トヨタ自動車がすでに静岡県裾野市で建設を開始したコネクティッドシティ「Woven City」。トヨタはこの街に実際に人に住んでもらい、先端技術の実用化をよりスピーディーに進める方針を示している。
このWoven Cityに住んでもらう人について、トヨタの豊田章男社長が過去に言及していることをご存じだろうか。Woven Cityにはどのような属性の人が住むことになるのかを、Woven Cityの概要にも触れつつ紹介していこう。
ちなみにWoven Cityの「オープン時期」については明言されてはいないが、2022年2月までに報道されている内容によれば、少なくとも2024〜2025年ごろまでの工事を経て、オープンはその後と計画されているようだ。
記事の目次
■トヨタの従業員・家族や退職した夫婦が対象
豊田社長は世界最大級の技術見本市「CES 2020」において、集まった報道陣に対して以下のように語っている。
「Woven Cityの住人としては、トヨタの従業員と家族、退職したご夫婦、小売店舗、プロジェクトに参画する科学者、各業界のパートナー企業などを想定しています。そしてもちろん、ここにいる皆さまもです!まずは約2,000名から始め、段階的に増やしてまいります」
「私たちと一緒にこのプロジェクトに参画することに関心がある方、また将来の暮らしを改善したいと思われている方はどなたでも歓迎する予定です」
「ここにいる皆さま」が報道関係者のことを指していると考えると、Woven Cityに住むことができる人は以下の8種類ということになる。
- トヨタの従業員と家族
- 退職した夫婦
- 小売店舗で働く人
- プロジェクトに参画する科学者
- 各業界のパートナー企業の担当者
- 報道関係者
- トヨタと一緒にこのプロジェクトに参画することに関心がある人
- 将来の暮らしを改善したいと思っている人
自動車に関する特別な技術を有しておらず、関連ビジネスも展開していない人であっても、「退職した夫婦」「将来の暮らしを改善したいと思っている人」であれば、Woven Cityに住める可能性はありそうだ。
当初の予定である約2,000人の枠に入るのは厳しいかもしれないが、豊田社長は段階的に住人を増やすことに意欲を示しており、トヨタに積極的にアプローチしていけば、もしかすると本当に住むことができるかもしれない。
■そもそもWoven Cityとは?
トヨタの豊田社長がこのWoven City構想を初めて明らかにしたのは、2020年1月6日(米国時間)に行われた前述の「CES 2020」においてであった。
2020年12月末に閉鎖予定の「東富士工場」(静岡県裾野市)の跡地を活用して、将来的に175エーカー(約70.8万平方メートル)の範囲で「街作り」を進めることと、その街の名称が「Woven City」であることを、この時に発表している。
2021年1月の豊田社長の年頭挨拶では、このWoven Cityについて「トヨタにしかできないプロジェクトであり、トヨタがやらなければならないプロジェクト」としている。また、「自動織機から自動車にモデルチェンジをした歴史をもち、いま、自動車からモビリティ・カンパニーへモデルチェンジをしようとしている我々だからこそ、やる意味があるのだと思っている」と熱い思いを語っている。
2021年2月23日にはWoven Cityの地鎮祭を実施し、本格的に建設工事が開始された。なお、この2月23日は「富士山(223)の日」だ。
3つに分類された「道」が存在
Woven Cityは自動運転技術やロボット、AI(人工知能)などの検証・実験を行う街であり、大きな特徴としては、3つに分類された「道」をつくる点が挙げられる。
1つ目の道は、完全な自動運転車や「e-Palette(イー・パレット)」などスピードが早い車両専用、2つ目は歩行者とゆっくりと走るパーソナルモビリティが共存するプロムナードのような道、3つ目は公園内のような歩行者専用の道だ。
Autono-MaaS専用EV「e-Palette」が活躍
Woven Cityでは、主にAutono-MaaS専用EV(電気自動車)であるe-Paletteの活躍が予想される。この車両は自動運転機能を備えており、シャトルや移動販売車、移動型ホテル、移動型アパレル店などさまざまな形態で活用されるようだ。
【参考】関連記事としては「トヨタのe-Palette(イーパレット)とは?自動運転EV、東京オリンピックでは接触事故も」も参照。
NTTとスマートシティプラットフォームを構築
トヨタはこのWoven Cityの取り組みを世界に広げていくため、2020年3月にNTTと約2,000億円の相互出資による業務資本提携に関する合意書を締結している。この協業では、両社が以前より取り組んでいたコネクテッドカー分野に加えて、Woven Cityでの「スマートシティプラットフォーム」を構築・運営し、国内外で幅広く展開することを明らかにしている。
【参考】関連記事としては「トヨタ自動車とNTT、スマートシティで協業 Woven Cityの取り組みを世界へ」も参照。
Woven Planet GroupがWoven Cityの開発を推進
2021年1月には、Woven Planet Groupが事業を開始した。このWoven Planet Groupは、トヨタグループのTRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)の再編によって誕生した会社で、Woven Cityの開発を推進する存在となる。
【参考】関連記事としては「トヨタ子会社Woven Planet Groupの自動運転事業一覧(2021年最新版)」も参照。
■Woven Cityに居住を希望するYouTuberも登場する!?
Woven Cityは、新時代のスマートシティを実現させるための壮大な実験都市という位置付けで開発される。
つまりもしWoven Cityの住民になれれば、最先端の技術をほかの人よりも早く目にすることができるようになる。そうしたことを考えると、Woven Cityに居住を希望するYouTuberも多くあらわれることになりそうだ。
今後、トヨタからWoven Cityの開発の進捗について発表されるのを、楽しみに待ちたい。
■関連FAQ
トヨタ自動車が静岡県裾野市で建設を開始したコネクティッドシティで、自動運転などの最新技術を試す実証都市という位置付けだ。2024〜2025年ごろまでの工事を経て、その後、段階的にオープンするものとみられている。
Woven Cityは実証都市という位置付けだが、実際に人が住むことが想定されている。これまでの発表内容などを整理すると、トヨタの従業員と家族、退職した夫婦、小売店舗で働く人、プロジェクトに参画する科学者、各業界のパートナー企業の担当者、報道関係者、トヨタと一緒にこのプロジェクトに参画することに関心がある人、将来の暮らしを改善したいと思っている人などが対象だという。
地上には3種類の道が敷設されるようだ。1つ目の道は、速度が速い自動運転車などが走行する道。2つ目の道は、低速のパーソナルモビリティと人が共存する道。そして3つ目の道は、歩行者専用の道とされている。地下にも物流向け自動運転車が走行できる道路を建設する計画があるらしい。
トヨタの豊田章男社長が2020年1月に米ラスベガスで開催された「CES 2020」で、Woven Cityの構想を発表した。それから1年1カ月後の2021年2月にWoven Cityが着工した。ちなみにWoven Cityが建設されているのは、トヨタの東富士工場の跡地だ。
「ウーブンシティ」と読む。
(初稿公開日:2021年8月17日/最終更新日:2022年2月11日)
【参考】関連記事としては「Woven Cityが、日本最速で「事故ゼロ都市」に!?自動運転とジコゼロ大作戦の知見で」も参照。