
EC事業を軸に望外な成長を遂げたアマゾン。その取り組みは一介のECプラットフォーマーに留まらず、物流オートメーションやクラウドコンピューティングサービス(AWS)の展開など、派生的に事業領域を拡大している。
近年は、子会社Zooxによるロボタクシーサービスもローンチし、事業多角化がさらに進行している印象だ。グーグルやアップル、マイクロソフトと肩を並べるテック企業として存在感を発揮し続けるアマゾン。「自動化」をキーワードに、取り組みの最前線に迫る。
記事の目次
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■自動配送関連
かつてはAmazon Scout開発も……
アマゾンはかつて配送無人化にも力を入れていた。小型の自動配送ロボット「Amazon Scout(アマゾン・スカウト)」の開発・実証や、自動運転トラックスタートアップPlusとのパートナーシップなどだ。
ラストマイル配送を無人化するソリューションとして自社開発したAmazon Scoutの走行実証は、カリフォルニア州やワシントン州を皮切りに2019年に始まった。その後、テストフィールドはジョージア州やテネシー州にも拡大されていった。
しかし、コロナ禍終盤の2022年、巣籠もり需要の低下や物価高騰、出資先の新興EV企業Rivianの株価低迷などが重なって通期赤字となり、Amazon Scoutの研究開発を凍結することが報じられた。
約3年間に渡る実証の末、顧客ニーズにマッチしていない点などが判明し、実証を中止しプログラムを再構築する方針であることも報じられていた。2026年現在、Amazon Scoutに関するリリースはなく、凍結したままお蔵入りとなった可能性が高そうだ。
【参考】関連記事「実は役立たず?米Amazon、自動配送ロボの公開テスト中止」も参照。
Plusとの契約も続報なし
アマゾンは2021年、自動運転トラックを開発するスタートアップPlusと最低1,000台のユニットを購入する売買契約を締結した。
さらに、ワラント(特定顧客ワラント)の発行も受けており、1株あたり0.46647ドルの行使価格でPlusのシリーズC-1優先株を最大420,702,410株購入する権利も付与された。当時としては結構な規模の大型契約であり、Plusの有力株主となることも可能な契約だ。
ただ、こちらも続報はなく、アマゾンとの契約がどうなったのか不明だ。Plusは2026年9月、SPAC上場することを発表しており、上場を機に過去の取引の顛末なども判明するかもしれない。
このほか、アマゾンはトヨタが開発を進める「e-Palette(イー・パレット)」の初期モビリティサービスパートナーにも名を連ねていた。こちらも続報は一切ない。
【参考】関連記事「Amazon、無人トラック配送の実現目前!自動運転システムを1,000台分購入、米Plusから」も参照。
ドローン配送は拡大中
一方、ドローンを活用した無人宅配サービス「Prime Air」は継続・拡大されているようだ。2022年にサービスを開始して以来、米国と英国の一部都市でサービスが提供されている。2026年末までに米国内500エリアまで拡大する計画であることも報じられている。イタリアでも導入に向けた試験が行われているようだ。
最新型ドローン「MK30」は最大5ポンド(約2.3キロ)の荷物を最大7.5マイル(約12キロ)の距離まで1時間以内に配達できるソリューションだ。高度な機上検知・回避システムを使用することで、新拠点でも運用初日から目視外飛行を行う能力があるという。
すでに数十万件の配送実績を重ねており、アマゾンは2020年代末までに年間5億個のドローン配送を実現するとしている。
配達員の業務効率化を優先?
自動運転事業はとん挫した印象が強いが、配送サービスプロバイダーの支援・強化には相当力を入れているようだ。
車載AIソリューションのビジョンアシスト型荷物回収システム(VAPR)は、車内の必要な荷物をスポットライトで照らし出すことで、配達ごとにドライバーがラベル確認して荷物を探す手間を省くことを可能にした。
配達員が身に着けるウェアラブルソリューション「スマートデリバリーグラス」は、スマートフォンを使用することなく荷物のスキャンや歩行ルートの案内表示、配達証明の取得、ペットアラートの受信などを行うことができるという。
一日当たり2,000~3,000万件の注文・配送が行われるアマゾンは、現状中途半端に自動運転技術を取り入れる余地がなく、マンパワーに依存するほかない。この配達員の待遇改善・業務効率化に向けたソリューション開発が喫緊の課題となっているのかもしれない。
ただ、子会社Zooxの自動運転技術が実用化域に達しており、ロボタクシー事業に次ぐ形で、ラストマイルやミドルマイルを担う新たな自動運転配送車両の開発に着手する可能性も考えられる。
アマゾンの無人配送の未来は、Zooxにかかっている――と言っても間違いではないだろう。
■倉庫の自動化
各種ロボットの開発・実用化を推進中
アマゾンは、世界各国に物流拠点となるフルフィルメントセンター(FC)を設けている。商品の入荷から出荷に至る各工程において、独自のノウハウを生かした効率的かつ的確な管理を行う拠点だ。
従来、こうした拠点はマンパワー・人力に頼る面が多かった。注文が入った商品をスタッフが棚から探して運び、配送準備を進める流れだ。
この業務の省人化・効率化を図るべく、アマゾンは一歩ずつ歩みを進めている。2012年に導入した在庫棚を運ぶ単一タイプのロボット「Hercules(ヘラクレス)」は、床に埋め込まれた符号化マーカーのグリッドをカメラで読み取り、自機やポッドの位置特定を行うマーカー方式だった。
現在、ヘラクレスの2倍となる最大2,500ポンド(約1,134キログラム)の重量を持ち上げることができる「Titan(タイタン)」や、完全自律型の「Proteus(プロテウス)」などが主流となっているようだ。
新型自動搬送車両は自然言語を理解
2027年に導入予定の次世代プロテウスは、自然言語によるコマンドを用いて事業運営におけるより多くのタスクを担うことが可能になるという。
ドッグエリアだけでなく物品の移動が必要なあらゆる場所で稼働することができ、自然言語を理解できるため、従業員は同僚とコミュニケーションを取るのと同じようにプロテウスにタスクを割り当てることができる。
やるべきことを指示すれば、優先順位やルート、タイミングなどを自動的に判断し、稼働するという。
このプロテウスの進化は、アマゾンのロボット開発ロードマップの一環で、モバイルロボットの進歩に加え、新たな協働技術やロボットマニピュレーション(個々の物体を精密に扱う能力)の開発も進めている。
例えば、新しい協働型ロボットによるコンテナ搬送システム「STARK(スターク)」は、従業員と並んで作業を行い、コンベアから満載のコンテナをピックアップしてカートに載せる。作業工程の改善と現場の安全性向上を目指した現場作業員のアイデアから生まれたロボットという。
ピッキングロボットは視覚と触覚を有する
アマゾン初の触覚ロボットシステム「Vulcan(バルカン)」は、物体を視覚と触覚で同時に認識し、より複雑なピッキング作業にも対応できる。物体にいつどのように接触したかを理解する能力を持っており、より繊細なピッキングが可能なようだ。
人間が担っていたタスクを一つひとつ丁寧にロボットに置き換えているような印象で、さまざまなロボットがそれぞれ進化を遂げながらAWSを通じて連携し、人間と協調しながら作業全体の省人化・効率化を高めている段階のようだ。
■Zooxのロボタクシー事業
オリジナル設計の自動運転車、各種規制をクリア

アマゾンは2020年、自動運転開発スタートアップのZooxを買収した。買収額は12億ドル(約1,200億円/当時)以上に上ると言われている。
Zooxは既存の自家用車をベースとせず、移動サービス向けの車両設計から自動運転システム開発まですべてを自社開発する企業だ。
アマゾン傘下となった2020年末には、オリジナルのロボタクシーを発表した。ハンドルなどの手動制御装置を備えていない対面座席型の4人乗りモデルで、最高時速120キロの走行にも対応する。前後の区別がないのも特徴だ。公道実証とともに自社工場で量産化も進めている。
自己認証で公道走行を行っていたが、従来の自動車規格と異なる仕様のため連邦自動車安全基準FMVSSの観点から疑義が生じ、NHTSA(米運輸省道路交通安全局)から待ったがかかった。
協議の末、外国製車両を対象とした適用除外制度を流用する形で落としどころを見出し、ロボタクシーとしての運用をネバダ州ラスベガスを皮切りに2025年に開始した。
ただし、同制度は実証を目的とした非商業的な用途に限定されているため、有料サービスを提供することはできず、本格商用化に向けた足踏みは続いた。
2026年に入り、NHTSAは自動運転専用車両に対応した新たな安全基準案を公表したほか、同年8月までにZooxに対し米国初となる商業免除を認可した。
ハンドルやブレーキペダル、サンバイザー、ミラー、ワイパー、ウインドシールドの除霜装置など計8つの装備を免除し、無人運転を前提としたオリジナルモデルの実用化の道を切り開いた。
カリフォルニア州フリーモントとヘイワードに車両生産施設を設けており、フル稼働時には年間1万台超のロボタクシーを生産することができるという。
ただ、Zooxが受けた商業免除は「年間2,500台、期間2年間」という制限が設けられているため、工場のフル稼働はまだお預けとなっているようだ。
【参考】関連記事「米政府 Amazonの「ブレーキペダルのない車」に初のロボタクシー営業許可 テスラを出し抜く」も参照。
【参考】関連記事「トヨタの自動運転e-Palette、アメリカ輸出「解禁」か」も参照。
ラスベガスを皮切りに順次商用化へ
Zooxのロボタクシーは、2025年9月にラスベガスで無料運行を開始し、2026年8月に有料化された。ネバダ州交通局から課せられていた「最大100台」という制限も同年9月に期限切れとなり、今後ラスベガスにおけるサービスは一気に拡大していきそうだ。
カリフォルニア州サンフランシスコでは一部ユーザーを対象に無料サービスを提供している段階で、順次拡大を進めている状況だ。
テキサス州オースティン、フロリダ州マイアミでも本格実証に着手しているほか、アトランタ、ロサンゼルス、シアトル、ワシントンDC、ダラス、フェニックス、ヒューストン、サンディエゴにも拠点を設け、サービス化に向けた取り組みを進めている。
物流無人化のカギを握る?
今後、ラスベガスやサンフランシスコ、オースティンなど主要都市でWaymoやテスラと本格的に競合することが予想される。Zooxはルールベースに基づいたモジュール方式の自動運転技術を主体としている。
おそらくE2E開発も進めているものと思われるが、完全E2Eのテスラ、ルールベースとE2E技術のハイブリッド化に着手したWaymoに対し、どのような戦略で立ち向かっていくのか、注目が集まるところだ。
また、アマゾン傘下としては、やはり物流向けの自動運転ソリューション開発にも期待したいところだ。現時点では一切物流には言及しておらず、ロボタクシー専業で事業を進めているが、ラストマイル配送の需要も依然として高い。
ラストマイル配送の多くは小型の自動配送ロボットが担っており、Nuroが中型中速モデルを実用化するに留まっている。アマゾンという巨大EC・物流企業のもと、中型中速モデルの自動運転車とロボットアーム技術などを総動員し、宅配ロッカーに無人で荷物を受け渡す技術を確立できれば、ラストマイルにイノベーションが起こる。
アマゾンは、こうした規模の開発に取り組める貴重な存在ではないだろうか。Zooxの技術を有効活用した無人配送事業の復活に期待したいところだ。
【参考】関連記事「Amazonのロボタクシー ラスベガスで「100台制限」撤廃 テスラやウェイモと激突」も参照。
■【まとめ】アマゾンの自動運転事業はこれから本格化する?
アマゾンの無人配送事業は依然として凍結状態が続いているようだが、子会社Zooxの成功が転機となる可能性がある。ロボタクシー事業の商用化により、自社グループ内で自動運転技術を確立した……と捉えれば、その技術をメイン事業に応用していく道を再び模索するのが常道と思われる。Zoox側もこれを拒む理由はないだろう。
倉庫事業のオートメーションと掛け合わせ、どこまで省人化・効率化を追求することができるのか。自動運転事業に向けたアマゾンのチャレンジが本格化する未来に期待したい。
【参考】関連記事としては「Google/Waymo(ウェイモ)のロボタクシー・自動運転戦略 東京展開はいつ?」も参照。













