欧米に比べると日本はまだまだエンジニアの待遇が低い印象を受けるが、好待遇への機運は徐々に高まっている。
自動運転開発ベンチャーの株式会社ZMP(本社:東京都文京区/代表取締役社長:谷口恒)が月収100万円も夢ではない条件でエンジニアの募集をおこなっているほか、2018年3月に設立されたトヨタ自動車の技術開発会社であるトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント株式会社(TRI-AD)なども即戦力となる新規採用を進めており、高まる需要とともにエンジニアの待遇も右肩上がりを続けそうだ。
■ZMP社が自社開発する数々の先進技術群
ロボティクスを基本技術に、ハードウェアとソフトウェアの両方を自社開発しており、自動運転技術を活用した製品開発・サービス実証支援から物流支援ロボット、宅配ロボ、ドローンなど幅広く手掛けている。
自動運転分野では、2014年に自ら公道実証実験を開始しているほか、車両本体を含めた自動運転・ADAS(先進運転支援システム)開発用プラットフォームの提供や公道実験支援パッケージ、開発用ソフトウェア、データ計測サービスなども行っている。2018年4月には、スマートフォンを使って自動運転車を呼び出すサービスのパッケージ販売や、同年5月には自動運転車の周辺環境を検知するLiDAR(ライダー)の新製品の販売をそれぞれ開始するなど、開発分野をどんどん広げている。
■ZMP社 の求人内容とその熱きエンジニア観とは?
ZMP社は、自動運転や各種自律移動システムの制御、センサーフュージョン案件などで必要とされるソフトウェアの設計やアルゴリズム実装、各種画像認識アルゴリズムの開発や機械学習・深層学習、GPU(画像処理半導体)へのシステム実装のほか、ステレオカメラを用いた製品・アルゴリズムの開発などの分野で、幅広くエンジニアを募集している。
同社の採用で強みとなる経験が、C/C++での設計開発やMATLAB/Simulinkでの設計、Linuxなどでのライブラリ開発、車両挙動シミュレーション技術、安全性解析、デバイスドライバ開発などで、月給はスキルや能力により25万円~100万円となっている。
同社は「エンジニアの醍醐味は、自分の手掛けた製品・サービスが実際に社会に役立つこと。そのためには大変な努力が必要ですが、実現し、喜ぶ顔、感謝されること、そして、社会が良い方向に変わっていくこと、それがZMPエンジニアのモチベーション。ベンチャーだからこそできることがある」としている。
■TRI-ADは先行開発の最前線で戦う仲間を募集
トヨタ自動車は2016年、新たなセンシングデバイスやディープラーニング(深層学習)技術を用いた画期的な認識、判断性能の向上やソフトウェア更新、自動運転用の地図の自動更新など新しい技術に取り組む必要性から、人工知能(AI)や自動運転、ロボティクスといった技術の研究を行う新会社TRI社を北米で設立した。そしてさらなる競争力強化を目指し、日本国内に設立したのがTRI-AD社だ。
TRI-AD社は研究成果を製品へと効率良くつなぐことなどを目的としている。同社は2018年6月13日付で自動運転ソフトウェアの先行開発を担当するエンジニアの募集をスタートしている。
■米シリコンバレーなどの平均年収3300万円、いつか日本でも?
転職サービス企業の株式会社ビズリーチが2018年5月に発表したIT関連求人の動向調査によると、自動運転に関する求人の日本国内の最高年収は2100万円。一方で米メディアの報道によると、シリコンバレーなどを含むカリフォルニア州西海岸「ベイエリア」における自動運転技術者の報酬の幅は、2017年初旬において約2500万~4000万円、平均では約3300万円に上るという。
次々とスタートアップ企業が立ち上がり、新技術の開発や支援、協業体制が整っているシリコンバレーと比較するのは酷かもしれないが、ZMP社のようなベンチャー企業やTRI-ADのエンジニア募集などが起爆剤となり、技術者の需要増加とも相まって待遇も良くなっていくものと思われる。