中国の首都・北京でこのほど、助手席に人間の安全オペレーターが座らなくても公道でロボットタクシーを運行できるという許可が出された。許可の発行先は、ネット検索大手Baidu(百度)とトヨタが出資する自動運転スタートアップPony.ai(小馬智行)の2社だ。
中国の専門家からは「この許可は完全な自動運転車の商業化へ向けた重要な第一歩」といった声が上がっており、中国国内では同様の許可が他の都市でも発行される機運が高まりつつあるという。
■後部座席に乗せればOKに
2022年4月にBaidu とPony.aiは、無人運転でロボットタクシーサービスを提供できる許可を取得している。ただし、緊急時の手動で操作できるよう、助手席には安全オペレーターが座る必要があった。
今回の許可により、2社は安全オペレーターを助手席に乗せなくても、後部座席に乗せれば自動運転タクシーを走行させることができるようになる。対象となるエリアは、北京市南部の郊外60平方キロメートルの指定区域で、それぞれ最大10台を走行させることができる。
ちなみに世界経済を分析する英IHS Markitは、中国のロボットタクシーの市場規模は2030年までに1兆3,000億元(約25兆円)を超え、ライドヘイリング(配車サービス)の6割がロボットタクシーになるだろうと予想している。
■Baiduと自動運転
Baiduは中国における自動運転技術のリーディング企業の1社だ。
自動運転車の販売や自動運転タクシーの展開に向け、オープンソフトウェアプラットフォーム「Project Apollo(阿波羅)=アポロ計画」を2017年に立ち上げたことで知られており、同プラットフォームには中国の自動車メーカーのほか、トヨタやホンダ、米フォード、独BMWなども参加している。
中国政府からも強い支援を受け、2019年からロボットタクシーの実証実験を行っている。すでに3,000万キロメートル以上の走行距離を誇り、北京や上海、広州、深センなど10カ所以上の都市でロボットタクシーサービスを実証的に商用展開している。
【参考】関連記事としては「百度の完全無人自動運転タクシー、「中国全土制覇」の現実味」も参照。
■Pony.aiと自動運転
中国のベンチャー企業の中では、Pony.aiの存在感が強い。2016年に米カリフォルニア州で設立され、その後、米国と中国の両方で自動運転開発に取り組んでいる。2020年には、トヨタから4億ドル(約550億円)を受けた。
2022年4月に広州市で商用ロボットタクシーの営業許可を中国で初めて取得している。米カリフォルニア州では、セーフティドライバーの同乗が不要な実証実験の許可も取得していたが、現在は2021年10月の事故により一時停止され、現在はセーフティドライバーありでの実証実験のみ許可されている。
【参考】関連記事としては「量産型!自動運転レベル4のタクシー、Pony.aiとSAICが開発へ」も参照。
■「自動運転の完全解禁」に向けて
中国当局は段階的に「自動運転の完全解禁」に向けた動きを前進させている。今回のニュースはそのことを象徴するものと言えよう。引き続き、中国から目が離せない状況が続く。
【参考】関連記事としては「中国の自動運転タクシー事情(2022年最新版)」も参照。