中国では格安の自動運転タクシーが実用化されている。手掛けているのはIT大手のBaidu(百度)で、初乗り運賃わずか4元(約83円)を実現した。これは人間が運転する従来のタクシーの4分の1以下の価格になる。人気が出る可能性が極めて高そうだ。
これまで、自動運転タクシーの運賃が将来的に従来の10分の1以下になる、といった予測データが発表されたことがあるが、こうした未来がいよいよ現実味を帯びてきた格好だ。
ちなみに世界で初めて自動運転タクシーを実用化したのは、米Google系の自動運転開発企業Waymoであり、現在米国内の複数都市で運行しているが、運賃はライドシェアと比較すると3割以上高い。Baiduはどのようにして手動運転より安い自動運転タクシーの運行を可能にしたのか。
【参考】関連記事としては「タクシー運賃、自動運転化で10分の1 2030年に1000兆円市場に 米アーク・インベストメントが予想」も参照。
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■車両価格449万円、初乗り運賃は激安の83円
Baiduの「RT6」は同社の自動運転プロジェクト「Apollo Go」における第6世代の量産対応モデルとなる次世代完全自動運転車で、2022年7月に発表された。レベル4の完全自動運転を実現する車両で、2024年5月に正式にデビューしている。
RT6はバッテリー交換方式を採用することで、1台あたりの価格が3万ドル(約449万円)以下となっている。数千万円にもなる場合もある自動運転車の中で、この価格は驚異的な安さと言える。
この低価格は自動運転タクシー(ロボタクシー)の運賃にも反映されている。初乗り運賃は4元(約83円)からとなっており、人間が運転するタクシーの初乗り18元(約370円)より78%安くなっている。ロボタクシーは運行エリアが限られるなど制約もあるが、この金額なら気軽に乗ってみたいという人も多いのではないだろうか。
実際、Apollo Goでは2024年第3四半期、中国全土で前年同期比20%増の98万8,000回の乗車サービスを提供している。また、累計の一般向け乗車数は2024年10月時点で800万回に達したという。最新の技術と低価格を武器に、今後もサービス拡大を行っていくことが予想される。
【参考】関連記事としては「中国・百度に「香港初」の自動運転許可証!格安ロボタクシー展開へ」も参照。
■Baiduの自動運転計画のこれまで
Baiduは2017年4月から、自動運転車向けのソフトウェアプラットフォームをオープンソース化するプロジェクト「Project Apollo(アポロ計画)」を立ち上げており、中国の自動運転開発をリードする存在だ。
2020年4月に湖南省長沙市で、一般客を対象にロボタクシーサービス「Apollo Go Robotaxi」を開始した。セーフティドライバー同乗のもとサービスを提供する形で、同年8月に河北省滄州、同年9月に北京市とエリアを拡大している。
2022年8月には重慶と武漢で完全ドライバーレスのロボタクシーの商用運行許可を取得したと発表した。完全無人のロボタクシー有料サービスは中国初のことであった。その後、北京や深センでも完全無人の許可を取得している。
■Baiduの米国進出の可能性は?
現在は中国内のみでロボタクシーを展開しているBaiduだが、現在の国内価格水準で海外展開できるなら、大きなシェアを獲得できる可能性がある。特に米国でロボタクシーを商用運行しているWaymoにとっては大きな脅威となりそうだ。
Waymoでは、車両やセンサー群にかかる設備投資が1台あたり15万ドル(約2,200万円)を超えると推定されているようだ。センサーの数を減らすなどコスト削減に努めているようだが、価格を下げるためには、相当な取り組みが必要になる。
ただし、単純にBaiduが米国進出すればWaymoに勝てるかというと、そう単純ではない。そもそも両国の間では物価の差があるし、トランプ次期大統領が中国製品に10%の追加関税を課す方針を示していることも障害になることは確実だ。
■自動運転車の低価格化は進むのか?
米EV(電気自動車)大手のテスラは、2024年10月にロボタクシー専用車「サイバーキャブ」のプロトタイプを発表した。車両価格はBaiduのRT6と同様、3万ドル以下の予定で2026年頃から生産開始するという。
これまでは、市販のEVに自動運転システムを搭載するという方式がほとんどであったが、Baiduやテスラなど、自動運転専用車両の発表も増えてきている。最新技術を搭載した専用車両の開発と車両価格の低減は両立できるのだろうか。
またBaiduなど中国勢は中国の圧倒的な生産力を武器に、今後も低コスト車の大量生産を進めるのだろうか。動向に注目したい。
【参考】関連記事としては「百度(Baidu)の自動運転戦略」も参照。