産効果生み出す

LOMBYとスズキは2022年からスズキの電動車いすをベースとした自動配送ロボットの可能性について検討を進めてきた。試作初号機の「LM-R1」はスズキの電動車椅子の駆動部品をベースにしている。

今回の提携においてスズキは台車の設計・開発を担当し、LOMBYは自動配送ロボットの試作や改造、配送システムの開発、実証などを行っていく予定だ。

また、配送ロボットと電動車いすの部品共通化についても検討を進め、自動配送ロボット量産化における製造コストの低減にも取り組んでいく。改正道路交通法による「遠隔操作型小型車」としての届出を目指し、ラストマイル物流領域へのロボット供給につなげていく構えだ。

【参考】スズキとの提携については「スズキ、自動運転配送ロボを共同開発!新興LOMBYとタッグ」も参照。

24時間低コストの配送を実現

LOMBYは、ロボットを活用した遠隔操作や自律走行により、24時間現場に配送員を待機させることなく配送することが可能になるとしている。1日あたりの配送回数を増やすことで、1配送あたりのコストを人が動いた場合の半分以下にすることが可能という。

必要な時だけ利用でき、配送がないときには人を待機させる必要もない。操作・監視業務は遠隔で行われるため、現地スタッフの採用や不要な待機時間の発生もなく、採用コストをゼロにできる。

また、LOMBYは天候に左右されることなく運用できるため、雨の日に配送員が確保しにくくなるような状況も回避できるとしている。

想定する配送圏は2キロ以内で、ロボットを活用することで店舗商圏を2キロまで拡大できることもメリットに挙げている。

■LOMBYの実証
ロボットと宅配ロッカーを連動

2021年10月に実施した北広島町の実証では、町役場と北広島町まちづくりセンター、ショッピングセンターを実証フィールドに商品を自動混載する取り組みなどを進めた。

ネットショップとショッピングセンターで購入した日用品を、ショッピングセンターに設置したボックスに配送して混載し、これをロボットが自動で取り出して「自律+遠隔操作」で町役場に設置したボックスまで配送し、自動で荷物を預け入れる取り組みだ。

自動混載に関しては、ロボットがボックスへアプローチするためある程度正面へ移動するなどの課題があったものの、自律してアプローチし、自動で受け渡しを行うことができたという。ロボットによってボックスからボックスへ荷物を受け渡すことができ、完全非対面配送による配送業務の省人化と収益性の向上を実証できたとしている。

【参考】広島での取り組みについては「期待大!Yperが「置き配×自動配送ロボット」で物流課題に挑む」も参照。

公道や大学構内で実証を加速

2022年4月には、デリバリー・テイクアウト専門施設「ココデリ高円寺」の商品を配達する実証を行った。

専用サイトから注文が入ると、キッチンスタッフがLOMBYに商品を預け入れ、約300メートル離れた賃貸マンションまで配送する。ロボットは大阪から遠隔操作によって走行する仕組みで、決められた時間内での配送や5Gによる遠隔操作への影響範囲など、遠隔操作ロボットを活用したフードデリバリーの可能性を探った。

同年6月には、東京都立大学南大沢キャンパス構内のカフェから、キャンパス内の複数の配送スポットに商品を届ける実証を行った。

前回同様大阪からの遠隔操作により、複数の受け取りスポットへスムーズに配送できるかなどオペレーションを検証した。道路の傾きにより一部操作通りに動きづらい場面があったようだが、歩行者や車が通行する中でも遠隔操作によって走行することができたという。

同年7月には、広島工業大学で年末に実施予定の実証に向けデモ走行を行っている。「広島コーラ」を積んだLOMBYが同大五日市キャンパス内を走行し、事前アンケートに回答してくれた学生にプレゼントした。アンケートでは、ロボットの利用シーンとしてフードデリバリーや路上販売の需要が多かったという。

2023年3月には、広島工業大学キャンパス及び周辺公道や広島県内広島市の東千田公園内でも実証を行う。改正道路交通法の施行を見据え、取り組みは加速する一方のようだ。

■【まとめ】IoT宅配ロッカーとの連携に注目

自動運転分野では新興勢と自動車メーカーなどの提携がスタンダードとなっているが、今回のLOMBYとスズキのように、自動配送ロボットにおいても今後こうした流れが加速していくのかもしれない。

もう一点注目すべきは、LOMBYがロボットとIoT宅配ロッカーの連携を進めている点だ。ロボットによる宅配ロッカーへの置き配を実現することで再配達の心配がなくなり、稼働率向上とともにユーザーの利便性も増す。

まもなく解禁される自動配送ロボット。そのポテンシャルを引き出し、サービス性を高めていく取り組みに引き続き注目だ。

【参考】関連記事としては「MADE IN JAPANの自動配送ロボ、LOMBYが開発中!」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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