
「自動運転バスの社会実装事業において、実装に結びつかないものは一部返金を求めるべき」──。財務省所管の財政制度等審議会が、自動運転事業に対する補助に厳しい目を向けた。
自動運転に関しては、令和7年度予算執行調査でも調査対象に選定され、レベル4実装に疑問のある取り組みや国費依存の実情などが指摘されていた。
積極財政がウリの高市政権だが、税金を垂れ流すような支出は行わず、効果的に事業が遂行されるよう引き締めていく方針なのかもしれない。予算面から自動運転実証の現状に迫っていこう。
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■財政制度等審議会による指摘
返金を求める対応を行うべき
財政制度等審議会は、国の予算や決算、財政投融資などの重要事項について審議し、財務大臣に建議(意見書)を提出する機関だ。2025年12月に開催された審議会では、令和8年度予算の編成及び今後の財政運営に関する基本的な考え方が示された。
この中で、自動運転に関して「バスの自動運転においては実証事業が実装に結びついていない事例が数多く見られる。バスやトラックの自動運転実装事業については、実装を真摯に取り組む地方公共団体・事業者を支援すべく、補助要件の中で実装がない場合、一部返金を求めるといった対応を行うべきである」――といった意見が取りまとめられた。

「レベル4の実装を目指す」という補助要件を満たさない事業が散見され、これらについては補助金の返納などを求めるべき――とする指摘が委員から出されたようだ。
レベル4の実装に結びつかない事例には、端からレベル4実装を目指していないものと、計画・見通しが甘過ぎるため進捗が思わしくないものの存在などが考えられる。前者は論外となるが、後者は線引きが難しいところだ。
背景に「受託企業」の営業
ちなみにこうした背景には、実証実験の受託企業が「この補助金制度を使えば、自治体側の負担がほとんどなく実証実験ができますよ」「補助金申請も含めてサポートしますから任せてください」と営業をかけていることがある。
実証実験の受託企業にとっては、受託費用が丸々収益になるため、未来の自動運転実現までの長い先行投資フェーズの中で、貴重な「目先の稼ぎ所」となっている。このこと自体が悪いわけではないものの、実態としてこういう背景があることも知っておきたい。
■自動運転実証に関わる国の補助
レベル4の実装が前提
国内では、国土交通省の自動運転社会実装推進事業を中心に各地で自動運転バス実装に向けた取り組みが進められている。
自動運転社会実装推進事業は、人手不足や地域の足の確保など、地域公共交通が抱える課題に対する解決手段として期待される自動運転について、地方公共団体によるレベル4自動運転移動サービス実装に係る取り組みを支援する国の補助事業だ。
地域づくりの一環としての地域公共交通サービスにおける自動運転導入を通じて、既存の公共交通サービスや異業種との連携および共存を図りつつ多様なサービスに展開できる事業モデルを確立することを前提に、将来的にレベル4技術を提供することが見込まれる事業者の参画、持続可能性を踏まえた計画の策定、自動運転移動サービス実現に向けたレベル4モビリティ・地域コミッティの設置、地域公共交通計画などに留意した取り組み――などが要件として求められている。
かいつまんで言えば、レベル4の実装を前提に取り組むことが求められているのだ。
令和5年度執行の「地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転事業関係)」には62件、令和6年度執行の「地域公共交通確保維持改善事業費補助金 (自動運転社会実装推進事業)」には99件、令和7年度執行の「地域公共交通確保維持改善事業費補助金 (自動運転社会実装推進事業)」には重点支援自治体13件、一般支援自治体54件の計67件がそれぞれ採択されている。
「実装予定なし」が1割存在
この自動運転社会実装推進事業に対する財務省の予算執行調査では、実際に運行している路線において実証を行うなど社会実装に向けた取り組みとすべきであり、短距離実証を続けている事例がないか、既存路線を置き換える計画となっているか調査を行ったという。
その結果、令和6年度実証(カッコ内は令和5年度実証)において1キロ未満の実証ルート設定が7件(同)、1~3キロ未満34件(25件)、3~5キロ未満32件(13件)、5~7キロ未満15件(6件)、7~10キロ未満8件(4件)、10キロ以上10件(7件)――だった。中には、200メートルの実証に留まっていたものもあったという。

有人路線への置き換え意向に関しては、「置き換える」27件、「置き換えない」7件、「自動運転の実装予定なし」10件、「現段階では未定」87件――という結果だった。
「置き換えない」には、既存の有人路線バスとの併用や新規路線の運行が想定されるため、問題はない。問題は、「自動運転の実装予定なし」という、本来の主旨を疑いたくなるような回答が相当数に上ったことだ。
実装予定はないが、導入の可否を判断・検討するために申請したのだろうか。詳細は不明だが、実装予定なしと堂々と回答できる理由があるのだろう。
いずれにしろ、将来的なレベル4実装に結びつかない取り組みに対し、補助し続けるのはどうなのか……という疑問は正論だ。
令和7年度の補助事業採択数は前年度の99件から67件に減少しており、申請が通らなかった自治体の中には実証を中止する動きも見られる。今後、採択されていても、取り組みの内容次第では返納を迫られる可能性もある……と考えると、萎縮してしまう自治体も出てくるのではないだろうか。
【参考】関連記事「自動運転実証、補助金受け「走行たった200m」 財務省が指摘」も参照。
補助不採択で実証中止する動きも
国の補助事業に不採択になったことで予定していた自動運転実証を中止する動きも広がっている。
大阪府堺市は2024年度、国土交通省に7,600万円の補助を申請していたが不採択となり、同年度の実証事業を中止した。取り組みの改善を図った2025年度は採択され、実証を再開している。
愛媛県伊予市は、2025年度の同事業で不採択となったことを受け、継続していたサービス実証を中止した。同市はBOLDLYと組み、2024年2月から市内双海地域でMiCaの実証運行を行っていたが、事業費捻出が困難となったため、事業者と協議の上8月から一旦運行を休止している。
NHKによると、和歌山県和歌山市も2025年度の補助不採択を受け実証を取りやめたという。事業費8,800万円のうち80%を国の補助で賄うことを想定していたが、不採択により市単独で事業費を負担することは難しく中止を決断した。自動運転の必要性を踏まえ、引き続き検討を進めていく方針としている。
香川県丸亀市は、2025年6月議会に自動運転関連予算案を提出していたが、国の補助不採択を受け取り下げた。総事業費9,800万円のうち80%の補助を見込み、10月に実証を行う計画だったが、不採択が通知されたため急遽市の負担分として計上していた650万円を削除した。
長崎県も不採択となり、長崎空港で予定していた自動運転実証を見送る方針という。2025年度の当初予算に1億円を計上し、このうち80%の8,000万円の補助を見込んでいた。今後、実施の可否含め対応を検討していくとしている。
国の補助ありき……と言うと聞こえが悪いが、現実問題として数千万円単位を単独で捻出するのは容易ではないのだ。
事業財源の約9割が国費頼み
地方自治体による自動運転実証には、国の補助が欠かせない実態も浮き彫りとなっている。財務省の調査によると、自動運転社会実装推進事業採択案件において、事業財源の88%を国費補助が占めているという。自治体などの負担は10%で、地方費補助と運行収入などがそれぞれ1%となっている。
約9割の自治体が無償運行を行っている。現状、有償運行を行っても、当然採算ラインには遠く及ばない。自動運転バスの車両費は既存バスに比べ高額で、取り組みの大半がレベル2実証に留まっていることを踏まえれば、人件費も余分にかかっていることになる。
レベル4を実現しても、しばらくはオペレーターなどの人員を減らすことができず、なかなか人件費も圧縮できない。1人のオペレーターが複数台を担当する水準に達するまで、コスト面の低減は望めない。
量産化による車両費の低下と人件費の低下、この二つが実現することで自動運転サービスの継続性が担保されると言える。
このフェーズに達するまでは、自主財源であれ国費であれ税金を投入し続けなければならない。国の財政の観点から言えば、この採算ラインに向けた期間をどのように予測・設計するかが重要性を増すことになるのではないだろうか。
この期間があいまいな限り、見通しも立たぬ状況下で国は大きな予算を割き続けなければならない。何年あればレベル4技術・サービスが確立し、コスト低減を実現できるフェーズに達するのか。この部分をある程度正確に見通す必要があるのではないだろうか。
【参考】関連記事「日本の自動運転実証、88%が「国費頼み」 運賃収入1%以下」も参照。
■自動運転実証・サービスの現状
レベル4認可は11カ所、約9割がレベル2実証
自動運転社会実装推進事業の補助を受けずに実証を行っているエリア・自治体や休止中のものも加えると、延べ100を超えるエリア・自治体で自動運転実証が行われている。
一方、レベル4の達成状況に目を向けると、2025年12月時点で、福井県永平寺町、東京都大田区(羽田)、GLP ALFALINK相模原、北海道上士幌町、三重県多気町VISON、長野県塩尻市、茨城県日立市、愛媛県松山市、大阪府大阪市(万博)、石川県小松市、千葉県柏市の11カ所に留まる。
上記はレベル4システムとして認可を受けた件数で、自動運転サービスに必要となる特定自動運行許可を受けているものは、判明しているだけで9件となっている。
デジタル庁がまとめたデータによると、2024年度にレベル4走行を行ったのは7カ所で、このうち通年運行は5件となっている。レベル2走行は95件に上り、このうち通年運行は15件となっている。財務省の資料によると、令和6年度におけるレベル別実証ルート数は、レベル2が104ルート、レベル4が10ルートという。約9割の取り組みがレベル2実証に留まっているのだ。
レベル4実現エリアが現時点で多いか少ないか……という点に関しては判断がわかれるところだが、今後増加していくことは間違いない。
3カ年計画でレベル4実現なら2027年度に100カ所達成も
2024年度にレベル2実証を重ねているエリアが、仮に3年でレベル4に結びつくのであれば、2027年度にはレベル4実現エリアが100ヵ所規模となる。国が掲げる「2027年度までに100カ所以上で自動運転移動サービスを実現」という目標達成が視野に収まる。
科学的根拠も何もないが、「3年間でレベル4」を目安とすれば、自治体や開発事業者も明確なロードマップを設定しやすく、事業を具体化しやすいのではないだろうか。
開発事業者の基礎技術水準に拠るところも大きいが、3年かけて実現できない事業者にはいったん補助事業から外れてもらう。そうした事業者は、まず基礎技術を磨くべきだ。
その後、1対Nによるコスト低減フェーズに向かうことになるが、レベル4技術がしっかりしていれば、その段階にはさほどの時間を要しないはずだ。
このフェーズでは、個々の自治体単位ではなく、遠隔監視を行う事業者が複数の自治体のサービスを同時に担当することも予想される。そうした仕組みづくりが重要性を増すものと思われる。
■【まとめ】開発事業者の基礎技術向上が必須?
自動運転実証は、補助金頼みでなければなかなか実施できないうえ、その進捗・成果の大部分は開発事業者の能力に左右される。技術を磨くため長期実証したいが、そのためにはお金が必要……という、何とも言えない状況が続いている気もする。
何よりもまず開発事業者の基礎技術が向上しなければ、思うような成果は上がらない。積極財政派の高市総理は、ぜひAI技術やスタートアップ育成などと絡め、この部分に力を入れてみてはどうだろうか。
【参考】関連記事としては「自動運転、日本政府の実現目標・ロードマップ一覧|実用化の現状解説」も参照。











