死亡事故が「地方」に多い米国、秘策は「自動運転トラック」

オハイオ州で走行テストスタート



出典:DriveOhio公式サイト

米運輸統計局の2022年の調査によると、米国の人口の19%しか農村部など地方に住んでいないにもかかわらず、死亡交通事故の43%は地方の道路で発生しているという。

この問題を解決するために、オハイオ州交通局のプロジェクト推進機関である「DriveOhio」は、オハイオ州の農村部で自動運転トラックや自動運転バンの走行テストを2023年3月から開始した。


自動運転によりヒューマンエラーがなくなれば、交通事故の発生件数は激減すると考えられており、オハイオ州の農村部プロジェクトの行方に注目だ。

▼DriveOhio|Ohio.gov
https://drive.ohio.gov/

■少なかった農村部における実証

これまでアメリカの都市部では多くの自動運転車の実証実験が行われてきたが、農村部における実証実験などは少ない。

DriveOhioはオハイオ州南東部の道路の特に農村部で、自動運転車がカーブや丘陵地を移動する際にどのように作動するかに焦点を当ててテストを行うという。


自動運転実証向けの車両開発を手掛ける米AutonomouStuffの技術を搭載した車両を、高速道路と地方の2車線道路で走行させる。

■高速道路では隊列走行を試す

高速道路では、全長16メートルの大型トラック2台を「プラトーニング」という隊列走行を可能にする技術で接続し、走行させる。トラックが連結されると先頭車両が速度をコントロールし、後続車両は先頭車両の動きに合わせてスピードを調節するという。

今回のプロジェクトで使用されるトラックには、他の車両を検知するレーダーが搭載されており、リアルタイムで周囲の状況を監視する。なお、このテストは全てドライバー同乗のもと行われる。

テスト走行は1年間行われる予定で、その後オハイオ州は収集したデータを連邦運輸当局と共有する。


■米国×自動運転トラックの盛り上がり

国土面積が広いアメリカでは、特に長距離輸送トラックの自動運転化に対するニーズが大きい。

米スタートアップのKodiak Roboticsが長距離輸送向けの自動運転システム「Kodiak Driver」を開発しているほか、Gatikも軽トラックから中型トラックを対象としたミドルマイルの自動運転に焦点を当てた開発を進めている。

また中国系のPlusやTuSimpleも長距離自動運転トラックの実用化を進めている。そのほかボルボ・トラックスやダイムラー・トラック、フォード、ヒュンダイなどの大手も自動運転トラック開発に積極的だ。

なおGoogle系のWaymoは、オハイオ州に自動運転車の試験施設を開設し、大型自動運転トラックのテスト走行や悪天候を想定した走行試験を行うことを過去に発表している。

■オハイオ州独特の取り組みに注目

乗用車よりも先行している印象すら受けるトラックの自動運転化。農村部に視点を置くというオハイオ州独特の取り組みに注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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