トヨタ、2021年初頭に静岡県で「コネクティッド・シティ」着工 自動運転やロボット、AIの実証都市に 

その名も「Woven City」、CES 2020で発表



出典:トヨタプレスリリース

トヨタ自動車は2020年1月6日(米国時間)、世界最大の技術見本市「CES 2020」(開催:米ラスベガス)の会場で、自動運転技術やMaaS、ロボット、AI(人工知能)などの検証・実験を行う実証都市「コネクティッド・シティ」を、2021年初頭にも静岡県裾野市で着工する計画を明らかにした。

2020年末に閉鎖する予定となっている東富士工場の跡地を活用する計画で、将来的に175エーカー(約70.8万㎡)の範囲で「街作り」を進めるという。トヨタはこの街の名称を「Woven City」(ウーブン・シティ)とすることも発表しており、実際にトヨタの従業員など2000人がこの街に暮らすという。


発表によれば、Woven Cityでは「道」を大きく3つに分類するという。その3つは下記の通りだ。それぞれの道でそれぞれ別な利用目的を有するモビリティやロボットの実証実験が進んでいくことになりそうだ。

  • スピードが速い車両専用の道として、「e-Palette」など、完全自動運転かつゼロエミッションのモビリティのみが走行する道
  • 歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが共存するプロムナードのような道
  • 歩行者専用の公園内歩道のような道

豊田章男社長は報道発表でこの街作りについて「将来の暮らしをより良くしたいと考えている方、このユニークな機会を研究に活用したい方、もっといい暮らしとMobility for Allを私たちと一緒に追求していきたい方すべての参画を歓迎します」としている。

以下がトヨタが公開しているWoven Cityのイメージビデオだ。空を見上げれば「空飛ぶクルマ」も飛行するまさに「未来都市」といった趣きだ。


■自動運転シティ、世界で開発が進む

自動運転の実証向けの言わば「自動運転シティ」は、世界でこれまでにも開発や運用が実際に進んできた。例えばシンガポールでは南洋理工大学(NTU)と政府当局が共同で自動走行車のテストセンターとテストサーキットを造成し、交差点や信号機、バス停、建物なども設置されている。

アメリカではミシガン大学の構内に自動運転車の実証をするためのミニタウン「M City」がある。シンガポールのケースと同じように信号や交差点もあるほか、歩行者に見立てたダミー人形なども配備されている。

ただこうした自動運転シティと比べても、トヨタのコネクティッドシティ計画は全く見劣りせず、むしろ規模が大きく、よりリアルな環境での実証実験を可能とするものになりそうだ。なにしろ実際にその街に人が住むのだから。ミシガン大学のM City(13万㎡)と比べても広さは5倍以上だ。

このように自動運転の実験を既存の公道などで行うだけではなく、専門施設としてまるごと作ってしまおうという発想は、最近中国で報じられたニュースからも感じることができ、この流れはさらに加速しそうだ。


上記のニュースは、中国IT大手テンセントが「中国のシリコンバレー」とも呼ばれる深センの臨海地を購入したというトピックスで、次世代通信規格「5G」などを配備した自動運転の実験場にするのでは、との憶測が流れている。こうした「まるごと実験場」計画は自動運転技術を対外的にアピールするショーケースとしても活用しやすいことも特筆すべき点であると言える。

■【まとめ】日本の自動運転技術の進化に大きな弾み

日本では過去開かれた政府の「『スーパーシティ』構想の実現に向けた有識者懇談会」(座長・竹中平蔵)で、「自動走行車しか走れない」街の構想などが挙げられたこともある。今回トヨタが民間で実際に動きだすことで、日本の自動運転技術の進化に大きな弾みがつきそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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