Amazonのロボタクシー ラスベガスで「100台制限」撤廃 テスラやウェイモと激突

ラスベガスが巨大なロボタクシー市場に



出典:Amazon.comプレスリリース

Amazon傘下のZoox(ズークス)が米ネバダ州ラスベガスで展開する自動運転ロボタクシーについて、ネバダ州交通局(NTA)が課していた「最大100台」の台数制限が2026年9月25日に期限切れで撤廃された。8月に有料運行を始めたばかりのZooxは、今後は需要に合わせて車両を増やせるようになる。

NTAはすでに、米EV大手テスラ(Tesla)に最大5,000台、米Google系の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)に最大1,000台の運行枠を認めている。台数の足かせが外れたZooxを含め、ラスベガスは大手各社がそろって大きな枠を持つ、全米有数のロボタクシー激戦区となった。


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■ラスベガスでAmazon傘下のZoox「100台制限」撤廃

Zooxはこれまで、NTAの許可に基づき、ラスベガスを含むクラーク郡で最大100台までしかロボタクシーを走らせることができなかった。この上限が9月25日に期限を迎え、効力を失った。

ただし、上限が外れたからといって、すぐに数百台の車両が街にあふれるわけではない。許可で定められた運行エリアに加え、事故の報告や24時間対応の緊急連絡体制といったNTAの条件は引き続き適用される。

Zoox自身も、ラスベガスで現在何台を運行しているか、今後何台を追加するかは明らかにしていない。同社は「ラスベガスなどの高い需要に応えるため、今後数カ月でロボタクシーの台数を着実に増やしていく」と説明するにとどめている。

実際の稼働台数は、上限を大きく下回っているとみられる。Zooxの車両はオースティン、マイアミ、ラスベガス、サンフランシスコの4都市を合わせて約100台、ラスベガスの稼働は30台超にとどまるとされる。


つまり100台の上限は、現時点で運行を直接縛っていたわけではない。それでも撤廃の意味は大きい。台数の天井を気にせず、車両の生産や需要に合わせて規模を広げる計画を描けるようになるからだ。拡大に向けた「号砲」と言えるだろう。

【自動運転ラボの視点】
台数の天井が外れたことで、Zooxの拡大ペースを決めるのは規制ではなく、車両の生産能力と安全運行の実績になった。ハンドルのない専用車両をどこまで量産できるかが、ラスベガス攻略の次の焦点となるだろう。

【参考】関連記事としては「Amazon傘下のZoox、自動運転タクシーの商業化へ 2500台規模で」も参照。

■Zoox、ハンドルのない専用車で有料化へ

Zooxは、Amazonが2020年に12億ドル超で買収した自動運転開発企業だ。ハンドルもペダルもない箱型の専用車両を独自に開発し、乗客が向かい合って座る設計を採用している。

ラスベガスでは2025年9月から、一般向けに無料の乗車サービスを提供してきた。転機は2026年7月30日だ。米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、専用設計のロボタクシーとして初めて、商用運行のための安全基準の適用除外を認めた。対象は連邦の自動車安全基準8項目で、年間最大2,500台を2年間にわたって配備できる。


これを受け、Zooxは8月10日にラスベガスで有料運行を始めた。料金は基本料金に走行距離と時間を加える方式で、一般的な配車サービスの上位クラスと競える水準を目指す。空港発着や大型イベントの際には追加料金がかかる場合もある。有料化しているのは現状ラスベガスだけで、サンフランシスコとオースティンでは無料運行が続いている。

さらに9月3日には、ハリー・リード国際空港への乗り入れも始めた。両ターミナルの手荷物受取所の近くで乗り降りできるため、駐車場まで歩く必要がある既存の配車サービスより便利だとされる。

連邦の枠が年間2,500台であるのに対し、州の枠は100台だった。州の上限が外れたことで、規制上の天井は大きく引き上げられた形だ。有料化、空港進出、そして台数上限の撤廃。2カ月足らずの一連の動きは、Zooxがラスベガスで一気に攻勢をかけていることを示している。

【参考】関連記事としては「アマゾンのロボタクシーZooxが有料化 初乗りはいくら?」も参照。

■Zooxとテスラ、ウェイモがラスベガスで激突

Zooxの上限撤廃が注目されるのは、ライバルがすでに大きな運行枠を手にしているからだ。NTAは8月21日、テスラに最大5,000台、ウェイモに最大1,000台、Uber系の事業会社Aviari Services(アビアリ・サービシズ)に最大1,000台の運行を認めたと発表した。いずれも12カ月間の上限で、3社を合わせると最大7,000台に達する。

承認には条件がある。許可から120日以内の運行開始、運賃の事前提出、事故の報告、運行エリアを変える際の事前承認などだ。各社の枠も無制限ではない。それでも、Zooxに課されていた100台と比べれば桁違いの規模と言える。

10台から5,000台へ テスラの許可は1カ月足らずで500倍に

テスラは当初から5,000台の運行を申請していたが、7月27日の暫定許可で認められたのは10台だった。運行エリアはラスベガスの目抜き通り「ストリップ」周辺に限られ、最高速度や空港での乗車にも制限が付いていた。それが8月の正式許可で、一気に5,000台へと広がった。

ただし、テスラがすぐに5,000台を投入するわけではない。自動運転タクシー専用車両サイバーキャブ(Cybercab)の担当チーフエンジニアは「5,000台はあくまで上限だ」としたうえで、「1年で2,500台、あるいはそれを少し上回る規模に達すれば非常に満足だ」と語っている。

ウェイモは最大1,000台

ウェイモは9月14日、ラスベガスでロボタクシーサービスを始めた。当初は数十台のミニバン型車両Ojai(オーハイ)を使い、ストリップ南部などで招待した利用者から順に受け入れる。ラスベガスは同社にとって15番目の商用市場、最大1,000台となる。米国のロボタクシー市場をリードするウェイモの参入で、ラスベガスの競争は一段と激しさを増す。

■Uberアプリ経由の配車も視野 Zooxの拡大シナリオ

Zooxは自社アプリに加え、配車大手のアプリを通じた拡大も狙う。Zooxと米配車大手Uber(ウーバー)は2026年3月、複数年にわたる戦略提携を発表した。ラスベガスで2026年中、ロサンゼルスで2027年に、Uberのアプリ上でZooxの車両を配車する計画だ。Zooxにとって、他社の配車サービスと組むのは初めてとなる。

NTAが最大1,000台の枠を認めたAviari Servicesは、Uber系の事業会社だ。韓国の現代自動車グループ傘下の自動運転開発企業Motional(モーショナル)やZooxとの提携を通じて、ロボタクシーを運行する枠組みとされる。Zooxの車両は今後、自社の許可とUber側の許可という2つの経路でラスベガスの路上に出る可能性がある。

ただし、Uberアプリでの配車開始の具体的な時期は明らかになっていない。Zooxはまず自社サービスで商用運行の基盤を固め、そのうえでUberへの供給を進める方針だ。

■始まるラスベガスのロボタクシー競争

Zooxの「100台制限」撤廃により、ラスベガスは大手各社がそろって大きな運行枠を持つロボタクシー市場になった。

各社の戦い方は異なる。Zooxはハンドルのない専用車両で、乗車体験の違いを打ち出す。テスラは5,000台という最大の枠を背景に、量で攻める構えだ。ウェイモは他都市で積み上げた運行実績を武器に参入した。そこにUber経由の配車も加わる。

規制の枠が広がったことで、競争の軸は許可された台数から、実際に何台を安全に走らせられるかへと移る。一方で、地元のハイヤー事業者の業界団体は、車両の過剰供給や観光地周辺の渋滞を懸念して承認に反対していた。台数が増えるほど、安全性や交通への影響を問う声も強まるだろう。

日本でも自動運転タクシーの実用化に向けた取り組みが進む。条件付きで運行枠を与え、実績に応じて段階的に広げていくネバダ州の手法は、日本のロボタクシー市場の制度づくりにとっても参考になると言える。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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