米インテル傘下のイスラエル企業モービルアイ(Mobileye)が、2020年1月10日までの日程で米ラスベガスで開催されている技術見本市「CES 2020」で、自動運転業界にとっては衝撃的とも言える動画を公開し、同社の注目度を一層高めた。
その動画とは、カメラだけを車両に設置して自動運転を実現するというものだ。自動運転のコアセンサーと言えば一般的にカメラのほか、光によって距離計測などを行う「LiDAR」(ライダー)やミリ波レーダーも挙げられるが、モービルアイはカメラだけで自動運転を実現したという。
■これまでも提唱されてきた「LiDAR不要論」
実は「LiDAR不要論」はこれまでも提唱されてきた。考えてみれば人間は映像に関しては自分の目だけをセンサーとして使って安全な運転を実現している。そう考えれば、決してカメラだけで自動運転を可能にするというのは夢物語ではないのだ。
例えばイギリスのAI(人工知能)スタートアップ企業である「Wayve」は、GPS(全地球測位システム)とカメラだけを使って自動運転を実現するシステムを過去に発表している。同社のAIシステムは人間による実際の運転を学習対象するというアプローチをとっている。
日本のベンチャー企業でもLiDAR不要論を唱える企業がある。それがAIソリューションを手がけるRevatron(レバトロン)だ。カメラだけで物体の距離や動きを検知・学習可能な「スマートカメラ」を使うという発想だ。
【参考】関連記事としては「【インタビュー】LiDARに代替するスマートカメラを発表 Revatron浅田麻衣子社長 自動運転車における距離計測と立体認識を可能に」も参照。
LiDAR不要論を体現したAIカメラ…女性社長は語る「ゴールは廃炉ロボ・ソリューション開発」 自動運転業界で変わる常識、自動車イノベーションが加速する https://t.co/qzYtoH8RKZ @jidountenlab #LiDAR #スマートカメラ #AI
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) October 4, 2018
■12個のカメラ以外にはセンサーは設置せず
モービルアイが公開した動画は以下のYouTube動画から観ることができる。イスラエルの都市エルサレムで自動運転車が公道を走行している動画で、車両に設置された12個のカメラ以外にはセンサーが設置されていないというから驚きだ。
モービルアイの発表などによれば、カメラで3次元(3D)空間を認識することで安全な自動走行を可能にするという。
実際に動画を観てみると、走行しながら平面のデジタル地図上に周囲360度の「物体」が3Dで描かれていくのがわかる。車両は車両の形で、人は人の形で描かれていく。ただ、カメラで物体を認識しているだけに、例えば前のトラックの先のクルマについては検出できないようだ。
ただそうだとしてもほかのクルマに混じって交差点などにおける走行も安全にやってのけており、注目すべき技術であると言える。
■【まとめ】LiDAR開発企業は戦線恐々
モービルアイは最近ではロボタクシーの運行で韓国と契約したことなどが報じられ、その存在感の高さを維持し続けている。その注目企業が発表した動画だけに、LiDAR不要論は広がっていくかもしれない。
ただLiDARに関しては日本企業も海外企業もその有望性から開発により力を入れ始めたばかりだ。もしLiDARを使わない自動運転が主流になれば、研究開発にかけたコストは回収しにくくなる。こうしたこともあり、この動画をLiDAR開発企業は戦線恐々として観たことだろう。
【参考】LiDARについては「LiDARとは? 自動運転車のコアセンサー 機能・役割・技術・価格や、開発企業・会社を総まとめ|自動運転ラボ」も参照。